第11話 手籠めにしたメイドとの交流
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俺は夏休み一杯その離宮で暮らした。離宮にある本を読み、飽きたら使用人たちの怪我や病気を治し、シュミット様とジョセフィーヌ様、オリビア様とご飯を食べたり、お茶を飲んだりした。
ちなみにオリビア様の足の残りも直した。時間はかかったが、成功して以前通りの体に戻った。
夜は最初に抱いたメイドと寝た。メイドの名はリーネと言い、初めての夜以降、俺の専属メイドにしてもらった。
リーネとはたまにデートをした。街を案内してもらい、リーネの実家にもお邪魔した。
リーネの母親の腰の痛みがひどいようだったので、治癒魔法で治したところ、近所で評判になり、治癒魔法師では治せないと匙を投げられた病を見てくれないかと依頼されることが多くなった。
リーネは申し訳ないような顔をしていたが、大したことではないし、リーネには無理やり夜の相手を務めさせているので(リーネは「無理やりではありません。私が望んでいるのです」と言って強く否定している)快く引き受けている。
地元の治癒術師では治せない病気やけがを治したら、とても感謝された。地元の治癒術師達に憎まれないように、あくまで彼らでは治せない病気やけがに限って行った。
リーネのうちに遊びに行くと近所の治癒魔法師が訪ねてきて、「治癒魔法を教えて欲しい」と言われたので、魔力増大のための訓練をしてあげた。
本によると魔力は源泉となる核が体にあり、それが体を循環しているとのことだ。
なので、その源泉となる核に魔力を加えて、核を大きくしてあげれば魔力出量も上がることになる。ただ、あまりに一度に魔力を注ぎ込むと核が壊れてしまうこともあり、力の加減が必要なうえ、少しずつしか大きくならない。
なので、歯の矯正のように内側からゆっくりと抑えながら大きくしていくイメージで行う必要がある。
また、治癒魔法のノウハウについても教えてあげた。
俺は大体無詠唱だが、集中力を高めるため、詠唱を用いる治癒術師が多い。
このあたりで治癒術師をしている者は大体民間の魔法学校か、師匠について学んだものが多い。
それはそれでとても実践的なのだが、基礎の部分に欠落があり、そのためある一定以上から成長が難しくなってしまう。
俺は王国一番の学校にも通って、国でも1、2を争う図書館で本を片っ端から読んでいる。
魔法書も充実しており、俺はほぼ読破しているので、自画自賛だがかなり詳しくなっていると思う。
ちなみに、俺の記憶力は身体強化の魔法を使っているのもあるが、前世よりかなり良くなっている。一度読んだだけですいすいと頭に入ってくるから恐ろしい。
そういうわけで、彼の話を聞き、欠落する部分を埋めてあげるよう知識を伝授した。
最初は一人だったが、そのうち増えていき、ちょっとした教室のようになってしまった。
教えを受けている治癒術師が俺のことを「先生」と呼んで、敬ってくれるようになった。
領民たちからも尊敬され、少しいい気分だ。
領主であるレッドハンド侯爵も会いに来て、「君がカール君か、いろいろうわさに聞いている。領民たちが大変喜んでいる」と感謝された。
「ところで、オリビア、その顔は……」と唐突に尋ねてきたので、オリビア様は微笑んで、「カール様が直してくださったのです」と侯爵に微笑んだ。
侯爵は涙を流し喜んだ。
そしてシュミット様とジョセフィーヌ様がオリビア様と俺が婚約することを伝えると、「それがいい!あんなくそ王家のために政略結婚の道具になる必要はない。あいつら、事故の原因を調べることもせずに闇に葬ったばかりか、傷物の王女は要らんとばかりに修道院に送ろうとした。そんなことはさせまいとわしのところで引き取ったのだ。その時に、王女としての義務と権利は放棄しているので、王家に結婚をとやかく言う権利はないからな。きっと、あいつら悔しがるぞ。考えたら楽しくなってきたわい」と高笑いをした。
夏休みを終わりに近づき、そろそろ学校に戻ることになった。
別れ際、馬車に乗り込もうとしている我々にジョセフィーヌ様とオリビア様は別れを惜しんでくれた。
オリビア様は抱き着いて、「来年の春には結婚しましょう。それまでに準備をしておきますね」と言って、ほほにキスをしてくれた。
オリビア様のこの気持ちがいつまで続くかな、と疑心暗鬼になりながら、表面上はにこりとして、「それまで楽しみに待っています」と言って軽く抱擁し返した。
ちなみにリーネは侯爵様からもらい受け、俺の愛人兼使用人として一緒に王都に行くことになった。本人に先に確認したら、本心はともかくすごく喜んでいる風に見えたので、まあいいとしよう。
オリビア様は何も言わないのかって?
オリビア様の頭の中では、正室は私であり、愛人は旦那様を慰める人の形をした道具にすぎないもので、子どもさえ作らなければどうでもいい存在らしい。
まあ、王族らしい考え方だよね。
実際、メイドたちには避妊魔法ががちがちに懸けられていて、シュミット様もなじみのメイドが複数いるらしい。
まあ、この世界、男尊女卑が普通にまかり通っているし、男の子づくりは家の存続にもかかわってくるので、メイドで練習するのは、貴族であれば当たり前のようだ。
そうはいっても、俺自身リーネのことが結構好きになっていた。とても献身的だし、俺が元平民であることを言っても、それが何かという感じで、かえってリーネの方からずっと一緒にいていいですか、離れたくありません、と言われた。
何か裏があるかもしれないが、俺がまっとうに働いていれば一生一緒にいてくれそうな女だった。侯爵あたりから俺が望めば相手をするようにと言われていたのだろう、それに乗っかってレイプまがいのことをした俺のことを恨むでもなく、かえって懐いてくれた相手を憎く思うことはできなかった。
王都に連れて行くに際して、家族と離れ離れになってしまうことに対して、どうすればよいか調べたところ、メイドが貴族の正式な愛人になるときに家族に支度金を送る制度があることを知った。
それでリーネの実家には支度金として10万マルと、母親と姉妹たちには貴金属のアクセサリー、父親や兄弟たちにはかなりいい酒と食べ物をプレゼントしたら、大変びっくりしていた。
リーネは家族に対してかなり自慢げだった。
これって人身売買にならないかなと心配したが、リーネ曰く「平民の娘が貴族の愛人に成れるのは結構名誉なのですよ。そのうえ、支度金の額が多いほど旦那様に愛されているということなので、頂いた10万マルなんて金額は最上級のレベルなのです。更に家族にもプレゼントなんて。他の町娘からしたら泣いて悔しがるレベルなんですよ」と言って、少し暗い笑顔で言った。
彼女もいろいろあったのだろう、触れないで置いた。
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