RPGの中はこんな感じ1
三人称視点の練習。こんな感じで書けばいいのかな?
「はぁ……はぁ……ついにここまで来たぞ。ノーセーブノーダメージ縛り……今日で何日だっけ? 3日目? 4日目? まあいいや」
ラスボスのダンジョンまでようやくのことでたどり着いたものがいる。ここまで通算10回。
『神』と呼ばれるプレイヤーに操られたこのゲームの主人公はその神の事をバカだと思っていた。
ノーダメージ縛りはまだわかる。これまでいろいろな世界に派遣された彼はその中で同じ縛りプレイをする『神』に選ばれたことがあるからだ。
ノーセーブ縛りもまだ耐性があった。これも『神』と呼ばれるプレイヤーに選ばれて何とか達成したことがあるからだ。
どちらもきつかったと、過去の『神』の所業を噛みしめていた。それと同時に、このチャンスは絶対に活かしてやるとも意気込んでいた。
「さあ、ラストダンジョン。これが最後だ。気合い入れて行こっ」
意気込んででいたところで『神』が操作方法を誤った。コツンッ、と小気味のいい音がしたかと思うと、主人公のHPの数値が僅か1減っている。
その光景に主人公は顔が凍り付く。
「いや、待って。今のはノーカンにしよう。ほ、ほら、今歩くだけでHPが回復する装備つけてるでしょ? だから、ねえ、お願い待って! もう嫌だ! 幼馴染が死ぬ光景を見たくないんだ! だから神様やめて! お願いだか」
画面の中の主人公の嘆きはプレイヤーたる『神』の元へは天地がひっくり返ろうとも届くことはない。無慈悲にも主人公は時を遡り物語のオープニングからやり直すこととなる。
そんな何度も繰り返されたリセット&リスタートに主人公は自分が壊れていくことを感じていた。
幼馴染が目の前で惨殺される光景を何度見ただろう。
何度殺されればいいのだろう。
物語の都合という抗えない事象に文字通り何もできない主人公は暗闇の中にいた。
そしてそこからまた始まる地獄のノーセーブノーダメージ縛りというこの遊び方に派遣した主人公は派遣した創造神と運命を握る『神』もとい、『プレイヤー』へ登場人物がラスボスへ向けるよりも深い恨みと憎しみを向けていた。
「ぶっ殺してやる。神様。絶対にこの縛りを始めたことを後悔させてやる」
意志は持てても体を動かす権限は持てなかった。だが、体は動かせなくても何かできることはあるはずだと主人公は考えていた。
そして、物語は最初の敵と遭遇するところまで進んでいた。
既に10週していた為、プレイヤーは話の内容をスキップ。それに影響を受ける登場人物の会話を主人公は話の1割も聞けていない。
だがしかし、それでもいい、と主人公は思っていた。すでに10週している。この後の展開はプレイヤーと同様に把握していた。
システムに従って動く体に身を任せながらも主人公の頭はこの縛りを永遠の長引かせてやるという思考で一杯だった。主人公は自分が不眠不休で食事をとらなくても絶対に死なないということをこれまでの周回で理解していた。故に考え付いた。この武器を使ってプレイヤーを殺してやると。
それにはまずダメージを受けなければならなかった。
主人公は最初のこの後おこる戦闘でダメージを受けることを必死に祈った。頼む、何が何でも当ててくれ、と。
やがて強制イベントに流れて戦闘が始まる。
「よし、来い。当てろ。オラ当てろ」
鬼気迫るその表情にモンスターは逃げ出す。
「くそったれぇぇぇー! てめえら何で逃げるんだ! 当てろよ! 攻撃当てろよ! またリセットさせろよ!」
その後も主人公の祈りは聞き届けられず、物語はついに終盤へと来ていた。
「はぁ……はぁ……ついにここまで来てしまった。ノーセーブノーダメージ縛り……今日で何日だっけ? 3日目? 4日目? まあいいや。終わらせてやる。前回はここでミスしたからな。ほら、ミスしろ……ミスれよおぉぉぉぉ!」
なおも思い通りにいかないそのプレイヤーの操作に主人公は諦めようとしていた。
「そうだ。多分俺がいけなかったんだ。そうだ。そうに違いない。俺がミスれと思ったからここまで来たんだ。逆のことをしてみよう」
プレイヤーの抗えない指示に従ってゆっくりと歩きだす。やがて、モンスターに出会うと今までとは真逆の言動をとりだす。
「お、お願いします。当てないでください。攻撃を当てないでくだ……よしゃあぁぁぁぁぁぁ! それ見たことか! はっはー! 引っかかたなバカめ! これぞ真逆の法則! 当てるな当てるなといえば当たる! さあ! クソ神様、リセットだ。リセットをしろ。え、あれ? 続行? なんで!」
今までの流れであればこの時点でリセットしていた。だが今回はしなかった。そんな奇行に主人公は疑問を感じていた。
この攻撃が当たった、という事象はリセットを強く望む主人公が生み出しだ幻影だった。それに気づかない主人公は自動運転モードの乗り物のようにラストダンジョンの奥深くへと足を進めさせられた。
そして、主人公はラスボスを倒すことになる。
「うぅ……うぅ……なんでだよ! 攻撃当たったじゃないか! 何でリセットしないんだよ! 縛り違反じゃな、い、か? え、あれ? HPの数値が減ってない? あれから回復する箇所なんてなかったし……え、あれ? なんで?」
ここで主人公はすべてを悟った。あの数値の変動と攻撃が当たった時の感覚はリセットを願うあまりの自分が見せた幻なのだと。そして、プレイヤーではないどこかの神に感謝をしていた。幻覚を見せてくれてありがとう、苦痛な時間を終わらせてくれてありがとう、と。
そして。
「ちょっと神様。あの派遣先ひどくないですか? 何ですかアレ。ノーセーブノーダメージ縛りって。僕途中であなたの事恨みましたよ」
「いやごめんごめん。でもよく耐えたね。次はもう少しマシなところに送るから許して?」
「まあ、クリアできたからよかったですけど……それで次の派遣先は?」
「ああ、レベルアップすると使えるものが少なくなっていく、って環境だ。今回は君の他に女性2名と男性1名の派遣予定だけどやる?」
「なんでそんな変な派遣先しかないの?」
「いやまあ、この界隈って健常プレイヤーが少ないんだよね。なぜか皆苦しい方へ苦しい方へ進んじゃうんだよね」
「ならそんな状況にならない世界を作ってくださいよ」
「RPG何だもの。どうしても自由幅出来てしまうものしょうがないものよ。で、どうする? 行く? 今回は前回より簡単な現場だと思うよ」
「はぁ……分かりました。行きます。行きますよ」
「よし決まり! 君は聞き分けがよくて助かるよ。それじゃあ、扉開くから少し待ってね」
「創造神さん。この縛りクリアしたらしばらくお休みもらいますからね」
「いいよいいよ。給料も弾むね。よいしょ。さ、準備できたよ」
主人公の目の前に現れた巨大な扉の先は空間が渦巻のように捻じれて混ざっている。
そんな光景と次の派遣先の縛りに覚悟を決めつつ主人公はまた一歩地獄へと足を踏み入れた。
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