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お尻をかけて俺は

 卒業後の春休み。


 俺はずっと昨日のことばかり考えていた。きっと、人生のハッピーエンドは夢中なって必死に生きてきた先にあるんじゃないかって思う。


 でも俺は今までやりたいことなんてなかったし、見つかったと思っても何故かすぐ飽きてしまう。俺は根っからの飽き性だ、そう簡単に夢中になれることなんか見つかるわけが無い。


 強いて言うなら今みたいに、布団にくるまって冬の寒さに必死に対抗することくらいだろうか。北海道は3月になってもまだ寒さは消えてくれないから嫌いだ。特に今日はマジで寒い……


「夢……夢……夢……」


 ただ漠然とやってみるのもいいのかもしれない、でも違ったら?合わなかったら?その分また周りと差をつけられるかもしれない。もう二度とその差は埋まらないのかもしれない。分かっているよ。こんなこと考えたってしょうがないことくらい。でもこのままずっと布団にくるまっている人生は、絶対に夢なんか見つけられない。


 皆は不安になったりしないのかな。夢が消えることが怖くないのかな。もし飽きたら?俺みたいに飽き性になったらどう思うのだろう。将来のことだったり、今に不安は抱かないのかな。お前は考えすぎだって言われるだろうか。そんなの気にするなって言われるだろうか。


 俺ってまだ考え方が若すぎるのかな……


 そんなことをグダグダ考えながら横の壁を眺めていると家のインターホンが鳴った。


「おーい!翔太!いるかー!」


 この声は!


 俺は焦って布団から飛び出し、玄関に向かいながら寝癖を整える。そして扉を開けた。


「どうした、一輝」


 榎本一輝、俺の中学の頃の友達だ。3年のクラス替えで、周りに興味がなさそうな感じで席に座ってる俺に対して唯一声をかけてくれたやつだ。こんな俺でも一応親友だと思ってるし、一輝は誰に対しても分け隔てなく仲良くできる、いわゆる陽キャというやつだ。向こうは俺の事どう思っているかは分からないが。


「急にすまんな、翔太」


「大丈夫だけど、一体なんなんだ?」


 そそっ…


 ん、一輝後ろに誰かいるな、


「あー、実はお前にひとつ頼みたいことがあってだな……」


 その瞬間、


「がおぉぉお!!!」


「………。」


「反応うっす!!」


「…ああ、悪い、後ろいるの気づいてた」


「それにしても薄すぎるよ!普通あんな大きな声で飛び出してきたら少しくらいビクッてするよ!」


「そ、そうか?悪かった」


 めっちゃビビったぁぁ……!なんだ、今の子ってこんな元気なの!?こいつ怖いもの知らずなの!?普通は見ず知らずの人にこんなことしないよな!?こんなん連れてきて一輝はいったいなにを……あ……


「ゴルァァァァア!!」


 ゴッ……!


「いっっったぁぁぁぁあい!!」


「すまん!翔太!俺のバカ妹が勝手に、」


 いや、今のはさすがに痛かっただろう……涙目で必死に頭抱えてるぞ、コイツ…


「ああ、大丈夫だ、それにしてもなんなんだ一体」


「あーっとな、実は俺の両親が春休み中海外旅行に出かけてるんだよ、俺は今から高校の制服とか教科書とか買わなきゃだし、コイツを一人家に置いていくと家がカオスになるから嫌なんだよ」


「お、おう」


 前に家で何があったんだ。


 それにしても話が見えてこない、制服と教科書なら俺の高校は昨日が購入日で俺も行ったが、一輝の高校は今日が購入日なのか。しかしだから一体なんだ?


 まさか……


「だから、今日はこの家で遊ばせてほしいの!」


「え、果てしなく嫌だ」


「なんでぇぇえー!」


 いちいちうるさいなこいつ。


「ゴルァァァァ!三玖ぅぅ!!」


 一輝も大概か。


「いっっったぁぁぁぁあい!!」


 さっきやったぞこのパターン。


「すまん!翔太!俺が帰って来るまでの間だけでいいんだ!」


「いやいや、いくら一輝の頼みだからってさすがにコレを預かるのは……」


 俺が一目見ただけでわかる、たぶんこの三玖とかいうのは速攻で人に迷惑をかける脳内お花畑少女だ。気が重すぎる。


「そこを何とか!!」


 いやぁぁぁぁあマジでどうしよう。


「翔太?お友達と何かあったの?」


 ゲッ、


「ああ、お母様ですか!それがウチの妹を家で留守番させるのが心配で……。両親は海外旅行中で、私は今から高校の制服と教科書を買いに行くのでの間妹をこの家で遊ばせてくれないでしょうか?」


「あら!いいじゃない!」


「母さん!?」


 ほら見ろ!母さんなら絶対そう言うと思った!はぁ……この人は小さい子供を見るとカワイイカワイイうるさいからな、


「あ、ありがとうございます!!妹が何かご迷惑をかけるかもしれませんがよろしくお願いします」


「分かったわ、でも一応あなたの親に電話させてくれないかしら?ご挨拶がしたいわ」


「あ、はい!」


 まずい、まずいことになったぞ、俺は小さい子供と遊んだことなんかないし、見るからに俺の苦手なタイプだ。いや、苦手っていうか普通に嫌いだったわ、子供。


 はぁ、でも気分転換にはいいか、いろいろ考えて頭おかしくなりそうだったし。一度考えをリセットしなくちゃな。


「はぁ……母さんがいいなら俺もいいよ、ちょうど気分転換になにかしようと思ってたところだしな」


「翔太、本当にありがとう!!この礼はいつか必ずする!」


「いやいや、いいよこのくらい、お前が帰ってくる間だけならお易い御用だ!」


「やっぱりお前は1番の親友だよ!」


「え、……」


 今、親友って……


「一輝君、携帯ありがとう、ご両親も快く承諾してくれたわ」


「よかったです!それでは17時ほどに戻りますので妹をどうぞよろしくお願いします!」


 17時!?ちょっと待て、今12時だぞ!買って帰ってくるのにそんなにかかるか!?


「お、おい!一輝!」


 バタリ、


 行ってしまった。本当に。


 マジで、どうしよう。


「たぁぁぁぁぁあああ!!」


 その瞬間、強烈に臀部に衝撃が走り、しかもそれはクリーンヒットしてし、俺の尻は死んだ。


「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」




 ___榎本三玖、これが彼女と初めて会った日のこと、俺の人生を変えてくれた大切な人だ

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