閉話4 平和な日々
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戦争は終わった。復讐も果たした。なので、今度は開発だ。虜囚にした10万の兵士たちをアムル州の東に入植させた。
税の3年免除と、広い土地をあたえたら、皆喜んで入植していった。
各村には30名づつ入植させ、開拓をさせた。
軍事訓練も行い、いざというときの戦力とするつもりだ。いわゆる屯田兵だ。
更に労働力として、ゴーレムと自動馬車を村に配り、農業機械として利用させている。
ゴーレムはどうやって作ったって?
金属魔法で外形を作成し、魔石を動力源として組み立てを行った。
ゴーレム・自動馬車工場には、金属魔法使いや土魔法使い、一般労働者を用意し、ゴーレムや自動馬車の量産体制に入った。
魔石は死者の山脈やウラル州東部にある鉱山から豊富に採掘されるようになった。
これは土魔法使いを使い、また爆裂石の有効利用を行い、採掘を進めている。
更に研究所も併設した。今のゴーレムは単純な動きしかできず、命令付与の魔法は土魔法に依拠しているが、これをさらに複雑な動きができるようにし、土木工事や農業に活用できれば、経済力の向上につながる。また、自動馬車もさらに発展させ、最終的に前世の自動車を作成するつもりだ。
食糧の増産も進めていった。水利の開発、調整や寒冷地でも強い植物の育成、更に品種改良のための農業試験場の設置をおこなった。
官僚たちはダイグランド王国の学園出身者を積極的に雇用した。また、ハイフィールド王国の官僚たちもクトー王国領で活用した。
あと、クトー・ハイフィールド王国の各地に学校を作った。
義務教育として、3年間の初等学校、その後上級初等学校が3年、更にその上に専門学校を作成した。
そのための組織として教育省を立ち上げ、ダイグランドの王立学園の事務官を大量に引き抜いた。
サイトさんも教育省の幹部に引き抜いた。
「一生この学園の事務で終わるつもりだったのだけど、カール君……いやカール様の期待に応えるよう努力いたします」と言って、気合いを入れていた。
統治方式は、各州の下に郡があり、その下に県が置かれている。県は町と村に分かれていて、町と村は基本自治に任されている。
県以上は王が任命した者が赴任して統治をおこなう体制にした。
ただし、ハイフィールドはそれぞれ領地を持つ領主がいるので、彼らを藩知事に任命し、王家直轄領のところはクトー王国と同等の統治体制にした。
ダイグランド王国との同盟関係もうまくいっている。
ダイグランド王国は領地貴族が中心となった江戸時代の徳川幕府のような感じだ。
レッドハンド公爵を宰相として、王を支える統治体制を作っていた。
そういえば、シュミット兄上が結婚することになったそうだ。
相手はレッドハンド公爵の孫だそうだ。つまりいとこ同士というわけだ。
俺にも孫娘を勧めてきたが、王女の件でこりごりだし、すでに正室がいることを伝えたら、苦笑いして引っ込めた。
俺の女性関係はとても華やかだ。ジェーンさんと異母姉妹のドロシーさん、すっかり古女房化しているリーネの三人に、コスプレ虜囚の元王妃コミケ、名前は俺が勝手につけたのだが、がいる。ちなみにコミケとは肉体関係はなく、立ち位置としては俺専属の芸人みたいなものかな。色々なコスプレをさせて、俺や客たちを楽しませている。
何故か、アニー・オークレイ大将も一緒に暮らしている。
「娘たちが心配だしね。一緒に暮らしていれば軍の指揮もしやすいだろ。義母と同居は嫌かい?」とニコニコしながら言うので、まあいいやと思い、一緒に暮らしている。
ぶっちゃけ、大将は50代だそうだが、肉体は鍛え上げられており、顔もきれいでかなり若々しい。30台と言っても通るかもという感じだ。
正直、結構好みのタイプなので困ってしまう。あっちは俺のことを息子、下手すれば孫ぐらいの気持ちでいるらしく、「たまにはお母さんと一緒にお風呂に入るかい?」とからかってくるし、パンツにシャツ姿の半裸の状態でうろうろされると本当に目のやり場に困るのだが。
さすがにジェーンさんやドロシーさんが怒ってくれるけれど、「こんなおばあちゃんの裸なんて、誰も気にしないよ」と文句も右から左へと受け流している。
そんなこんなで、毎日ジェーンさんとドロシーさんと励んでいたら、二人とも妊娠した。
ちなみにリーネも二人が懐妊したことで、自分もそろそろ子供が欲しいと、それまでかかっていた避妊魔法を解除したらすぐに妊娠してしまった。
この世界では、妊娠するとそういう行為は禁止となる。というわけで、久しぶりの一人寝だ。すこし寂しいかな。
ある日、さてそろそろ寝るかと思い、部屋に行く途中でアニーお義母さんに呼び留められた。
「どうだい、少し飲まないかい」とお酒を持ちながら言ってきた。
「すみません、まだ飲める年ではないので」と断ったら、きょとんとした顔をして「確か14歳だよな。特に問題ないだろう」と不思議そうな顔をしていた。
そういえばこの世界に飲酒の年齢制限はなく、12歳ぐらいから水で割った果実酒を飲むのが普通だった。
「酒は明日に残るのですよ。もう少し年を取ってからじゃないと、体が受け付けないのです」と言ったら、「まあ、少しだけ付き合いなよ。おいしい果実酒もあるから」と言って部屋に引き込まれました。
果実酒の水割り、比率は酒1対水999ぐらいの割合で割って、ちびちびとのどを潤していた。このぐらい薄めたら問題ないだろう。
実際精神年齢は70超えているのだし、違法ではないよね。
アニーお義母さんは蒸留酒を生のままでぐいぐいやっていた。
「カール様のおかげで、ジェーンもドロシーも幸せになれた。感謝しているよ」
「いえいえ、私の方こそ幸せな生活を送っています」
「あんたいい男だね。亡くなった旦那を思い出すよ」
「旦那様はどういう方だったんですか」
「クーネ、ジェーンの母親だが、奴とは幼馴染で親友だった。家が同じ軍人家系ということもあって、かなり親しくしていたのさ。一緒に軍人になって、戦場を駆け回ったよ。当時はまだダイグランドの威光が西側の小国には届いていなくて、小国間でお互い争っていたからな」
アニーお義母さんは思い出すように、ぽつぽつと話し始めた。
「そんなことをしていたら、婚期を逃してしまってね。一応跡取り娘だったから、少し困ったことになってね。そしたら、クーネの奴、結婚するから式に来いとか言い出したんだよ。ちょっと待て、どうやって捕まえたんだと私は焦ったね」懐かしむように話をつづけた。
「式に行くと、ウエディングドレスを着たクーネの横に少年がいたんだよ。かわいい子でね。でも目はきらきらとして強い意志を感じる男だった。ひとめぼれだね。その時までそんな趣味があるなんて自分でも知らなかったよ。そう、カール様に似ているな」と言って微笑んだ。
「結婚式が終わって、しばらくたってもその子のことが忘れられなかった。親友の夫だぞ。忘れるんだ、と思ってもその思いは膨らむばかりだ。ついに思い余って、クーネに泣きついたよ。一晩でいいから夫を貸してくれと」
「絶交を覚悟の上だった。そしたらクーネがそれじゃ共有しましょうと言ってくれたんだ。その夜、私はクーネの目の前で思いを遂げたよ」
「聞いたら、その時クーネはすでに妊娠していたらしい。それで旦那の夜の相手がいなくて可哀想だと思っていたそうだ。本当にすごかったよ。絶倫というのがこれほどしっくりくる男はいなかったね。これじゃすぐにできるわけだ」
「私は間抜けなことに女軍人につきものの避妊魔法をかけたままだったからその時は孕まなかったよ。それで暴走状態から我に返った私は早速根回しを始めた。クーネも女男爵だったからその夫はほかに配偶者を取れない決まりになっているんだよ。だから私は愛人ということで家族には了解をもらったんだ」
「クーネの出産を待って、私の避妊魔法を解除して種付けしてもらった。それで生まれたのがドロシーさ。種付けと言っても、ちょくちょくクーネの家に遊びに行って旦那としていたけどね。クーネの奴、妊娠中だというのに私らが仲良くしているのを見て我慢できなくなったのだろう。3人で仲良くしてしまったこともあったよ」と笑って言った。
「それが、それが、あいつの所為で……。私は愛人だったから連座せずに済んだけど、ジェーンは……。旦那とクーネは味方を逃すために、直属の家臣たちと玉砕した。見事な最期だったと聞いたよ。それがあいつは敗戦の責任をすべてクーネたちに押し付けて、自分が手柄を独り占めしやがった。王もそれを認めたよ。私は悔しくて悔しくて、いつか復讐してやると心に決めた。軍も辞めようかと思ったが、なんせ私は戦うことしか能のない女だ。それに軍にいれば復讐のチャンスもあるかと思ったからね。しかしそのチャンスもなく、退役まじかになった」その時、俺に近づき、両手を握った。
「カール様のおかげで復讐できた。軍の最高司令官だったあいつも王に連座して処刑された。王も死んだ。復讐できたのはカール様のおかげだよ」と言って、ぽろぽろと泣き出した。
俺、女の涙には弱いんだよ。それで抱きしめて、頭をなでてあげた。
俺の胸にしがみつくようにしながら彼女は泣いた。しばらく泣いた後、寝てしまった。
俺は、彼女をベッドに寝かして、毛布を掛けると、部屋を出て行った。
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次の閉話が最後になります。年度末はとても忙しいので、途中になっている物語を少しづつ書いて行こうと思っています。お読みいただければ最高です。