表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/26

第20話 復讐と王位簒奪への決意

毎日18時に投稿しています。お読みいただければ幸いです。

 シュミット様の戴冠式が終わったところで、ハイフィールド王国の第1皇子がシュミット様に面会を求めてきた。

 王位継承の了解をもらいに来たのだろう。

 シュミット王とレッドハンド公爵に、実は俺はハイフィールド王国の第4皇子で無実の罪を着せられ追放されたことを伝えた。

 「ああ、普通の平民にしてはなんか変だと思ったよ」王は言った。

 「貴族のマナーも身に着けていたしな。立ち振る舞いも貴族のようだったし」公爵も同意した。


 「それでどうしたい?」王はにやにやしながら訪ねてきた。

 俺は「まあ、せっかく来てくれたんだ。歓迎しないとな」と言ってニヤリと笑った。

 

王宮でのジョセフ

 ハイフィールド王国第1皇子であるジョセフ・ハイフィールドは緊張していた。

 シュミット新国王と謁見することになっていたためだ。

 この謁見をうまくこなして、王に認められればハイフィールド王国の王位継承が認められることになる。

 ハイフィールド王国はダイグランド王国の半州にも満たない広さしかなく、国家規模も比べ物にならないぐらい小さい。

 そのため、ハイフィールド王家はダイグランド王家の頼子として、庇護を受けて国家を維持している。

 我が国の王の地位は、この国の伯爵より上、侯爵より下ぐらいに位置づけられている。

 

 王の間には、案内がかりの貴族がおり、私を誘導してくれた。

 「ここでしばらくお待ちになるように。中であなた様を呼ぶ声がして、ドアが開きますので、そうしたら中にお入りください。王の間を進むと絨毯の色が変わる場所があります。その境目の手前で礼をしてください」

 「わかった。ありがとう」私は言った。

 地位としては、この貴族より私の方が上ではあるが、相手は大国の貴族だ。そこそこ気を遣う必要がある。

 実質的には伯爵より下のようにふるまうべきだと、父から言われている。

 

 「ハイフィールド王国第1皇子ジョセフ・ハイフィールド様の御成」声が聞こえると、両開きのドアが開かれた。

 私は、部屋に入り、そのまま直進し、赤いじゅうたんの前で右手を前にして、腹に横向きに付くようにして頭を下げた。

 「面を上げよ」王が言ったので頭を上げた。

 王座には新王が座っており、冠と王杖をもち、こちらを見ていた。

 左右には重臣と思われる方が立っていた。左の年を召した男性はレッドハンド公爵だろう。この国の宰相であり、この国一番の貴族で、王の祖父である。大変気を遣う必要のある相手である。

 右側には、一人の少年が立っていた。その少年の顔を見て、私はびっくりした。

 「何でお前がここにいる!」思わず叫んだ。

 そいつは私が罠に嵌めて国外追放にした第4皇子のカールだったからだ。

 「久しぶりですね、兄上。お元気そうで何より」とにやにやしながら返事をしてきた。

 「お前ごときがいていい場所ではないぞ。身の程をわきまえろ!」私はそいつを怒鳴りつけ、胸ぐらをつかもうとした。

 その途端、王の間の護衛をする騎士が私を押さえつけ、怒鳴った。「貴様、誰に向かって口をきいている。この方は王の義兄弟であり、この度の内乱を鎮め、ルキア帝国から国を守った英雄で現在クトー王国の王であるカール・クトー様だぞ。貴様ごときがそのような口をきいて言い方ではない。場をわきまえろ!」


 カールは手をかざしその騎士を止めると、「ジョゼフ、相変わらず自分の方が上だと思い込んでいるようですね。私を追放した国によくおめおめとやってきたものです。その図々しさには感服いたします。本当に私の前に現れてくれるとは無知無能としか言いようがないですね。まさか宗主国の情報すらまともに収集することもできない愚物とはさすがに思いませんでしたよ。まあ、私にとっては幸運ですが。私にあれだけのことをしてただで済むとお思いか、きちんと復讐させていただきますよ」とにやにやしながら言った。

 押さえつけられた私をこの国の騎士たちが取り囲んでいる。もう逃げられない。王位継承どころではない。私の命、私の国もどうなるか、思わず私は漏らしてしまった。

 私から出た水分が、私を中心に絨毯に染みて行った。


王宮でのカール

 第1皇子はそのまま引っ立てられて、牢に入れられた。

 さて問題は第1皇子の使節団の扱いだ。

 ここで、王子を取り戻そうと暴れられたら、少し厄介だからな。

 それで、第1皇子を捕らえた後、すぐに使節団のお付きの者たちを監禁とした。

 ちょうど使節団のお付きの者たちは、第1皇子に付き添って王宮にやってきていたので、一カ所に集めて監禁するのはそう難しくなかった。

 俺は彼らに会って話をするため、監禁場所に向かった。

 なんで俺が行くかだって?

 一応、俺第4王子だし、事実説明には最適であるとシュミット王とレッドハンド公爵が判断して、俺に頼んできたからだ。

 

 使節団が監禁されている場所に行くと、俺は尋ねた。

 「この使節団の副使の方と、護衛武官の方はいますか」

 「私はこの使節団の副使であるシュタイン伯爵である」

 「筆頭護衛武官アインツ大佐だ。」

 「私は元ハイフィールド王国第4王子カール・ハイフィールドだ。現在、私はカール・クトーと名乗っており、ダイグランド王とは義兄弟の間柄である。第1皇子は現在、王の間での暴言と、私を嘘の罪で陥れ、殺害しようした罪で逮捕された。貴公たちのうち、文官は速やかに開放される。その際、王への書簡を届けることを依頼する。武官は武装解除ののち、国境まで護送され、国境にて解放される」

と告げた。

 副使のシュタインは声を上げた。「第1皇子様はどうなりますか」

 「それは貴国の出方次第である。第1皇子の代わりに第2皇子若しくは第3皇子を後継者にし、彼を廃嫡すれば、釈放も考慮しよう。ただ、どうしてもそれを拒否するのであれば、貴国との戦争となり、第1皇子は人質として殺される可能性がある」

 シュタイン伯爵はしばらく沈黙した後、「分かりました。国に帰り王にそのことを伝えましょう」と言った。

 一方武官のアインツ大佐はかなり不満げだった。

 「武装解除とはどういうことだ。我々は軍人である。剣の所持は認めてもらう」

 「それは認められない、武装は国境につき次第返却するが、それまで武器は預かる」

 「断る!」

 「ならば制圧するぞ」

 「やれるものならやってみろ」

 「いい加減にしろ、この状態で戦って勝てると思うのか」シュタインはアインツを制止するが、「文官は黙っておれ、これ武官の意地だ」と言い放った。

 槍を持ったこちらの兵と、護衛の武官たちは一瞬即発の雰囲気となった。

 「やめなよ、大佐。ここで争ったら王家に迷惑がかかるし、最悪ハイフィールドが王国に飲み込まれてしまうよ。ここにいる第4王子に武装を預ける形であれば、王家の人間に対して武装を解くのであるからあんたのプライドも傷つかないだろ」一人の女性が声をかけた。

 「オークレイ中佐か。確かに王家の人間に対して、武装を預けるのは不思議ではないな」と言ってしばらく考えた後、「分かった貴公に対して武器を預ける。その形なら受け入れよう」とアインツ大佐は言った。

 なんとか話がまとまったな。オークレイには感謝だ。


 俺は別室にオークレイとお付きの者を呼んだ。

 「オークレイ中佐、ご助言感謝します」俺がそういうと、「あんたがカールかい。なかなかいい度胸しているじゃないか。うん、ジェーンが惚れたのもわかるわ」と言って、肉食獣の目で俺を見た。

 一瞬背中がぞくっとしたが、その時俺に抱きついてきた女がいた。

 「やっと会えた、カール」抱き着いてきたのはジェーンだった。

 「えっ、ジェーンさん?なんでここにいるの?というか、僕ジェーンさんに追放されて、貴族の地位を失ったことで振られたと思っていたのだけど」

 「振ってなんかいない。私はずっと愛している。手紙を読んで、直ぐにこの国に行こうとしたらセバスチャンに止められた。貴族は外国に行くのに国の許可がいる。カールと会うためでは国は出国を認めないだろう。無理やり出国すれば領地と爵位は取り上げられると。領地は母やご先祖様が守ってきた土地、私のわがままで手放す話にはいかない。それで、オークレイ小母様に頼んだ。ちなみにオークレイ小母様は母の親友で父の愛人だ。そうしたら、武官付きの秘書として第1皇子のお付きでこの国に来れた。カール、本当に会いたかった」と言って、抱き着きながら涙を流した。

 ああ、振られたわけではないようだが、まだ信用できない。俺が王になったから手のひらを返した可能性がある。とりあえず調べてみるか。


 そんなことを考えていると、「ふ~ん、あなたがお姉さまの思い人か」と一人の女性が声をかけてきた。

 小柄だが、スタイルがよく、ジェーンさんと違い胸部の装甲がかなり巨大だ。

 「なかなか美味しそうな子ね。姉上、この子私にも分けて」とにこにこしながらジェーンさんに言いました。

 「ドロシーなら別にいいけど、私が正室よ」「りょーかいしました」

 ちょっと待て、俺この二人にシェアされるの?いつの間にそうなった?

 「お前たちも私たちのように一人の男を分け合うか、やっぱり親子だな」とにやにやしながらオークレイ中佐は言った。

 「ええと、ジェーンさん、悪いのだけど僕にはすでに愛人が一人いるんだ。ジェーンさんには振られたと思っていたから、メイドに手を出して。でも今ではすごく仲良く暮らしているんだ」俺は真実を話した。さて、ひっぱたかれるか、振られるか。

 「その子にも会わせて。その子が問題なければ3人でシェアね」とにこにこしながらジェーンさんは言った。

 ジェーンさん本当に動じない人だな。


 「ええとジェーンさん」

 「なにカール?」

 「ジェーンさんはすぐに会いに来るつもりで手紙は出さなかった。ところが爵位と領地を手放すことができなかったため、僕のところに来る伝手を探したら、第1皇子の使節団にまぎれることができた。そう言うことでいいですか」

 「うん」

 「じゃなんで手紙の一つもくれなかったのですか」

 「小母様の伝手でダイグランドに行けることになってすぐに手紙を出したよ。学園あてで何通も。でも返事をくれなかったからどうしたのかと思ったの。もしかしたら、殺されたのか、学園から追放されたのか、それとも王家の力で途中で握りつぶされたのかって」

 「それは本当ですか」

 「うん、カール・ハイフィールド様宛で、学園の住所に昨年の夏ぐらいから」

 あっ、それは届かないかも。俺はただのカールで平民として学園生活を送っていたし、カールという名前は結構いる。さらに夏休みが終わってすぐから戦争に駆り出され、ついこの春までは戦いに明け暮れていたからな。その後は領土の維持と開発でバタバタしていて学園には全然いけてない。事務のサイトさんなら何か知っているかもしれない。後で取りに行ってみよう。

 「すまない、ジェーンさん、ずっと戦場で戦っていて全然学園に行けてないから手紙も見ていないんだ。ごめんね」

 ジェーンさんは悲しそうな顔をした。

 あっ、これはジェーンさんを傷つけてしまったかな。


 そこにオークレイ中佐が口をはさんできた。

 「きみは、さっきダイグランドの王と義兄弟の関係だと言ったね。追放された第4皇子がどうしてそうなったのかい」と尋ねてきた。

 俺のことを知らないのかなと思って、探るように今までのことを話し始めた。一応領土をもらって独立していることは隠した。俺に対する態度が豹変した理由がそれである可能性があったからだ。


 「へぇ、だから王の義兄弟ということになっているのか。この国の王族並みの地位が与えられるというわけだね。そうすると、ジェーンのところに婿に来るのは難しいか」

 「どうして、小母様」とジェーンさんは尋ねた。

 「だって、一応カール殿はこの国の王族待遇だ。それを男爵家の婿にするというのはかなり難しいのではないか」

 「確かに中佐のおっしゃる通り」俺が答えると、「なんかいい方法ない。カールと一緒に住む方法は」とジェーンさんは中佐に尋ねた。


 「それならカールをハイフィールドの王にしてしまえばいい」

 「僕をハイフィールド王国の国王に?」

 「そうすればお前たちが結婚するのに問題ないだろう。実際カールの母親は男爵家の出だしな。それに王になるのならば、ダイグランドの王の義兄弟としても小国とはいえ一国の国王なら納得するのではないか?」

 「いい考えだけど、どうやって王にするの?」ドロシーが訪ねた。

 「そうよ、だってカールの上には第2皇子も第3皇子もいるのよ」ジェーンも不思議そうに言った。


 「それなら僕に考えがあります。それではハイフィールド王国を取りますか。当然中佐協力してくれますよね」

 「ああ、愛する娘たちのためだ。喜んで協力するよ」と言ってニヤリと笑った。

 「クーデターかい、それとも王と王子達を暗殺するのかい」

 「もっと平和的にやりますよ」そう言って、俺もニヤリと笑った。


 俺はシュミット様とレッドハンド公爵に説明しに行った。

 2人ともびっくりしているようだ。

 「クトー王国はどうするんだ」

 「両方の王になります。ダイグランド王国として認めてもらえますか」

 「つまり飛び地になるのか、まあ構わんだろう。シュミット王もよろしいですか」レッドハンド公爵は王に尋ねた。

 「ああ、私は構わない。クトー王国とハイフィールド王国の支配者として、そして義弟として私を助けてほしい」シュミット様は言った。

 なんか、威厳が出てきたというか、王らしくなってきたな、。地位が人を作るというが本当なんだなと感心した。


 「シュミット王、今後もあなた様の弟としてあなたの治世を助けていきたいと思います。我が国とダイグランド王国はともに手を携えて発展していきたいと思います」といって、礼をした。

 「カール、今後は私のことを兄と呼びなさい」

 「はい、シュミット兄上」

 「うふふ、心強い弟ができたな」とシュミットは微笑んだ。

 その時俺は「あんたが裏切らないなら俺はあんたを助けよう。裏切ればその報いを受けてもらうけどね」と考えていた。


 そのあと、久しぶりに学園に行って、サイトさんに会って、俺あてに手紙が来ていないかどうか尋ねた。

 「ああ、これはやっぱりカール君のでしたか。誰宛てだかわからなくて困っていたのですよ」と言って、大きな箱一杯の手紙を出してきた。何通か読んでみたが、読んでいる俺が恥ずかしくなるぐらい愛の言葉が綴られていた。

 ジェーンさん疑ってごめん。今のところ彼女は俺のことを愛してくれているみたいだ。



 お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら星かブックマークをいただければ大変ありがたいです。

 星一ついただければ大変感謝です。ブックマークをいただけたら大大感謝です。ぜひとも評価お願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ