44.「やれ」
次の日の放課後、私達3人はソラちゃんの家に集まった。
今はソラちゃんの部屋にいる。
「本日もご来店ありがとうございます!」
嬉しそうに言いながら、ソラちゃんがお菓子を持ってきた。
今回もソラちゃんが場所を提供してくれた。
それに加えてお菓子まで……。
ありがたいね!
「お母さんが買ってきたものですけど、どうぞ!」
私とココロちゃんは、出されたお菓子 (スナック菓子)を食べる。
その間に、ソラちゃんは小型のプロジェクターセットを棚から取り出した。
凄い!
「うおっ! 学校とかである奴じゃん! ソラの家なんでもあるな!」
「えへへ、まぁ、お父さんのお古ですし小型ですがね」
カーテンを閉めて、3人で動画の視聴を開始する。
視聴する動画は、テイマーズグランプリの運営さんが投稿した動画だ。
「去年の決勝戦の動画を見ましょう! 中々に暑いバトルですよ!」
☆☆☆
「いよいよ今大会も決勝戦だ! まず第1コーナー! 今まで開催されたテイマーズグランプリ全てで優勝をおさめている、この人だああああああああ!」
第1コーナーから登場したのは、薄緑色の髪が特徴的な女の子である。
見た目年齢は高校生くらいであるが、実年齢は非公開だ。
自信に満ち溢れた目つきをしており、隣には彼女の相棒モンスターがいる。
このモンスターこそ、彼女のテイムモンスター、エラードラゴンである。
「【デス抹茶】選手だああああああああああああああああ!!」
野球場を更に大きくしたようなスタジアムの観客席から、拍手が響いた。
デス抹茶……それが彼女のハンドルネームだ。
流石に本名ではない。
「第2コーナーは今回が初参戦にも関わらず優勝までコマを進めた、【ベルトコンベア】選手だああああああああああああああああ!!」
ニット帽を被り、セーターを着用、更に毛糸の手袋を身に着けた少年が登場した。
とは言っても、顔には目と鼻と口しか露出しない毛糸のマスクがあるので、本当に少年かどうかは不明だ。
ただ、声からして声変わりをした直後のような声なので、男子中学生といったところだろうか。
そして、彼の隣には大きなカラスのモンスターが並んでいた。
「絶対優勝しような! カラジロウ!」
カラジロウはニックネームであり、種族名は【ビッグカラス】という。
レアモンスターでもなければ、特別に強力なモンスターという訳ではない。
つまり、この少年の育て方が良いということだ。
勿論、カラジロウ自身もかなり努力を重ねたのだろう。
「それでは決勝戦……スタートだあああああああああああああ!!」
バンダナを身に着けた審判の男がそう叫んだ。
それが合図となり、試合がスタートされる。
「やれ」
デス抹茶がそう言うと、エラードラゴンが前進する。
エラードラゴンは、2m程の深緑を基調としたドラゴンである。
目は水色一色であり、一見すると凶悪そうな見た目かもしれない。
そしてルカのように、二足歩行に翼をたずさえたドラゴンでもある。
「よしっ! カラジロウ! ウイングスマッシュだ!」
カラジロウはカラスのモンスターだが、大きさはカラスにしては、かなりのものだ。
エラードラゴンと同じくらいの大きさをしており、その翼から放たれる技も強力だろう。
翼が光り、それをエラードラゴンにぶち込もうとするカラジロウ。
「カアアアアアアアアアアアアア!!」
しかし、エラードラゴンはそれを無駄な動きをせずに避ける。
攻撃が当たる直前まで動かなかったことから、かなり余裕そうではある。
「やるな! けど、負けるなカラジロウ! ウイングスマッシュのラッシュラッシュ更にラッシュだ!!」
カラジロウ両翼が光り、それを次々にエラードラゴンに向けられるが、エラードラゴンは先程と同く、実に余裕そうにかわした。
「くそっ! なんで当たらないんだ!」
少年は悔しがる。
「やれ」
デス抹茶がそう言うと、エラードラゴンはその右拳をカラジロウへと放った。
「かわせ!」
ベルトコンベアの指示により、カラジロウはなんとか攻撃を避けた。
「なんて強い一撃なんだ! 当たっていたら負けてたぜ!」
だが、エラードラゴンの攻撃はまだ終了していない。
「なっ!? 速い!?」
驚くベルトコンベア。
それもそうだ、エラードラゴンはその巨体に似合わない動きを見せ、カラジロウの後ろを取ったからだ。
「かわせ!」
「やれ」
互いの指示により、モンスター同士もそれに従い、動いた。
エラードラゴンは尻尾で思い切りカラジロウを弾く。
それにより、カラジロウは体制を崩す。
そこをエラードラゴンは見逃さない。
エラードラゴンの口内に真っ白なエネルギーが集中する。
そして、それを放つ。
チャージの速度も速く、一瞬のうちにそれが放たれた。
純白の光線といったところだ。
技名は不明だが、かなり高威力な技だということが分かる。
実は、テイマーズグランプリで初使用の技だ。
おそらく、エラードラゴンの判断で、決勝まで取っておいたのだろう。
「かわせ!」
ベルトコンベアは叫んだが、空中で体制を崩しているので、指示に応えることはできなかった。
「カアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
その光線をモロに食らい、その後カラジロウは地面をバウンドし、転がる。
この戦闘において、モンスターが死ぬということはない。
特殊なフィールドだからだ。
ただ、やはり衝撃は大きかったのだろう。
カラジロウは地面から弱弱しく起き上がった。
特殊フィールドによって出現していた互いのHPバー、カラジロウの方だけそれが全て消えている。
「決着だああああああああああああああああああああああああ!! なんとおおおおおおおおおおおおお!! 今年の優勝者もデス抹茶選手だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
青バンダナの審判の男が、ダンジョン製の超高級マイクに向けて、音割れするレベルで絶叫し、それが会場中に響き渡った。
☆☆☆




