第5話 国外留学という名の追放
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12歳になった。ジェーンさんと婚約者としてラブラブな日々を送っている。
今のところは捨てられる兆しはないが、まあ油断はしない方がいいだろう。
とりあえず魔力測定の儀式が終わったら、結婚することになっている。結婚したら、儀式後に入学する予定の貴族学校を卒業する15歳を待ってジェーンさんは司書の仕事をやめ、領地に戻るつもりでいる。
その時俺も一緒に行くことになっている。
ジェーンさんに愛想をつかされて追い出されるまでは、畑を耕したり、漁をしたりしながらスローライフを堪能するつもりだ。そのための勉強も欠かさなかった。
まあ、貴族の結婚はそう簡単に離婚できないらしいから、最悪屋敷を出て、男爵領内の隅っこでも暮らすつもりだ。だから一人でも暮らせるように鍛錬を積んでおく必要がある。
農業、畜産、薬学など入用と思われるものは片っ端から学んだ。
その年でスローライフの準備は早くないかって?
いやもう精神年齢は70歳なのよ。若い嫁さんもらって、田舎でスローライフ、今度は家族に時間も取れるし、なるべく捨てられないよう努力しつつ、それでいて捨てられてもいいように準備だけはしておき、自分の幸せを追求しようと心に決めていた。
魔力測定の日、母上とジェーンさんが同行してくれた。魔力測定は大聖堂で行われることになっている。家族は聖堂の門の前で待ち、中には本人のみが入り、魔力検査を受ける。
結果は本人家族に知らせることになっていて、そのあと家族でお祝いすることになっていた。
まあ、家族と言っても、母上とジェーンさん、使用人たちぐらいかな。父親である王はこない、というか顔を見たことすらほとんどない。ほぼ放置されていて、意識の中では父親とは思えない感じだ。
ああ、子供たちもこんな感じだったのだな、土日も出勤、子供たちが寝ている間に家を出て、子供たちが寝てから家に帰る。
遊びになんて、近所の公園に何回か連れて行っただけだ。これじゃ嫌われても仕方ないなと、いまさらながら後悔した。
母上とジェーンさんに見送られ、大聖堂の中に入っていった。
中には騎士たちが数多くいて、左右に並んでいた。一応王子である俺の護衛のつもりかなと思ったが、なんか様子が違う。
俺が通っても礼一つせず、ただ見ていた。ものすごい敵意のある目でだ。
魔力測定器のある場所には、神官と第一皇子、あと父親である王がいた。
これはどういうことだ、と思っていると「この水晶に手をかざすように」と神官が言った。
とりあえず俺は周りを警戒しながら水晶に手を当てた。
魔力計にはこう出ていた。
火 0/10
水 0/10
木 0/10
金 0/10
土 0/10
風 0/10
聖 0/10
闇 0/10
時空 0/10
固有 なし
これはどういうことだ。魔力無しなんて!
思わず声を上げようとすると、いきなり騎士に抑え込まれ、猿轡をかまされた。
そして魔法封じの魔道具である首輪をつけさせられた。
「お前は魔力のかけらもない。とても王家の血を継いだとは考えられない。きっとお前の母親が誰かと通じてできた子だ」第一皇子は勝ち誇ったように言った。
「お前は本来王族を名乗った罪で処刑するところだが、父王の助命があったため、国外追放で勘弁してやる。名目は国外留学だ。学費は出してやる。卒業したらその国で働くんだな。もうこの国に入国することは禁止する。勝手に戻ってくれば死刑だ」そう言って、小声で「逆らわずに従えば家族の身の安全は保障してやる。逆らえばどうなるか分かるよな」といやらしい声で言った。
俺は何もすることができなかった。王をにらみつけたら目をそらされてしまった。
そうかい、子供は第一皇子だけというわけか。俺のことは眼中にないということだ。
今生ではまず父親に捨てられたか。
俺は騎士団に取りさえられ、そのまま裏門から連れ出され、ぐるぐる巻きに鎖で縛られて鉄の箱に閉じ込められた。この箱、魔法無効の術式が彫り込まれていた。魔力なしと判定して、罪をかぶせたのに魔法無効化を二重にかけるとは。
それから、数日箱に閉じ込められたまま、馬車らしきもので移動した。
食事や水は一切与えられなかった。
なので、首輪と鎖の破壊と魔法無効化の術式を破壊することに力を注いだ。
魔力を注ぎ込み続けたら、首輪はあっさり壊れた。どうも粗悪品だったようだ。鎖はあっさり破壊できた。
魔法無効化は一日がかりで魔力を大量に流し込み、式をオーバーヒートさせ、破壊した。
後は水魔法で水を作り、食べ物は時空魔法の次元袋の中に非常用に入れていたのを食べた。さらに金属魔法で箱の表面を削っておまるを作り、中の排せつ物は凍らせた。
何日か目で馬車は止まった。
とりあえず、首輪と鎖を模造して物をつけて何事もなかったように偽装した。
箱のかぎが開けられた。
「おい、ここから出ろ」
兵士が俺を引きずり出した。
そこは森の中だった。
何人かの兵士が俺を取り囲んでいた。
「私を外国の学校まで送るのではなかったのか?」
「そう命令されていたのだが、面倒なのでここで死んでもらうことにした。まあ、悪く思わないでくれ」と言って、剣を抜いた。
その時、模造品の首輪と鎖を外して、音魔法を発動した。
それまで、音魔法の練習で、高周波で物に向けて打ち出し、高熱を発生させたり、燃やしたりしたことはあったが、生物相手では初めてだった。
その瞬間、周りの敵は吹っ飛んで、倒れた。
兵士たちはみな、体の中から煙を出して、死んでいた。
言いようもない匂いが周りに漂っていた。
正直悲惨な光景だった。俺は草むらに駆け寄ると、胃の中の物を戻してしまった。
しばらくして落ち着くと、周りを観察する余裕が生まれてきた。
そこは、森の奥深くだった。騎士の数は5人いて、皆倒れていた。
あと、騎士たちの見張のつもりだったのだろう、2人監視役のような男が倒れていた。
とりあえず着ている物も含めて身ぐるみ剥いでおいた。何か重要なものを持っている可能性があるからね。それにこれからの生活のため、お金は必要だ。
死体に触るのは、1人目はこわごわだったが、7人目ともなるとだいぶ慣れてきた。
そして死体は土魔法で穴をあけてそこに埋めた。上に大きな石を墓石の代わりに置いておいたので、お墓の代わりになっただろう。だから成仏してね。まあ、祟れるものなら祟ってみなよ。
俺に渡される予定だった手紙があったので読んでみると、ダイグランド王国の首都ワペモの王立学園に留学することになっているようだ。
王からの推薦状やその他入学書類が一式あった。
金は次元袋に入れて10000王国マル添えられていた。だいたい日本円にして一千万円ぐらいか、入学金と3年間の授業料を足すと丁度そのくらいだ。
騎士たちはどうもこの金に目が眩んだらしい。
次元袋には封印がされていたが、それが破られていたからだ。
袋の中身が気になり、封を開けてみたら、大金が入っていた。この金を得るため、俺を殺して奪ってしまえ、となったのではないか。
さてどうするか、俺は悩んだ結果、とりあえず王都まで行き、学園に入学することにした。
恐らく学園にも監視役が潜んでおり、俺が怪してことをしないか見張るに違いない。母上やジェーンさんのことが心配だが、今戻れば二人とも殺されてしまうかもしれない。
何とか連絡手段を見つけて、俺の無事を知らせなくてはならない。
何せ突然拉致同様にここまで連れてこられたからな。
金はそのほかにも騎士たちや隠密が個人の者として持っていた金があって、更に身ぐるみ剥いだ鎧や剣、馬車を次元収納しておいた。残念ながら馬は偶然生き残った一頭除いて皆死んでいた。
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