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ヒロイン  作者: 十矢


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6/7

しんじてこたえる

 お昼過ぎるまで、いろいろ考えているうちに、結局少し外にでて、あまり気づかれないようにそーっと買いものをして、食べて帰ってくればいいかと思うようになった。


 端末をみてしまうと、また例のニュースになってしまうため、端末をそんなに手に取りたくない、というのもある。

 それまでは手帳に何度か書いてみたり、所持品を拡げて、確認したりしていた。


 変わらずしまわれたレアな鉱石は、まだしまって置こう。


「これで、いいかしら」


 大きい鏡が部屋になかったため、服装をみたりバックに入っていた小さい鏡で髪を確認してみる。


 元よりヒロスターニャに乗るときには、大きい荷物は、あまり抱えないようにしているため、同じ服に小物と少しの寝泊まりセットしかない。


「髪を少し変えたし、眼鏡もしたし……」


 あまり目立っていないはずだ。

 そもそも、わたしは地味なはずで、目立つような特徴はないため、思えば警戒しすぎなのかもしれない。


「なんか、さっきまでは緊張してたのに、そんなに緊張する必要なかった、よね」


 鏡をしまうと一応高価なものは、部屋のあまり目立たない場所に隠して、あとはバックと通常の荷物だけになる。


「うん、いこう」


 扉の前で置いてある靴に足を入れて、よくわからない気合いをしてから、扉を開けた。


 扉を閉めて預かる鍵をかけたあと、二度ほど確認してから、歩きだす。


 空はとても晴れていて、思えばあの毒素のある霧の淀んだなかからここにきて、あとは、洗浄をすませたら入ってしまったから、空がこんなにすっきりしているのを観るのが、新鮮な気持ちになった。


 ときどきすれ違うヒトたちも、あいさつはするも特に騒ぎになることもインタビューされることもなく進み、二階建てのショッピングモールにきた。

 目当ての食事スペースにきて、簡単なお昼にしようと歩きまわると、周りの話しが聴こえてきてしまう。


 それは、昨晩の話しと今朝の話しだ。


 朝は部屋にこもっていたため、昨日までの話しの内容しか詳しくわからないけれと、心持ち静かにしていようと注文だけして隅に座る。

 それでも、真ん中に座ってガヤガヤしているヒトたちの会話が、大きい声のためわかってしまう。


「兵士たちがここまで来たのは、採掘だけじゃないだろ」


「この街は比較的いいけれど、向こうに近いほうは、反対に治安が悪いらしい」


「城の連中、贅沢だけしてて、城下はさびれてるらしいよ」


 そうなのか、と聞いていると、朝の話しに内容が向かっていたようだ。


「そうだ。あれからも竜たちが何組か降りてきてたぞ」

「兵士たちは、載せてなかった」

「情報交換だろ」

「でかい街だと、暴れたやつもいたとか聞いた」

「空はいいけど竜たちがいると……」


 悪口というほどはないけれど、なにかあまりいい印象ではないらしい。

 わたしが余分に注目されてしまっただけで、だれもわたしがどういうヒトとか、話しはしていなさそうだ。

 これなら歩き回るのもいいかもしれない。

 そう想った。

 竜たちの集まりも、場所をたずねてからいってみようか。

 少し食事をしていると、会話が不穏だ。

 兵士たちではないけれど、どことなく暗い顔をしている。

 なにかあったのだろうか。

 いや、昨日既にあったのだけどね。


「……のこと聴いたか」

「また争ってるんだろ」

「それより、最近になって空が……で」

「風の間違いじゃないか」

「鳴くんだって」

「……の権力者たちが勝手だからな」


 あまり、ヒートアップしないといいけれど。

 ゆっくりとは、していたくないため、食器を片付けにいきゴミを収めたところで、隣からドンとぶつけられる。


「きゃっ!」

「あ、ごめんなさい」

「あ……」

「あっ!」


 昨日グループで連れたってきた青年と、もう一人後ろを飛んで手助けをしてくれた女性がいた。


「グループのリーダー」

「え、リーダー?」

「よかった。まだいたね」

「そうですよ、探してました」


 女性と青年がそう話すも、よく伝わってこない。


「昨日は、大変でしたね。でも、リーダーってどういうことですか?」


 わたしが聴いてみるも、二人はなんだか不思議そうに話す。


「貴女がリーダーでしょ」

「そうですよね」

「そうそう」


 まだ、よくわからない。

 大規模な集団のなかの先頭グループのリーダーは、別にインタビューに応じていたし、ヒロスターニャもリーダーになったことなど伝えてこなかった。


「間違いじゃないかしら? グループには参加していたけど、わたしは指揮もしていないし、真ん中グループはただ参加していただけだし」

「う〜ん、わたしの竜が言うには、貴女の竜がグループのリーダーで飛ぶことに決めたって」

「そうだね。こちらもそう聴いたよ」


 だんだんと混乱してくる。

 嘘をつかれたわけではないだろうから、なにかが違っているらしい。

 とりあえずこのヒトが多い場所で、あまりリーダーと何度も呼ばれたくないため、移動することにした。


 でも、あまりこの街に詳しくない。


「どこか、静かなところあるかしら」

「う〜ん、周った限りだとどちらがいいかな」

「あの少し高くなった緑地公園はどう?」

「あぁ! ここからすぐだね」


 二人が案内してくれるためついていくと、ここの建物をでて少し歩くだけで、また次の建物に入る。

 そのまま階段で上がっていくため、ここのビルの上の階らしい。


「二人は何度かきたの?」

「いいえ。今回がはじめて」

「詳しいのね」

「さっき様子を見に、高い場所探してたからね」


 どういう意味かは、よくわからないけれど、上にでるとビルの途中が中継する高架になっていて、その通路部分が緑地化されて簡単に木が植えられている。

 ビルとビルを高架でつないでいるらしい。


「こんな場所あったのね」

「いいでしょ」

「でもヒトいないわね」

「時間もだけど、たぶん移動以外であまり寄らない場所なのかも」

「そうなのね」


 たしかにここなら、通り過ぎるヒトはいても、あとは散歩してゆっくりしているだけのヒトばかりで離れているし、話しはできそうだ。

 ちょうど真ん中辺りでベンチがあるため、そこに座る。


「中央と比べると、背は低いビルだけど、眺めいいわね」

「緑地化しているのは、環境にいい街にするためかしら」

「それだけじゃないらしい」

「それでさっきの続きなんだけど、わたしはリーダーじゃないし、もしかしたらニュースのことを言ってるの?」

「すごいニュースになっていたね」

「たしかに昨日の規模は桁違いでしたね」


 やはり、ニュースは広まっているようだ。


「あれを仕掛けたのは、だれなんだろう」

「やっぱりそこですよね」

「でも、なぜきみが知らないんだろう? なにも聴いてないのかい」

「そう! だから、グループになってたのは、あの街にいったからだし」


 すると、青年のほうが少し悩んだあと、もう一人の女性が持っているノートをだしてくる。

 受け取りながら、たずねる。


「みていいの?」

「いいわ。真ん中辺りがいま書いてるところ」


 めくり昨日の日付辺りをみつけてみる。

 たしかに、昨日の出来事だ。

 そういえば、昨日はわたしのノートに書きこみを忘れていた。

 落ち着いてから書かなくてはいけない。


「ねぇ、これはなに」


 青年にも内容を見せながら、ノートの部分を読むもよくわからない。


「鉱石の話しには、なにか続きがありそうだってなってるけど」

「それです。わたしの竜が、それを聴いてもう少し詳しく聴こうとしていたら、リーダーのグループが上空で集まる。すぐにしようって」

「でも、それなら先頭よ」

「いいえ。目的地まで案内したのは先頭のだけど、そのヒトのこと聴いてまわったら、最後尾のと真ん中のグループがリーダーで、先頭のは今回紹介されただけって」

「それじゃ、こちらのグループと後ろが上空で集まるようにしていたんだね」

「まって! 最後尾のは、かなり後れていたのよ。トラブルでもあったって」

「じゃ、やっぱりわたしたちのグループなんですよ」

「なぜ、だれも知らないんだろう」

「わからないわ」


 わたしは、ノートを返すとバックから手帳をだして、昨日の出来事を振り返る。


 緑地のなかの木に鳥が止まり休んでいる。

 空は晴れているけれど、あまり竜は飛びまわっていないようだ。


「なぜか竜があまり飛んでないわ」

「うん。昨日、いやその前から、どうにも落ち着かないな」


 少し前のことを思い出すも、あまり関係はないだろうか。

 いくつか気にかかることを手帳に書きこんだあと、聴いてみることにする。


「その……あなたたちは、契約した竜と積極的に会話とかしないの?」


 二人をみてみると、なぜか、驚いている感じがする。


「会話って、どういう感じのですか」

「どういう……って。小さい頃の話しとか、以前の失敗とか、あとは上手くいかなかったときに、どうしたらいいとか」


 また、驚いている感じがする。

 なんだろう。


「貴女竜にそういうお話ししてるのですか?」

「え、ええ」


 今度は青年が聴いてくる。


「そういうの話して、怒られないの?」

「怒るって? 大抵は笑われるけど」

「へ、へぇ〜そうなのか。なんだか珍しいな」

「そうです」


 そうなのだろうか。

 背中に乗せてもらう間、天候がひどくなければ、お話しくらいしそうなんだけどな。

 返って耳も遠くの音をよく拾うから、小声で言っていたことも聴こえていたりするのだけど。


「なんか、変なこと聴いちゃいましたね」

「いや、いいと思うけど。ねぇ」

「は、はい! 楽しそう」


 見るからに、なんか気をつかっている気がする。

 こういうところは、ヒロスターニャ相手のほうが、なにも遠慮なく聴ける。


 前に聴いてみたときにも、ヒトのお話しは、大抵がくだらないし不可思議だけど、ナニもないよりずっといいと言っていた。


「それで、なぜさっきから高い場所に来たり、リーダーを探していたの? 昨晩からのは、兵士たちは症状がよくないヒトもいるけど、死んでしまったヒトはいないって話しよ」


 ちらっと女性が青年をみる辺り、この青年のほうが気になって話しを訊ねて回っているらしい。

 立ち上がり、高架のフェンスに手をかけて、空を観ている。


「ソラが……」

「えっ」

「信じてもらえるか、わからない。さっき話したときも、あまり信じてもらえた感じじゃないな」

「いいえ! そんなこと」

「ま、いいさ」


 なんのことだろう。

 とりあえず、青年がなにか知っているみたいだ。


「話してみて」

「信じてもらえるか、わからない」

「じゃ、頼みにして」

「……意味がわからない」

「わたしは "依頼" を受ける者。頼んできた者は、たとえそこに異常なことが待っていても信頼で応えることにしているの」

「ふぅそうだな」


 それから、少しそよ風があるなか、青年は話しを迷っている感じだ。

 女性も黙っている辺り、ちゃんと信じているのではなくて、気にかけているだけ、なのかもしれない。

 手帳をバックにしまいこみ、首もとに手を持っていく。

 ネックレスの宝石を触る。

 宝石はわたしに応えてくれる。

 だから、わたしは信じて待つことにする。

 しばらくは青年は、ウロウロしたり空を観たり、女性を見たりして悩んでいた。


 わたしは、その間ずっと彼の眼をみていた。


 上空で会ったときには、軽薄そうな遊び野郎なのだと感じたのに、いま真剣に悩む姿は、とても真面目そうでいて、印象が変わって観える。

 こういうときヒトの直感は当てにならないな、と想う。

 ヒロスターニャに直感力の眼を鍛えるには、どうしたらいいか、今度真剣に訊いてみよう。

 まだ日は明るいし、さっき食事をしたからか身体は暖かい。

 いま預かる依頼は、急いでも解決しそうにないものだから、焦らないで待ってみることにする。

 ジッと観すぎたのかもしれない。

 彼が、フェンスに手をかけて背中を向けてしまう。


「…………わかった。話そう」

「いいわ」

「その代わり条件をだそう」

「条件、いいわよ」

「もし、この先の未来で "生きる選択" に迷うことがあったら、この僕を見捨てるように。いいかい!」

「それって、貴方を助けないってこと? 殺されたりするの?」

「とにかくも選択肢に、迷うがでてきたら見捨てて逃げること。どんなに怪我をしていても、治療よりも優先してほしい」

「……いやよ」

「はははっヤメてくれ。恋仲でもないだろ」

「……いやよ」

「じゃ、依頼にする。内容は見捨ててほしい」


 わたしは、ジッと彼の眼を見る。

 どんなにばかな依頼でも、わたしは信じている。


「それじゃ、話していいわよ」

「わかった。しっかり見捨ててくれ!」

「依頼は、ひとまずあなたを助けることにするわね!」

「まてまて! 話し聴いてないのか?」

「意外と根性ないのね。女の子があなたを助けるって言ってるのよ? プロポーズでもしたら」

「ま、まて! なんか違うぞ」

「頼まれたのだから、助けるわ。話していいわよ」

「あ、ああ! わかった。話しするさ。でも依頼は違うからな」

「しっかりと」

「……空が割けるのを観たらしいんだ。爪痕のようだと。伝説には割ける時、境めが呼びにくる。異なる意志を逢わせるのだと。予兆ははじまり」

「そう。空が割けるのね。わかったわ」

「お姫さまが言われる話しだと、異なる存在の英雄がそこには必要になるとか」

「そう。あなたは王子様なのかしら。それとも勇者さま?」

「そんなわけないだろ。その調査をしているのさ。それが仕事で。ていうか軽いな」

「ま、いろいろあるもの」

「どんな波乱をみて……」

「……そういえば、さっきの街のヒトが空が鳴くとか言っていたわ」

「鳴くのか? 関係あるのかな」

「信じていいのでしょうか」

「あなたも調査なの?」

「わたしは、グループで知り合ったばかりなんです。都合上ね」

「そっかぁ。ま、信じましょう」

「こんなばかみたいに風の噂程度で信じていいのか」

「あなたもね」

「……ばかみたいだけど、お姫さまがおっしゃるからな」

「やっぱり勇者さま? お姫さまかぁ。見る眼はきっとあるのね」

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