第10話 王女との結婚と手籠めにしたメイド
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ある時、シュミット様が聞いた。「お前、姉上のことはどう思っている?」
「とてもいい方だと思っていますが」と答えると、「そう言う意味じゃなくて、姉上が好きかどうかだよ」と真剣に尋ねてきた。
「好きか嫌いかと言われれば好きですが、そもそも身分が違うので」と俺が言うと、「そんなこと愛の前では何の障害にもならないだろう」と真顔で言ってきたので、「いやいや何を言っているのですか、私は平民ですよ。王女様とどうやったら、そういうことになるのですか?」そもそも恋愛の対象と思っていなかったし。
「姉上はお前のことを憎からず思っていると思う。お前さえよければ、姉上を妻にしてくれないか」
「う~ん、私は構いませんが、王女様の意向と、王妃様の意見、あと王家の考えがすべて問題なければなんですけど」まあ、無理だと思うけど。
「ああ、問題ないだろう。顔を損傷した時点で婚約者からも婚約破棄されているし、もらってくれるならば母上としては問題ないだろう。姉上は王家からは王族としての権利義務が剥奪されていて、勝手に生きろと言われている。お爺様も泣いて喜ぶと思うぞ」とシュミット様は言った。というか王女様、婚約者がいたのか、まあ当たり前だな、政略結婚は王族にとって普通のことだしな。
「とりあえず、確認を取ってください。後で国外追放、はては処刑というのは勘弁してほしいですから」といって、その場での話は終わらせた。
しばらくして、俺は王女様に呼び出された。
席に座るよう促されると、何故かじっと見られた。
なんか居心地の悪い思いをしていると、王女様はぽつりと「本気ですか」と尋ねてきた。
「申し訳ありません。何の件でしょうか」と尋ねると、「私と結婚すると言ったことです」と少し怒ったように言った。
「ええ、はい」俺はどもりながら言った。
「地位が欲しいのですか」
「地位ですか?」
「私と結婚すれは、少なくとも男爵には任じられます。その地位が欲しいのですか」
「くれるというならもらいますが、別に無理して男爵にならなくてもいいでけど」
「お金ですか」
「申し訳ありません。私は商売もやっておりまして、かなりお金を持っています。それこそ小国であれば伯爵位が買えるぐらいには。なので、特にお金が必要なわけでは」
「それじゃ何が目的ですか」
さて困った。シュミット様から勧められたからで、特に理由もないし、別に好きでもないが、それを言うとシュミット様の顔もつぶしてしまうし、いろいろ面倒なことになりそうだ。
ここは年の功で、それらしいことを言っておこう。
「きれいな王女様が妻になってくれるというのに、断る男がいますか?」
「きれい、私がきれい!この顔を見て同じことが言えますか!」
叫ぶように王女様は言うと、仮面を外しました。
顔の右側が陥没しており、目玉はつぶれ、陥没した部分に皮膚が引っ張られたため、髪はザンバラになっていた。まあ、かなりひどい状況だ。
「この顔を見て、私の婚約者は「化け物」と言って逃げ出しました。他の貴族からはさげすまれ、それまで仲の良かった貴族の娘たちも私には見向きもしなくなりました。こんなでも私を妻にしてくれるというのですか」怒ったように王女は言った。
まあ、初めて見た人にはすこし刺激が強いだろうが、俺はオカルト系や心霊系の話や写真が好きでよく見ていたので、そんなに驚かないで済んでいる。
それに、左半分はとても美しかった。俺は女性をほめちぎるための語彙力がないが、美しい、それ以外言いようがない容姿をしていた。
「私自身はきれいだと思いますが。もし、私の妻になってくれるのであればとてもうれしいですよ」と言った。
王女は驚いた顔をして、そのあと、涙をこぼして「カール様、あなたの妻にしてください」と言った。
「喜んで」と言った後、「王女様と結婚するにあたって、家族の皆様に了解をもらいたいのですが、いかがですか?」と言って、木の陰に隠れていた、でもバレバレだったシュミット様とジョセフィーヌ様を見ると、しまったという顔をした二人が「二人ともお幸せに」と言って、走って逃げて行ってしまった。
シュミット様はともかく王妃様、あなたもいい性格されてますね、あなたまでは走って行かなくてもいいのでは、と思わず考えてしまった。
俺たちは顔を見合わせて思わず笑ってしまった。
「そういえば、王女様」俺がそう言うと、王女様は少しや怒った顔で「オリビアと呼んでください。カール様」と言われた。
「オリビア様」
「様は要らないのですが」
「とりあえず婚姻するまでは様付で」
「仕方ないですわね」としぶしぶ承知した。
「もし差し支えなければ顔に触ってもいいですか」
「えっ!ええ、婚約するのだし構いませんわよ」と少し動揺したように言った。
未婚の女性は基本、男性に顔を触らせるようなことはしないのが貴族のたしなみなので、俺は顔に触れるのは遠慮していた。しかし婚約したのだから許してもらえるかなと思い、申し出たら了承をもらったので、早速治癒魔法をかけることにした。
俺は右ほほに左手を添えると、治癒魔法を使いはじめた。
(痛覚遮断、頭蓋骨の損傷修復開始、脳の損傷は一部に出血痕あり、治癒完了、目はつぶれている状態から元の眼球の大きさに修復、視力は神経系が損傷しており、直ぐの回復は困難、とりあえず外形と修復できる部分だけ修復)
修復が終わると、とても美しい顔が完成した。
「オリビア様、顔を触ってみてください。まだ感覚はないでしょうが、形位はわかると思います」というと、オリビア様は恐る恐る顔に触ってへこんだ箇所がなくなったことにびっくりしていた。
「もしかして、私の顔が少しでも治ったのですか。治癒師からは治療が精いっぱいで、修復までは難しいと言われていたのですが」
「もうしばらくしましたら、もう一回治癒を行います。そうすればかなり良くなるはずです」
「はい、もう私はあなたの婚約者なのですから、すべてお任せします」と言って、目をキラキラさせながら言った。
次の治療までは仮面をつけておくよう頼んだ。
確かに凹みは治ったが、治癒魔法をかけたばかりで定着しておらず、しばらくすると顔にゆがみが出るうえ、目の治療も途中で、オリビア様の心を傷つけてしまう可能性があったからだ。
数日してから、再び王女のもとに会いに行った。
「カール様、顔がほとんど元に戻りましたの!触っても感覚はないのですが、ほぼ外形では傷が分からなくなりましたわ!」と大喜びしていた。
「それは良かったです。それでは2回目の治療を行いますので、右目をつぶってください」と笑顔で言うと、王女は右目をつぶり、俺に体をゆだねてきた。
さて、治療の開始だ。ゆがみが出てしまった顔の骨を修復し、痛覚を戻した。
前回の治療で右目の再生はできたが、視力の回復はうまくできなかったので、今回神経系の接続に魔力を注いだ。
「ゆっくりと右目を開けてください」俺がそう言うと、王女はゆっくりと目を開けた。
「まぶしいです!ああああああ、見えます!見えます!」そう叫ぶと「カール様、あなたは神なのでしょうか?」王女は俺を拝むように言った。
「いや、単なる治癒魔法の使える男です」と苦笑いしながら言った。
実際はこの世界に転生した時、魔法を学びながら試してみたのだけど、俺の魔力は普通の人間が到達できるレベルをはるかに超えていることが分かった。まあ、魔力はほぼ無尽蔵と言ってもいいかもしれない。
顔の治った王女様は本当にきれいだった。こんなきれいな人がほぼ平民である俺の妻になってくれるなんてあり得ないだろう。うん、きっと俺は捨てられるな。もっと身分の高い、いい男と結婚すると言って、あっさり切り捨てられるだろう。まあ、慰謝料として何かもらえるならいいか、と達観した考えを持った。
前世では俺も悪かったが妻に捨てられたし、今生でもジェーンさんからあっさり捨てられたし、今回もどうせ同じになるだろうと考えた。なんかむなしくなった。暗い気持ちが心を支配した。
その夜、メイドの女性に夜の仕事を頼んだ。いつもお世話してくれているメイドの一人で容姿は並以下、性格も暗く、更に体も痩せていて小さく、平民出身の女性だった。
この女を思いっきり蹂躙したら俺のやるせない気持ちを紛らわせることができるのではないか、と陰湿な考えが浮かんだのだ。あとは冗談半分というところだ。
この女は父親が侯爵の所有する馬の世話係で、その縁でメイドになったらしい。
夜に来てくれるように頼んだところ、目を見開いて驚いて、「私をご所望ですか?」と尋ねてきた。
少し怖気ずいたので、「無理強いするつもりはないよ」というと、「私なんかより、もっと美しいメイドがたくさんおりますし、カール様のお相手にふさわしいと思いますが」というので、ああこの人も俺のことを嫌うのか、と思うとやる気が失せた。
「ごめん、嫌だった?じゃいいや。無理言ってごめんね」といくばくかの金貨を握らせようとした。
「嫌ではありません。すごくうれしいです。本当に私でよろしいのでしょうか」ああ、無理に言ってるよ、メイドが客の要望を断れないものな。
「私みたいなやつの相手をするなんて嫌だよね。ごめんね、無理言って」
「とんでもない!すごくうれしいです。今夜の相手、ぜひとも務めさせていただきます」と言って、「それでは用意がありますので」と言って、部屋を出て行った。
本当に来るのかな?まあ、そう言って逃げるのだろう。まあ、仕方ないし、明日の朝にでも失礼なことを言って申し訳なかったと手紙にでも書いて届けさせるか、そうすればあのメイドも罪に問われないだろうと思った。
夕食をシュミット様達と取った。
シュミット様とジョセフィーヌ様はオリビア様の顔が治ったことにびっくりしていた。
「カールが直したのか!お前すごいな。国中の治癒術師に見せたが駄目だったのを治してしまうなんて」
「本当にすごいわ!こんなにきれいになるなんて考えられない!」そう言って、泣くほど喜んでいた。
オリビア様は微笑んで、「カール様のおかげです」と言って微笑んだ。
その顔は大変美しく、恐怖を覚えるほどだった。
俺は固い笑顔で「とんでもありません」と言った。
いま、笑顔で俺に向けている顔が、まるでゴミムシを見るような顔で見てきたら。
そのかわいらしい唇から「平民風情が私を妻にできるなんて本当に思っていたの」と罵られたら。
俺の心は持つだろうか。
暗く、残酷な気持ちが沸き上がってきた。
湯あみをして、ベッドに寝転がってもの思いにふけっていたところ、ドアがノックされ「カール様、入ってよろしいでしょうか」と声がした。
何か用かな、と思って「どうぞ」と言ったら、昼に声をかけたメイドが入ってきた。
いつものメイド服ではなく、ゆったりとしたワンピースのようなものを来ていた。
「夜の御勤めに参りました」
「本当にいいのかい?今ならやめても問題ないけど、始めたら止まらないよ」
「はい、思い存分お楽しみください」そう言って俺のそばに寄ってきておもむろに服を脱ぎ始めた。
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