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第1話 前世での挫折と今生での努力

新しく連載始めました。投稿の準備に時間がかかってしまいましたが、お読みいただければ幸いです。

 俺の名は、九頭真一、ややブラックな企業に勤めていたサラリーマンだった。定年まで勤めあげて、退職金ももらえた。

 二人いた子供たちも独立したし、今後は夫婦水入らずだ。

 老後の資金だから贅沢はできないが、旅行の一つでも行くのは問題ないだろう。そう思い、旅行のパンフレットを幾つか手にしながら家に帰った。

 「ただいま」と言って、家に帰ったところ、妻が一人ダイニングにいた。

 「お帰りなさい、今までお疲れ様、お話があるの」と妻は冷たい表情で言った。

 「わかった。飯を食いながらでもいいか?」と尋ねると「なにも用意していないわ」と言った。

 「ちょっと待てよ、なにも用意していないって何だよ」と言うと、「もうあなたの家政婦をやるつもりはないわ。もううんざりなの。離婚してちょうだい」と言って一枚の書類を出してきた。

 それは離婚届で、すでに妻の名前は書きこまれていた。

 「ちょっと待てよ、これは急すぎるよ」と言うと、「あなたは私が話をしようとすると、仕事が忙しいだの、用事があるだのと言って全然聞こうとしなかったじゃない。あなたはいつもそう。私のことなんて、単なる家政婦としか思っていなかったんでしょ。あなたが定年になって、毎日あなたと一緒にいるなんて考えただけでもぞっとする。私は私の人生を歩むの。慰謝料としてあなたの退職金は全部もらうことにするから。細かいことは弁護士から話をするわ」と言って、バッグ一つをもって出て行った。

 

 しばらく呆然としていたが、とりあえず子供たちに連絡した。「お母さんが離婚だと言うだ」と俺が言うと、「ふ~ん、やっと離婚したんだ」「まあ、こうなるだろうと思っていたけどね」と二人の子供たちは当然のように言った。

 「お前たちは知っていたのか」と尋ねると、「母さんから話を聞いていたよ。私たちも賛成したよ」

 「どうして……」

 「だってあなた家庭に関心ないでしょ」「俺たちのことも母さんに丸投げだったものな」

 「私たちも縁を切るから連絡してこないでね」「あとはあんた自由に生きな。これがお望みだったのだろ」と言って、子供たちは電話を切った。

 急いで掛け直したが着信拒否されていた。

 

 どうしてこうなったんだ。家族のためと思い、必死に働いて来たのに、この仕打ちはないだろう。俺はぽろぽろと涙をこぼした。

 しばらく泣いた後、ふらふらとコンビニに行った。

 家に食べるものが何もなかったからだ。冷蔵庫の中身は空っぽだった。戸棚にもカップ麺一つなかった。

 今日のことはすでに計画済みで前々から準備をしていたのだろう。あと、妻の荷物は何一つなかった。


 コンビニに行き、弁当とカップ酒を10本買った。

 家に帰るのがつらかったので、近くの公園で弁当を食いながらカップ酒をあおった。

 この公園は家の側にあった。子供たちが小さいときは休みの日によく連れて来たな、と思い出に浸りながらただただ酒をあおった。

 まだ3月の末でかなり寒い日だった。俺はというとワイシャツにズボンという軽装だった。上着は脱いでいて、そのまま着ていなかった。精神的動揺がひどくて寒さも何も感じなかった。

 俺は酔っぱらってその場に寝てしまった。


 翌日一人の凍死体が発見された。死体の周りには酒の空きビンが散らばり、酒の呑み過ぎにより寝てしまい、凍死したものと警察は判断した。

 家族に連絡を取り、事情聴取の上、事件性はないものと考え捜査は終了した。


 俺は何かしゃべる声で気が付いた。

 「ジッケンタイヲE339646セカイニオクリコムヨウイデキタカ」

 「モンダイナイ。キオクハドウスル」

 記憶をどうにかするのか!やめてくれ。

 「ソノママトイウシジダ」

 ほっ、助かった。

 「デハテンソウヲカイシスル」

 ちょっと待て、どこに行かせるつもりだ。元の世界に戻せ!

 「テンソウカイシ」

 ギャーッ


 そして今俺はここにいる。

 気が付くと、4、5歳ぐらいの男の子になっていた。俺が目を開けると「奥様、坊ちゃまが目を開けました!」とメイドの服装をした女性が部屋を飛び出していった。

 しばらくして美しい女の人が来て、「カール、具合は大丈夫?熱はどうかしら?」と言って俺の頭に手を乗せた。

 「うん、熱は下がったみたいね。お医者様を呼んできて」その女の人はメイドに命じました。

 しばらくして、医者らしき男がやってきて、「全快しています。これは奇跡です!」と言って、びっくりしていた。

 三人の話を聞いていると、どうも俺は突然高熱を発して倒れて、一時期はかなりまずい状況だったらしい。

 というか、きっとこの体の持ち主は死んで、俺が体を乗っ取った形なのではないか。

 すこし罪悪感にとらわれたが、いまさらどうしようもないことだと気持ちを立て直した。

 

 さて、問題はこれからだ。俺はここの状況が何も知らない。

 ここは何も知らないふりをして「ごめんなさい、僕は誰で、あなたたちは誰なんですか」と尋ねた。

 女性とメイドはびっくりした顔になったが、医者だけは納得していた。

 「当然ありうることです。あれだけの高熱が出て、生死をさまよったのです。記憶喪失が起きても不思議ではありません」

 女性は気絶してしまった。


 医者が俺に事情を説明してくれた。

 今居るハイフィールド王国は、北大陸と呼ばれている大きな大陸の内陸にある小さな国だそうだ。

 俺はその国の第4皇子と言われ、びっくりした。母親が側室で、実家が男爵と貴族の身分も高くないため、王宮から離れたこの屋敷に母と俺と何人かの使用人と暮らしているそうだ。

 そんな身分なので、俺が王位を継ぐことはなく、すでに正室の長男である第一皇子が王位を継ぐことがほぼ決まっているらしい。


 ちなみに長男は14歳、次男は側室、ただし母親は伯爵出身で11歳、三男は正室の子で第一皇子の同母兄弟で8歳、俺は5歳という年齢構成だ。

 長男は魔力測定の儀式も終えて、国の貴族学校に通っているとのことだ。

 魔力測定の儀式とは12歳になると行われるもので、そのものの魔力の量や力を測るものらしい。この国ではこれが成人の儀式になるらしく、婚姻などが公的に認められることになる。まあ、今はほぼ意味がなく、10歳ぐらいで若くして結婚する子も多いらしいからな。

 この世界、誰もが魔力を持っていて何かの魔法が使えることになっていた。また、人によってはその個人独自の魔法が使えることがあり、魔力量によっては、平民でも準貴族の地位をあたえられることがあるとのことだ。

 逆に貴族出身でも、魔力がないと平民に落とされることがあるらしい。

 ある意味魔力至上主義の世界だ。


 そんな説明を聞いて「今日は休みなさい」と先生に言われて、寝ることになった。

 気絶したままの母親?とメイドも退出していった。


 俺は今後の計画を考えることにした。

 王家の生まれとはいえ、小国の4男で、母も男爵家の出身ではまず貴族として残るのはかなり難しいだろう。うまく養子の口でもあればいいのだが、聞いたところ母や母の実家にも何も力がなく、養子として受け入れるうまみはないようだ。

 母は、王宮に侍女として使えていたが、王の気まぐれで手を付けられたらしく、それで俺を生んだらしい。まあ、母は俺が言うのもなんだが、かなりの美人だからな。

 まあ、側室というより愛人と言った方がしっくりくるような身分を与えられて、王宮の外に小さな屋敷をもらい、王から生活費を出してもらって生活しているらしい。


 俺が生きていくためには、技術、この世界では魔法の力を身に着ける必要がある。

 兎に角、魔法の練習をして、あと貴族のたしなみである剣を学び、それなりの力を身に着ければ、うまくすると好条件で雇ってくれる国なり貴族ところがあるかもしれない。


 前世は、私立文系の大学を出て、企業に就職したが、かなりブラックで絶えず仕事に追われていた。超勤手当は定額で打ち切られ、あとはサービス残業だ。

 おかげで、仕事ばかりの人生となって、管理職に昇進しても収入は少なかった。それでもと家族のためと思い必死で働いた結果が、妻には捨てられ、子供たちには絶縁されるという悲惨な運命だった。

 今生ではそんなのは嫌だ。そして家族なんて信用できない。特に女は信用できない。結婚は妻の方が積極的だった。俺を愛していると言ったのは妻からだった。人は変わるものだと思い知ったのだ。それならば自分の幸せを追求すると心に決めた。


お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら星かブックマークをいただければ大変ありがたいです。

星一ついただければ大変感謝です。ブックマークをいただけたら大大感謝です。ぜひとも評価お願いいたします。


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