表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/26

第7話 学校生活とアルバイト

毎日18時に投稿しています。お読みいただければ幸いです。

 学校では、上級貴族がAクラス、下級貴族がB・Cクラス、特に富裕で有力な平民がDクラス、その他平民がE・Fクラスとなっていた。

 ちなみに貴族と平民では校舎も異なり、先生も分かれていた。

 夜と同じメニューの朝ごはんを食べると、俺は事務室でもらった地図で自分の教室に向かった。ちなみに俺はFクラスだった。

 教室に入ると、誰も話をしておらず、教科書を読むか、ぼーっと外を見ている者たちばかりだった。席も決まっていないので自由に座れるようだった。

 ただ、様子を見ていると、やや富裕な平民は前の席、その他普通の平民は後ろの席となっているようだった。とりあえず最後列に座ることにした。

 先生が入ってきて、転入生紹介もなく、いきなり授業が始まった。

 内容的には難しくなかったので、ノートを取りながら授業を聞いていた。

 授業が終わると、先生は何も言わずに外に出て行ってしまった。

 生徒たちは思い思いに過ごし始めた。ただ、誰も話をすることはなかった。

 「すまない、教えて欲しいのですが」と俺がたまたま隣にいた男子生徒に声をかけると、「ちっ」と舌打ちをされて、にらみつけられそのまま無視された。


 なんだここは?

 

 そんな感じで次から次へと教員が来て講義をして出ていくを繰り返し、昼になった。

 みんなぞろぞろと教室を出て行った。

 俺も慌てて後についていった。

 途中で金持ちそうな連中は別の方向へ行き、残りの連中はそのまま進み、食堂に入っていった。

 食堂には机も座席もなかった。

 一部の生徒はそのまま食堂の水飲み場に行き、すごい勢いで水を飲み始めた。

 残りの生徒は並んで金と引き換えにトレイが渡されていた。

 見てみるとみな100セリ、1マルの十分の一の金額を出していたので、俺の番が来た時同じ金額を出してトレイを受け取った。

 皆一言も話すことなく、床に座って黙々と食べて、食べ終わると返却口にトレイを戻していた。

 トレイには、朝と同じパンと少し大きめのチーズが一つ置かれていた。

 

 もそもそと食べていると、先ほど水をがぶがぶと飲んでいた連中が恨めしそうに俺たちをにらんでいた。

 俺は急いで食べ終わると、教室に戻った。

 午後も同じことの繰り返し。

 3つ授業が終わるとまた無言で教室を出て行った。

 訳が分からず、サイトさんを訪ねることにした。たびたび訪ねて嫌な顔をされないか心配だったが、笑顔で迎えてくれた。


 今日の出来事を話すと、「ああ、それは仕方がないよ。平民でこの学園に通うのはかなり難しいからね。最低でもそこそこの経済力とコネがないと入学試験を受けることすら困難だ。それでも将来のためと無理やり入った者は、奨学金を借りても、学費と寮費を賄うのが精いっぱい。制服や教科書も貴族が捨てたものを拾って使い、休みの日は仕事をしているが、それでも食べ物もろくに食べられない。それに平民でこの学校に通うものは、周りが皆敵だと認識しているからね。成績順位のいい者だけが将来が約束されるから。前に言った役人や軍人の学校に入るためには、少なくとも平民の中で上位一割に入る必要があるんだ。まあ、並以上の成績が取れれば、商会とかで雇ってくれる可能性が高いけどそれじゃこの学校に来た意味がない。だから平民のクラスでは周りは敵ばかりというわけさ」と説明してくれた。

 「まあ、貴族のクラスはもっと余裕があるけど、階級や序列や派閥やらで会話一つにも気を遣わなくてはならない世界だからそれはそれで大変だけどね」と言って苦笑いしていた。


 なんか嫌になってきた。飯はまずいし、周りは敵ばかり、教員は生徒に関心がないように淡々と仕事を済ませるだけ。

 何か考えなくちゃな。


 休みの日がやってきた。とりあえず朝から市場の値段調査をした。王都だけあっていろいろなものがそろっているが、それでも遠隔地から運んできたものは値が張る。

 よし、これを仕事にしようと思い立ち、とりあえず南の海に面している貿易港に出向いた。

 音魔法ですっ飛ばしていけば、2時間ぐらいで着く。

 

 そこでいろいろと品物を仕入れて、更に海の魚を取って、帝都に戻って商業ギルトに卸すととてもいい値段で買ってくれた。

 特に魚はかなりいい値段をつけてくれた。

 海の魚は王都では貴重で、金持ちしか手に入れることができないらしい。

 

 まだ時間があったので今度は北に行き、現地の果物や食べ物を仕入れると同時に山に入り、獣を狩った。

 これまた帝都にもっていくと高く売れた。

 俺の資産は1日で100倍以上になった。

 

 これを繰り返していったが、そのうち帝都ではなく、東や西の街に品物をもっていくようにした。

 理由としては帝都の値段が値崩れしてきたのと、東や西の街の方が高く売れるとわかったからだ。

 物流の中心は帝都で、すべての物は帝都に集まり、再び地方に出荷されることになる。そのため、東や西では、南や北の品物が入りにくい。また、北の品は南では手に入りにくいし、南の品は北では手に入りにくい。


 俺は縦横無尽に飛び回り、謎の商人と言われるようになった。

 商業ギルドには仮面をかぶり、魔法で声と服を変え、高下駄のようなものをはいて背を伸ばして対応していた。すべては身元がばれないようにと、子供だからと言って馬鹿にされないためだ。

 そのうち、人を雇い、商品の売買するための拠点を作った。

 雇い入れた者は、現在位置が分かる魔道具を体に埋め込み、金を持ち逃げできないようにした。

 ちなみに魔道具とは、いろいろな魔法を使える道具で、用途ごとに細かく道具があり、魔道具店で買うことができた。

 

 人に埋め込むのは、非人道的ではないかって?

 位置特定の魔道具はかなり小さいもので、催眠薬を飲ませて、その間に体の一部を切り、埋め込んだ後、治癒魔法で完全に治すので問題ない、と思う。


 俺は一月の内に莫大な富を稼ぐことに成功した。十億マルぐらいはあると思う。小国ならば下級貴族の爵位が買えるぐらいの富だ。

 学業の方も結構上の方の成績を収めていた。まあ、勉強もしたからね。

 そして大金で冒険者を雇い、母上とジェーンさんに手紙を届けさせた。

 第一皇子にばれることの無いようこっそりとだ。

 

 母上からは返事が来た。母上は無事を大変喜んでいて、とりあえず第一皇子か即位して安心するまではそこで頑張りなさいと手紙に書いてあった。

 はたして王位を得たからと言って、俺に寛容になるかどうか非常に怪しいと思うが、どちらにしろここで頑張る必要があるのは理解していた。

 ジェーンさんからは何も返事がなかった。うん、これは婚約破棄ということかな、そりゃ仕方ないか、こんな追放された平民と一緒になろうなんて普通貴族の娘は思わないからな、と俺は納得して、理解した。でも少し悲しかった。前世では妻に捨てられ、今生でもまた婚約者に捨てられた。まあ、覚悟はしていたけどポロリと涙が出た。

 やっぱり人は信用できない。


 俺は稼いだ金を使って学園生活の改善を図った。

 平民用の量と学園の食堂を無料にし、パンの質を上げ、スープは具沢山に、チーズは好きなだけ取っていいことにした。

 空いている土地に寮を立てなおした。原則一人部屋にして、食事込みで一月10マルとした。

 差額は全部俺が出した。

 事務のサイトさんは、学園への寄付制度を活用して俺のやりたいことすべての手続きをしてくれた。本当に助かる。

 「いえいえ、寮が学園のお金を使うことなくきれいになるのですから、すごくいいことだと思いますよ」と言って、「おかげで貴族からの寄付も増大しています。特に上級貴族たちはすごい額を出してきています。平民ふぜいがこれだけ寄付しているにもかかわらず貴族が出さないのは沽券にかかわるとね。おかげで学園は結構潤っています」と小声で教えてくれた。


 寄付した者の名前は公表されることになっている。当然学園での知名度も上がるし、先生の受けもよくなる。

 生徒たちからは感謝され、教室のボスのように祭り上げられていた。

 それまで無視されていた先生からも「カール君、頑張っているね」と微笑んで言われるようになった。

 「先生のおかげです。ところで先生、何かお困りのことはありませんか?」と尋ねると「実は……」と言われ、直ぐに業者に行って教材とか研究用具の名目で手配してあげるわけだ。

 そのあたりの業者はサイトさんに言ってお金を積むとすぐにやってくれるので、こっちは楽だし、先生は喜ぶ。

 値段も多くても1000マルぐらいだし、大したことはない。

 サイトさん達事務職員からは「平民の教員からの無茶な依頼がなくなってすごく楽になったよ」と感謝された。

 事務室にもいろいろ差し入れした。机やいすを新しくしてあげたり、福利厚生目的で寄付をしたりした。なんせすごくお世話になっているからね。


 それでも商売はうまく言っており、お金はたまる一方だった。いくつかの商家とも渡りをつけ、優先的に商品を卸してもらえるようになり、さらにその土地で不足している物を高値で買い取ってもらえるので、稼ぎはものすごいことになっていた。

 少し目立ち過ぎたのだろう。悪い奴らからも目をつけられているようで、何回か襲われた。

 逆に皆殺しにして、財産をすべて奪ったけどね。


 人殺しって、一度経験すると意外とあっさり慣れるものだなあという感想だった。

 それに魔法で殺すのは、直接手を下すわけではないので抵抗が少ないのだろう。


 悪い奴らのバックに貴族がいることもあるけど、下級貴族ならあっさり暗殺して、金目の物を奪って物取りの犯行に見せかけた。

 まあ、貴族なのに、ろくな警備もせずに物取りに殺されたなんて、貴族社会ではすごく恥ずかしいことらしくあまり問題になることはなかった。


 ある時、商売が終わり、スラムの一角に置いたセーフポイントで変装を解いていると、一人の男の子が襲われているのが見えた。

 身なりからするといいところの貴族らしく、なんでこんなところにいるのか不思議だったのだが、とりあえず襲っていた悪党たちを気絶させ、全員捕縛した。


 「大丈夫ですか?」と尋ねると、「ありがとう、助かったよ。君強いんだね。服装を見ると王立学園の生徒みたいだけど、お礼をしたいから名前を教えてよ」と尋ねられた。

 あっ、変装を解いた後だったと、いまさらながら気づいたがいまさらしょうがないので「カールと言います。その通り王立学園に通っています。平民の一年でFクラスです」と答えた。

 「うん、僕はシュミット、同じ学園のAクラス何だ」とにこやかに言った。

 おっと、この子上級貴族の子かよ、道理で身なりがいいはずだ。

 「なぜシュミット様がこのようなところにいらっしゃるのですか?」と尋ねると少し悲しそうな顔をして、「実は調べたいことがあってね……」と言った。

 「でもここは危険です。とりあえずここを出ましょう」

 「うん、そうするよ。少し時間ある?話したいことがあるのだけど」と尋ねてきたので、「今日はもう遅いので、今度学園ではいかがでしょうか。明日、放課後に事務室の前で待ち合わせではいかがでしょうか」事務室は平民、貴族両方が利用する施設なので、この学園の中では数少ない貴族も平民も入っていい場所だった。

 「ああ、そうしよう」そう言って、スラムの外に送り出すと気絶している悪党どものところにいき、変装をし直すと、悪党どもをたたき起こし「おい、お前たちのポスは誰だ。言わないと殺すぞ」と言って、何人か見せしめに犠牲になってもらったら、素直に案内された。 

 悪党たちのアジトに行き、「おい、こいつらに迷惑をかけられた。迷惑料を支払うか、殺されるかどちらかを選べ」と言って脅かした。

 ボスが出てきて、「これは死の商人殿ではないですか。こいつらに何かされたのですな。それは大変申し訳ない。これで手打ちにしていただきたい。こいつらは私の方できっちり処理しておきますので」と言って、袋いっぱいの金貨を出してきたので、勘弁してやることにした。しかし、死の商人ってなんだ!


悪党のアジトにて

 「おい、お前らこの落とし前はどうつけるのだ」ボスの側に控える幹部の一人が突き出されてきた男たちに言った。

 「すみません。本当にすみません」の床に頭をこすりつけて謝っていた。

 「おい、お前らあの男の顔を見たか」ボスが訪ねた。

 「いいえ、あっしら迷い込んできた身なりのいいガキを脅かして金を巻き上げようとしたら、いきなり奴が襲ってきて全員気絶させられました。気が付いたらアジトの場所を吐けと言われ、仲間を何人か殺されてやむなくこの場所を」と震えながら言った。

 「あの死の商人は、商売しながらそうとう人を殺してきたらしい。噂じゃ貴族も何人かやられたと聞いたことがある。まあ、そのガキの親にでも雇われたのだろう」とボスは言った。

 「ボスどうします」幹部の一人が訪ねた。

 「取りあえずけじめはつけてもらおうか。1000マル上納しろ。3日以内にな。出来なきゃ消えてもらうぞ」

 「えっ、1000マルですか!」

 「あっ、不満か?」

 「いや、ボス、何とか都合付けます」と死の商人をアジトに連れてきた男たちは土下座して許しを乞うた。



お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら星かブックマークをいただければ大変ありがたいです。

星一ついただければ大変感謝です。ブックマークをいただけたら大大感謝です。ぜひとも評価お願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ