第4話 婚約と陰謀
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前世ではそれなりに経験があった俺だが、今生では初めてだった。
ちなみにこの世界では婚姻に年齢制限はなく、本で読んだところでは6歳で結婚した例もあったそうだ。
いま、俺はジェーンさんに抱き着かれて寝ている。お互い裸だ。
うん、本当に久しぶりだが、とてもよかった。
ジェーンさんが目を覚ましたようだ。
寝ぼけているようで俺の顔を見るとニマーとして頭をなでてきた。
俺はされるがままだ。
しばらくして気が付いたのだろう、はっとすると、俺から離れてシーツにくるまった。
「おはようございます。ジェーンさん」
「おはようカール君」と消え入るように声で言った。
「ジェーンさんと仲良くなれてすごくうれしいです」すこし気を使って言ってみた。
ジェーンさんは少し驚いた様子で、そのあとニコッとして、「私もうれしい」と言った後、勇気を振り絞るような感じで「カール君、私と結婚してください」とかなり大声で言った。
おう、プロポーズされたよ、まあ、男爵の婿なら御の字だ。「僕でよければ喜んで、愛していますジェーンさん」とジェーンさんが喜ぶように言葉を選ぶと、感極まったように「カール君」と言って抱き着いてきた。
ジェーンさんのこの気持ち、いつまでもつかな。
このことは屋敷の使用人たちにあっという間に伝わり、皆に大歓迎された。
「お嬢様にやっと春が来た」と言って喜ぶ使用人たちだった。
使用人たちの中心と思われるセバスチャンに、「僕みたいな子供でもよかったのかな」と聞くと、「亡くなった奥様も22歳の時に12歳の旦那様と結婚されたのですよ。この家は女系一家で、若い男性の配偶者を選ぶ傾向があるそうです。二人はとても仲が良く、どこでも一緒だったそうです」と言って、少し顔を曇らせた。
「お二人がなくなった時もそうでした。馬鹿な指揮官が旦那様達の忠告も聞かずに突出した挙句に敵に包囲され、全滅の危機に瀕した時、旦那様が敵に切り込み、突破口を開けると、味方の部隊を逃がしました。そのあと殿として味方が逃げるまで共に戦い、お二人とも戦死しました。私の息子もご当主様達と運命を共にしました」そのあと、憎しみに満ちた顔で言った。
「戦死は武人の誉れ、このことに文句はありません。しかし、そのバカな指揮官は責任をすべてご当主様に押し付けて、自分はのうのうと褒賞までもらったのです。男爵家は王家からおしかりを受けることになりました。おかげで貴族社会からつまはじきにされました。その時お嬢様は15歳で、両親と同様に軍人の道を目指していたのですが、すべての交友関係は相手から断ち切られ、更に軍人への道も断たれました。そのうえ貴族社会では閉職である司書の職をあたえられ、以来11年の間孤独な人生を歩んでまいりました」
そう言って、俺の顔を見てながら「お嬢様がやっと幸せをつかんだのです。これを喜ばなくてどうします」と言って微笑んだ。
王都に帰り、母上にジェーンを合わせて、結婚したい旨話をした。
母上は、「ジェーンさん、まだカールは子供だけど良いの?」と尋ねたら、「はい、カールがいいんです」とはっきり言った。どうも母と面会して緊張のあまり思わず出てしまったようだ。そのあと顔が真っ赤になっていた。
母上は苦笑しながら「それじゃカールが12歳の魔力測定の儀式を終えたら結婚ということでいいかしら。カールは王子だけど王位は継げないから婿に行くことでいい?」
「はい、願ってもないです」
「母上ありがとうございます」
とりあえず、しばらくの俺の身の振り先は確保できたし、良いのかな?
王宮にて
第一皇子ジョセフ・ハイフィールドはイラついていた。彼は正室の生んだ第一皇子で、将来の王位継承者として期待されていた。
しかし、周りの期待と裏腹にジョセフは凡人だった。
学業もほどほど、魔法もすべて低レベル、個人魔法はなく、武の才もなかった。
本人もそのことは自覚していた。
しかし、ジョセフ本人は王位をあきらめるだけの度胸はなかった。
なのでいつしかライバルを蹴落とすことに全能力を集中した。
次男は側室の出だったが、人当たりがよく、弁が立った。魔力もそこそこあり、油断はできないと考えた。それで、次男に好意を持つ男爵家の一人娘を使って、いろいろ策略を使って二人に体の関係を持たせて婿養子に追いやった。
三男は同母弟で、一番のライバルだった。難しい宗教書を愛読し、魔力も聖魔法が飛び切り高く、母も弟に期待している様子が見て取れた。
なので、冤罪を着せて修道院送りにした。不幸にも一生を神への祈りで過ごすことになる。本当にいい気味だ。しかし、教会側はいい人材が来てくれたと、罪人にもかかわらず将来の教会幹部として育成するつもりらしい。それが少し腹立たしいが、実の弟だし、まあそのぐらいは許してやろう。
四男はとても厄介だった。側室の母を持つので、王位継承の権利はほぼないが、王宮から派遣している家庭教師からの情報だとかなり優秀で、魔法も剣もとびぬけているそうだ。
ただカラミティ男爵のもとに婿に行くことが決まっており、王位継承の芽はほぼないはずだ。
ただ、とびぬけて優秀なこいつを国内に残しておくことは俺、ジョセフ自身にとって害になる可能性があるだろう。
なので、策略を用いて、国外に追放することにした。
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