Mission09:紅い雷鳴3
「…周辺にインベーダーの反応無し。市街地への損害もありません。皆さんお疲れ様でした」
後方に待機するトレーラーの中でオペレーターのアルマは自分が口にした言葉が信じ切れずに軽く頬をつねってみる。
「…すげぇ、あれだけの数を相手に守り切ったぞ!」
僅かな頬の痛みと、隣の運転席に座る整備員のタクヤの言葉でアルマはこれが夢ではないと確信した。
「やりました!勝ちましたよ私達!あの大群を追い払いましたよ!」
テンションがブチ上がったアルマはタクヤの肩を力いっぱい揺さぶる。
「あぁ、俺達は殆ど何もしてないけどな…ってちょっと強すぎ強すぎ!」
ルークの遺体を回収してから暫くして、リンはある人物を探していた。日が暮れて空に星が出てきた頃、街の住民達を交えて勝利を祝っていたのだが、その人物の姿だけが見当たらなかった。フィオナ隊長曰く、あいつならどうせ外にいるだろうとのことだったので、リンは一人街の外に出た。するとさほど遠くない所から煙が上がっているのが見えた。気になったのでそこに向かってみる。そこにはリンの探していた人物が居た。ヘルメットを外しているが、未だ真紅のマナフレームを身に着けた男性が一人巨大な肉の塊を焚き火で炙っていた。
「…な、何をやってるんです?」
「…あ?見てわかんねーか?つーか誰だお前、向こうはまだ宴会やってんだろ?抜けてきていいのか?」
「第04討伐部隊所属リン・テイラーです。リアム隊長こそ参加しなくていいんですか?」
「俺には宴会よりも大事なことがあるからな。まぁ座れや」
「え、はい。失礼します」
リンは言われるままにリアム隊長の隣の地面に腰を下ろした。その間もリアム隊長は巨大な肉の塊を炙っている。程なくしてその肉塊を火から下ろすと切り分け始める。
「モンタージュタイプの肉だ。食うか?」
「えっ!?い、いえ、自分は遠慮します。食欲が無いので…」
「そうか」
そう言うとリアム隊長はかつてバケモノだった肉に塩と胡椒をかけて躊躇なく齧り付いた。正直ドン引きである。
(うえっ…く、食ってる…!)
悪食にも程があると思った。
「な、何故インベーダーの肉を?食べるものなら街に行けば…」
「何故って、俺が勝者だからだ。弱肉強食…こいつは世の理であり、敗者を喰らうのは勝者に与えられた特権だぜ。インベーダーの肉を食ってる時に俺は勝った、生き残ったんだって一番感じるんだよ。フィオナや他の連中には理解出来んらしいがな」
リアム隊長は切り分けたインベーダーの肉をどんどん平らげていく。そして隣のリンを横目で見て口を開いた。
「…ルーク・パレルモの事、気にしてんのか?」
「すみません、こういう事は慣れなくて…」
「どうせ自分があの時もっと早く敵に気付けていればとか思ってんだろ?」
「…」
「ハンッ、バカが。そんなもん無理な話だ。お前の責任じゃねぇし、誰も責めたりしない。あの状況でモンタージュタイプに向かっていこうとしてたな。むしろお前は新入りにしちゃあ良くやったと思うぜ。うちの新入りにも見習わせたいくらいだ」
「でもリアム隊長が居なければ2体目のモンタージュタイプの出現にもっと混乱していたはずです。自分一人では足を止めることすらできなかったかもしれません。街だってきっと無事では済まなかった」
「ハハハ!フィオナの子分にしちゃあわかってんじゃねーか!そうとも、フィオナじゃなくこの俺が居たからこその今回の勝利だ!…それはそれとして、お前は自分を卑下し過ぎだな。褒め言葉は素直に受け取っておけ」
「はい…」
リアム隊長の通信機器が着信を知らせる。リアム隊長は通話相手と二、三言言葉を交わすと通話を切って焚き火や肉を焼く道具などを片付け始める。
「直にうちの迎えが来る。お前も街に戻ったらどうだ?」
「そうします。失礼しました」
「あぁそうだ。今回は貸しにしとくからうちでなにかあった時は無条件で手を貸せってフィオナに伝えとけ」
リンが去ったのとすれ違うように迎えに来た第06部隊のマナビークルにリアム隊長は乗り込む。
「リアム隊長、お、お疲れ様、です!」
「おう。イオ、お前リン・テイラーって知ってるか?確か訓練校の同期だったと思うが」
「その名前なら知ってます。実技の成績だけならトップレベルだって、う、噂になってました」
「そいつの人となりと言うか、どんな奴だとかは?」
「い、いえ、そこまでは…。私とは別のクラスでしたから…」
「そうか…」
(リン・テイラーか…。あいつ、自分の仲間が目の前で殺されたって言うのに目の前の敵に対してさほど怒りもせず、すぐに恐怖を克服して立ち向かっていこうとした。新入りには、いや、普通の人間にはなかなか出来ることじゃねぇ。兵士としては良く出来てるが、人として大事なものが欠けてるな)
「…あいつに何があったんだ?」
「な、なにか言いました?」
「いや、何でもねぇ。肉食って帰るぞ!」




