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第21話 王位簒奪

毎日18時に投稿しています。お読みいただければ幸いです。

 さて、先に文官たちを国に返して、第1皇子のことと、別の王子を皇太子にするように王に進言させることにした。

 何人か買収して、情報を知らせるように仕向けた。お互いのことは知らせず、個別に情報を送るようにさせた。裏切りや二重スパイを警戒してだ。


 王は第1皇子が逮捕されたことにショックを受けたらしく、文官たちになんとか釈放させるよう働きかけを行うように命じたらしい。

 当然、別の王子に皇太子を変更することは拒否したらしい。

 さて、それでは俺の番かな。


 俺は何人かの護衛や文官と一緒にハイフィールド王国に向かった。武官たちも一緒だ。国境にはクトー王国から呼び寄せた一個師団を配置した。


 武官たちを解放した後、先に第2皇子に会いに行った。オークレイ中佐には先に計画を知らせてあるので、僕の顔を見てニヤリと笑っていた。

 「初めまして、兄上。第4皇子のカールです」

 「ああ、初めて会うね。ハインツ・バイロイト男爵だ。婿養子に入ってね」と少し落ち着きがない感じで話をした。

 「単刀直入に言います。兄上、王になってください」

 「ジョゼフ兄上がダイグランドで逮捕されたのは知っている。しかし、父上は兄上に執着している。それ以外の子供は眼中にない。私が王になる芽はないと思うが」

 「大丈夫ですよ。父王には位を退いてもらいます。強制的に。そのための準備をしています。そう言えば、なぜ父王はジョゼフに執着しているか知っていますか」

 「正妃の息子だからだろ」

 「第3皇子も正妃の子でしたが切り捨てましたよ」

 「それじゃどうしてだい?」

 「ジョゼフは正妃の子ではないんですよ」

 「なんだって!じゃ誰の子なんだ」

 「父が愛した女です。王妃が国から連れてきた侍女だそうですよ」

 「えっ」

 「王妃はダイグランドを宗主国に持つ隣国から、ダイグランドの仲介でやってきたそうです。王妃のお付きの一行の中にその侍女がいたそうなのですが、父王は一目ぼれしたそうです。最初はお互い節度を持った交流をしていたそうですが、嫁いで何年もたつのに懐妊の兆候がなく立場的にまずい状況になった王妃が、二人の親密な関係を知っており、秘密裏に交わりを持たせたそうです。その結果、男の子を出産、その子を王妃の子としたそうです」

 「その侍女はどうなったんだい」

 「そこまでは調べきれませんでしたが、王妃に殺されたのか、闇に葬られたのか、どちらにしろ今は所在不明です」

 「第3皇子は……」

 「これも別の侍女に産ませたようですね。第2皇子が生まれたことで危機感を持ったようでスペアが欲しかったようです」

 「父王が第1皇子に執着する理由は……」

 「好きだった女に産ませた子だからでしょう。おかげで私たちが割を食ったわけですが」

 ハインツは黙ってしまった。そして、絞り出すように言った。

 「私は王の器ではない。とても無理だ。ジョゼフ兄は何か誤解していたみたいだが、私には能力がない。母は準伯爵家の出で父王の側仕えだった。何かの拍子に手を付けられて私を生んだ。私はただ人当たりがいいだけの男だ。外に何もなかった。だから兄と争うことを避けてこの家に婿に来たのだ。そして私には子供がいる。目に入れても痛くない可愛い娘だ。男爵なら好きな男と一緒にさせてあげられる。王になれば間違いなく政略結婚の道具として使わなくてはならない。そんな修羅の道を家族に会わせたくない」

 「安心してください。王になるのは一時だけです。すぐに私に譲位してもらいます。あとは公爵待遇でここでゆっくり隠遁生活をしてください。娘さんかこれから生まれる子供が家を継いだ時は伯爵の地位を保障しますよ」

 兄は黙って考えていた。そして言った。

 「もしこの申し出を断つたら」

 俺はニコッと笑って言った。

 「敵として扱わせていただきます」

 「カール、君に従うよ。最悪でも私の命一つで済ませて欲しい。家族には手を出さないで欲しい」

 「わかりました。最悪の場合は、ダイグランドでご家族を受け入れましょう。それなりの爵位は保証しますよ」

 「ありがとう」

 さて、次は王宮だ。


ハイフィールド王国王宮にて

 「お前が付いていながらなぜ第1皇子を助けなかったのか」王は激高しながら言った。

 アインツ大佐は黙って頭を下げていた。

 王はひとしきり怒鳴り散らした後、謁見の間から出て行くよう命じた。

 アインツは何も言わず出て行った。

 「なんとかジョゼフを助けられないものだろうか」とつぶやいた。

 取次の係が「ダイグランド王国から使者が来ております」

 シュタインが言っていた皇太子の交代の督促だろう、このまま追い返したいがそれをやっては完全にダイグランド王国と敵対してしまう。さすがにそれはまずい。

 儂ははらわたが煮えくり返りながらも使者と会うことにした。


 「ハイフィールド王にはご機嫌麗しく」

 使者としてきたのは第4皇子だったカールだった。おまけに第2皇子のハインツを連れてきている。

 「貴様、どういうつもりだ!」

 「王には、こちらにいる第2皇子に譲位するようダイグランド王の使者として命じに来ました」

 「第1皇子を返せ!貴様は殺してやる!衛兵、こいつらを捕らえよ!」

 その言葉で、衛兵たちがなだれ込んできた。

 「無駄ですよ、元国王」とカールはにやにやしながら言った。

 兵はカールを捕らえるのではなく私を押し倒し、後ろ手に縛った。

 隣にいる王妃は、悲しげに儂を見ていた。

 「どういうことだ!」

 「もうすでに詰んでいるのですよ」カールは微笑みながら言った。


 「お疲れ様です。オークレイ中佐」カールは衛兵の一人に言った。

 「大したことはないよ。まあ、先に王妃に話を通すのはやや苦労したが、命の保証とこの後の生活保障で何とか話が付いたよ」その兵士は楽しげに答えていた。

 「カール、私の命と今後の生活は保障していただけるのですよね」王妃はすがるように尋ねた。王妃は裏切っていたのだ。

 「ええ、命は保証しますし、離宮での生活を認めましょう。形上は軟禁ですが、今回の協力に対する報酬です」とカールが言うとほっとしたようだった。

 「王妃よ、貴様わしを裏切ったな」というと、「あなたがいけないのよ。ダイグランドに逆らうなんて。この国なんてあっという間に滅ぼされてしまうわ。私はそんなことで死にたくない」王妃は冷たく言った。


 わしはそのまま軟禁された。

 譲位の書類にサインをするように言われたが、拒否すると拷問が始まった。

 床一面に針が突き出している部屋に押し込まれた。

 儂は寝ることもできず、食事も水も与えられなかった。

 真っ黒に塗られた部屋は窓もなく、物音一つしなかった。

 座れば針が尻を突き刺した。足は針に突き刺されて血が流れていた。

 無限の時間が流れた。儂はとうとう根負けした。

 「サインするからここから出してくれ」そう叫んだら、部屋のドアが開いてわしは連れ出された。すぐにサインを求められた。休ませてくれと言ったが、サインしないと部屋に戻すぞと言われ、何枚かの書類にサインした。中身など見ていない。言われるままにサインした。

 そのあと、足に包帯がまかれ、別室に連れていかれて飲み物と軽い食事が用意されていた。

 儂はそれを飲み、貪り食った。

 すると意識がだんだん薄くなっていった。私は床に倒れた。そして意識を失った。

 

 国中に、王が突然崩御したこと、新しい王位に第2皇子のハインツが継いだこと、皇太子には第4皇子のカールがつくことになったことが知らされた。

 第3皇子は罪を許され、正式な神官として、神殿に奉職することとなった。

 一月ほどで王が退位し、皇太子が王位を継ぐことになったという知らせが国中に知らされた。

 新しく王になったカール・クトー・ハイフィールドは即位式を上げるとともに、3人の王妃との婚姻を結んだ。

 正妃はジェーン・カラミティ男爵、副妃はドロシー・オークレイ、側妃はリーネ・レッドハンドとなった。

 リーネはレッドハンド公爵の養女に迎えられ、公爵息女となっていた。


 王にこびて、甘い汁を吸っていた連中は軒並み処分した。

 軽いものは打ち首など楽に死ねる方法で処分した。罪の重いものはそれなりの苦しみを与えて処分した。

 彼らの家族には、軽いものは爵位のはく奪と財産没収ぐらいですましたが、重くなると追放処分も行った。

 特にジェーンさんの両親を死に追いやり、名誉を棄損した王のいとこで軍の司令官だった男は、財産のを没収、爵位をはく奪、軍の階級も元帥から兵士に格下げして、罪人としてとらえ始末した。

 本人は泣き叫びながら、許しを乞うていたが無視して両腕を縛って吊る下げて、町の広場にさらした。

 飢えと渇きに苦しみ、縛られた手がうっ血して腐っていった。

 そのまま腕が腐って落ちてくるまでさらして、最後は体を焼いて灰は川にばらまいた。

 家族は全員さらし物とした。ただ、檻の中に入れられ、一切の被服も奪われ、両手を縛って立たせた状態にした。

 立ったまま水も食べ物も与えられず、休む事も出来ずに次々と絶命していった。


 そうやって一部の貴族は粛清されたが、その代わりいくつかの貴族はその地位を上げた。

 シュタイン家は侯爵に陞爵し、クトー・ハイフィールド連合王国の外務大臣に任じられることとなった。

 オークレイ中佐は大将に昇進し、王国の軍最高司令官となった。

 アインツ大佐は中将に昇進、師団長になった。

 他にも何人かの貴族が褒賞にあずかった。

 彼らは使節団の一員としてダイグランドに行った者達で、カールによって懐柔されていて、今回の簒奪に力になった者達だった。


 第1皇子ジョゼフの行方は何も伝えられなかった。

 彼のことはその後の記録は何もなく、歴史の闇として消えていった。


 国民たちは王宮での政変を噂しあった。


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