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4-7.

四月最後の投稿となります。GW中には完結まで投稿しきるかと思いますので、後一息よろしくお願いします。

「みんな、知っているってのか。森の爺様も」


 カッティが焦燥感のある表情で、救いを求めるようにチェイスの方を向く。


「チェイスさん。どうですか」ファリルは、答えがカッティにとって衝撃を与えるだろうと想像しつつも、チェイスに発言を促した。

「知っていたわけじゃない。ただ、そういうこともあるだろうとは思っていた」


 チェイスのファリルにとっては半ばわかりきった答えに、カッティは驚き取り乱して、頭を抱え出す。ちらりとレミリアの方を見ると、ファリルの説明を聞きながら考えに浸っているようで、何かを発言しそうにはなかった。


「なんだよ、それ。ファリル、どういうことなんだ?」

「僕も半信半疑だったけれどね。きちんと、筋道立てて話すよ。ノエルさんやお祖父様がそのあと、補足や真偽を語ってくれるとも思う」

「おう、とりあえず最後まで付き合うぜ」

「ありがとう。カッティ」


 深呼吸をしてから、ファリルは再び口を開く。事前にこの場で話す内容は整理してきた。だから、それを頭の中で思い浮かべてなぞるだけ、そう思いはしても錚々たる顔ぶれの前で、図らずも緊張の度合いが増していく。

 この場には、カッティとレミリア。そして、ハインドホープ、シャーロット、チェイス、ヘンリー、パトリシアが集っている。


「事件が三つある。始まりは、エルフィルが浜辺で倒れていた事件。次に、ドワルフェンが森で討たれた事件、最後にエルフィルが口に石を咥えさせられて殺された事件」

「ノスフェラトゥのこの人がなんで、カニンガム邸にいるのかってのも四つめの事件といえば事件だろうな」


 混乱していた頭を一旦切り替えることにしたようで、カッティは快活な声でいつもの如く、ファリルの手が回らない点をフォローする。


「ありがとう。それも含めて説明する。それぞれを一番から三番、カッティの指摘してくれた件を四番めの事件と呼称します」

「ああ、頼んだぜ」


 カッティに向けて頷いて、ファりるは説明を始めた。


「二番目のドワルフェンの件がシンプルだからこれから話すね。三名の特使はそれぞれに目的があってキャンパス市を目指していた。その中でドワルフェンの特使は森番のチェイスさんを目印にきていた」

「まあ、爺さんと酒を飲み交わしてるんだからそうだろうな」


 カッティが訳知り顔で頷いていたので、ファリルは質問を一つ投じる。


「それを知る人物がさ、もう一人いるよね」

「ああ、若手の森番か。爺さんを案内した」

「そう。その森番は、もう一人に連絡したんだ」


 ここまでいえば、カッティもファリルが何を言いたいのか分かるようだった。


「親父か」

「そうだね。チェンバレンさんは狩に行くと言って出かけ、正面から斬りむすんだ」

「親父が犯人なのは確定なのか?」

「残念ながら、ご本人が認めている」


 ファリルの言葉に無言でカッティは天を仰ぐ。


「でもね、この二番目の事件は裏があるんだ」

「いや、シンプルだろ。親父はダルマティアの若手から人気がある。頼んでおけば、異変があれば知らせてもらうくらいは余裕でできるだろう。裏なんてあるのか?」


 どこか疲れた表情のカッティに対して、ファリルは首を振る。


「チェンバレンさんが、いくらダルマティア主義者であって、帝国排斥の思考を持っているとしても、いきなり殺すだのなんだのまでいくのは不自然じゃない? 五〇年姿を見せなかった帝国本土の人間を見て、そこまで思うほどチェンバレンさんは狂ってはいない」

「まあ、そりゃそうだわな」


 不本意ながら納得しているカッティにファリルは声をかけた。


「その隙間を繋ぐのが、ベリーズ調査官だよ」

「ベリーズってやつと、親父がなんで繋がる?」


 訝し気にカッティは呟く。


「赤シャツ隊の構成人員ってなんだと思う」


 度々質問して申し訳ないなと思いながら、カッティに話を再び振った。


「親父の有志組織、そりゃキャンパスとかリエカとかの若者だろ」

「そう都市部の若者なんだ。それから残され組の海兵たちだ。前者は駐在官や調査官、なんかが多い」

「夜警国家、か」


 かつて、自身の口から言っていた言葉を再度カッティに答えてもらう。


「そうだね。ローザさんの市政では不遇を託っている人たちばかりかな。そうじゃない人もいるかもしれないけど。多数派はそうだ」

「繋がりはわかったが」

「いえ、カッティさん。むしろ、何故特使たちが来るということを事前に察知していた節があるのか、そちらの方が肝要かと」


 レミリアが聞く側に回っていることで、色々と考えをまとめていたのか、話の交通整理を始めた。


「確かに、いくらなんでも連絡受けてすぐに装備整えて行くなんてのはおかしい話だ」

「テレックスと基幹電話網は、断絶前の帝国本土の資本が投下されて敷設されたんだ。特使たちが来た場所からも繋がっていたということだよ」

「来た場所って、五〇年間もの時間をそういやどう過ごしていたんだよ」


 カッティの疑問は当然だとファリルは思う。


「断絶障壁の内側にいたんだよ。ダルマティア地域と樹海の境界に古い砦がある」

「なんで、今になって? そして、なんで今までわからなかったんだ」

「まず後者の理由は現在のダルマティアの地図からは消されていたからだ。それから、前者は端的にいえば、意図的な間違い電話が原因なんだ」

「なんで、そんなことが?」

「電話網の書き換え工事ですね」


 レミリアがサラとの会話の中で出てきた知識を正しく発言する。


「レミリアが言ってくれたように帝国直轄のお役所は、いくつかお取り潰しになったからね。予算の無駄ということで。カニンガムの家にあった行政資料の新旧番号表では、本来特殊指定される番号、つまり地方府に直通するべき番号が、再割り当ての混乱の中で、調査官事務所に割り当てられてしまっていたことがわかっている。もしかしたらベリーズさんの先代はむしろ混乱の中、それを狙ったのかもしれない」


 それはあくまでファリルの想像に過ぎない。本人もいない今、そこは闇の中だろうと思う。


「地方府からの通報に偽装したってのか」

「歴史上、多くの事件の発端は誤った伝令や偽電がきっかけで起こるんだ。昔、エムスという温泉地から送られた一通の電報は、意図的に文章を省略したことで開戦の引き金になったほどだよ」


 正しく伝えるということは難しいなとファリルはしみじみ思う。


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