52.予期せぬ敵
「マジカルチェンジ!」
私はカウント3辺りで、スキル【魔法少女】を使用し、魔法少女の姿に変身した。
一応この魔法少女形態での参加ってことだし、変身解除しちゃうと失格になっちゃうからね。
『じゃ、行こうか!』
「ああ!」
意思疎通は問題ない!
魔法【テレパシー】があるからね!
昔と違って、便利になったものだよ。
まっ! 昔って言っても、そこまで昔じゃないけどね。
「私は海岸のエリアを探しに行くぜ!」
ココロちゃんが指を差した先には、確かに海岸っぽいものが広がっていた。
「じゃあ、私はあっちの洞窟を探してくるよ!」
「分かった! なにかあったらスマホで連絡してくれ!」
スマホだけはなぜかダンジョン内に持ち込める為、それを使ってなにかあったら連絡するということになった。
ちなみにダンジョン内で普段スマホは、通称ストレージって呼ばれている、道具や装備を収納できる異空間内にある。
◇
あれから30分くらいが経過した。
今、私は洞窟内にいる。
私が手に入れたテイマークリスタルはなんと……3個!
順調だと思っていたけど、そうじゃなかった。
だって、既にもう本選に7人進んでるんだよ!?
先着16人までなのに、まずいじゃん!
最初は洞窟ごとぶっ壊してから、クリスタルを探そうとしていた。
ただそうなると、他のプレイヤーが私の攻撃の巻き添えをくらい、失格になる可能性があるからやめたのだ。
『賭けバトルしませんか?』
「いや、いいっす」
賭けバトルで増やそうともしているけど、こんな感じで断られ続けている。
これはまずいね。
私はココロちゃんに連絡をした。
もしかすると、5個集めてくれているかもしれないからね!
もし5個集めていたら合わせて8個で、本選へ進むことができる!
けど、今のココロちゃんは電話に出られない状況なのか、連絡はつかなかった。
って、ストレージに入れていたら、連絡来ても気が付かないよね。
自動で撮影してくれるアイテムもあることだし、ストレージ内でも連絡取れるようなアイテムがあればいいけど、今はないから仕方がない。
飛ばしていけばそんなに時間がかからないから、飛んで行こう!
私は翼を広げ、海岸まで飛んで行く。
『ココロちゃん! 3個見つかったよ! そっちはどう……って、ええ!?』
ココロちゃんがうずくまっている!?
そして、なにあのモンスター!?
見た感じ、手足が付いている4mくらいの電気ウナギみたいなモンスターだ!
手は小さいけど、足は筋肉ムキムキでかなりの脚力がありそう!
「ノチチチチチチ!!」
電気ウナギは叫び声をあげながら、動けないココロちゃんに襲い掛かる。
『危ないっ!』
私はココロちゃんを救出し、距離を取った。
『大丈夫!?』
「サンキュー! 助かったぜ! 悪い……あいつの攻撃を避けられず、体が痺れて動けなくなっちまった……」
どうやら、海岸でクリスタルを探していたら、海の中から電気ウナギが出てきて奇襲を仕掛けてきたらしい。
『ココロちゃんはここで休んでて! 電気ウナギは私が倒すから!』
「そうだな……あんなボスみたいなモンスターが現れるなんて不自然だ。もしかすると大量のクリスタルが手に入るかもしれないしな」
あっ、そこまでは考えてなかった。
「頼りにならなくて悪い。頼んでもいいか?」
『うん! 任せてよ!』
私は電気ウナギの前に立つ!
すると電気ウナギは威嚇なのか、再び叫び声をあげ、口から青白い電気の玉を発射してきた。
「ノチーッ!!」
電気の玉はそこまで早くなかった。
「ノチチチチチチー!!」
しまった! 狙いは動けないココロちゃんだ!
「くそっ! あくまで狙いは私だってのかよ!」
卑怯すぎる!!
いや、戦略的にはそうでもないかもしれない!
けど、このままじゃ!!
「ぐああああああああああああああ!!」
「!?」
『!?』
誰!?
突如現れた、眼鏡をかけた頭の良さそうな女の人が、ココロちゃんの盾に!
「おい! しっかりしろ!」
「あ……青メッシュちゃんですよね……? 私……かっこよくてかわいい……青メッシュちゃんのファンで……役に立てて良かった……! これからも配信や動画……楽しみにしてますからね! 勿論お友達も……錬金術師のミラクルちゃんに、クランマスターのブラックノヴァさん……後……後……後……後……もう1人の……子……も……全員応援し……て……い……ま……す……か……ら……」
ファンの人は粒子となり、消滅してしまった……。
そこまで私達のことを想ってくれている人がいるだなんて……!
確かに普段から応援コメントは貰っているけれど、こうして直接言われると、本気で応援している人がいるってことを、再確認できた。
私達を日々応援してくれている人の為にも……この勝負絶対に勝つ!!
私は翼を大きく広げ、電気ウナギに急接近した。
そして……!
魔法発動!
出力かなり強め!! 0距離!! 【マジカル☆ファイア】!!
いっけええええええええええええええええええええ!!
「ノチッ!? ノチチチチチチチチ!?」
私の口から放たれた黒い火球は、電気ウナギごと空まで飛んで行き、大爆発を起こし、散った。




