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漂泊史家、星を綴る   作者: 夕凪霧葉
エピローグ
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エピローグ

 ファリルは出発を一年、つまり学院の卒業まで伸ばすことにした。

 六月のその日、カニンガム邸は賑わっていた。帝国では成人の儀式は行われていないが、十八の誕生日に盛大なパーティをするという習わしは存在する。それを活用して、カッティは裏事情を知るもの、知らないものを合わせて数百人規模の誕生パーティへと変えたのだった。

 ハインドホープは会の初めのみに現れて関係者へ挨拶をした以後は若者たちの場だとして姿を見せず、シャーロットには泣かれ、それに同調するかと思われたレミリアが予想に反してシャーロットを慰めている様子がファリルにとり印象的だった。それ以外にも、カニンガム家の家人たちは当然として、クリスやクルツァ。カッティをはじめとしたクラスメートたち、ダルマティア年鑑の執筆関係者も姿をみせ、会の最後にはダンスガード博士から、一本のワインが贈られる。


「おおよそ『一年後』にワインを飲みましょう。餞別です」


 これは、ファリルの誕生月が八月だからだ。帝国本土との時間は五倍の差があると推測されている。ダルマティアにとっての二ヶ月後は本土では一〇ヶ月後に相当した。

 それから、と前置きを置いた上で耳に顔を寄せて小声で話す。


「あまりこう言った場で話すことでもないかもしれませんが、重力場を突破する際に小規模な地震と気象変動が発生します。お気をつけて」


 ダンスガードは口早にそれだけを伝えると、さっと離れグラスを掲げて誕生日おめでとうと述べて、片目を閉じる。うまく表情は作れていなかったが、博士的にはウインクのつもりのようだ。


「わかりました」


 ファリルの答えににっこりと笑って博士が遠ざかっていくのと入れ替わるようにカッティがやってきて、軽く手を挙げた。


「ファリル」

「カッティ」


 お互いにそれから尽きぬ会話を交わす。

 それから、一週間後、ファリルは巣立ちの時を迎えた。


 その後、多くの時間が流れた末に『障壁制約の創造力 -ダルマティア近現代史-』という本が出版されたという。

ここまでお付き合いくださった方はありがとうございました。

完結となります。


この物語を書くとともに、色々と並行して読書して得た知見などを盛り込めるだけ盛り込んだため、衒学的なのかごったになのかわからない話になっていた部分もあるかと思いますが、兎にも角にも走り抜けられてよかったです。

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