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3-3.

「それでは三十六期航海時代の幕開けのリプレイを開始致します。」


 用意された壇上のスタンドマイクに向けて、司会の男性が朗々と決まり文句を発する。

 それから一時間ほどかけて、ゲームのプレイ環境の変動と上位ランカーたちの動静が劇団の美声によってストーリー仕立てで演じられる。

 ストーリーが終わると、多くの学生たちはカフェを去っていくが、ファリルとエドワードはまだ残っていた。


 歴史年鑑の執筆作業を対応する中で気になった部分があったからだ。それを外国語に詳しいエドワードに相談していた。


「エドワード。それで相談なんだけど、僕はどうしてもカガワガンジー卿が断絶直後に復興参事会で言い放ったという『ヒトは城、ヒトは石垣』という言葉が気になるんだ」

「東方の古言だなぁ」

「ヒトは財産であるという話らしいんだけど、復興に向け、彼は帝国の友好国の新進気鋭の商人であり、同時に普門院の熱心な教徒だった彼は、ダルマティアに持ち込んでいた私財を投げ打って救貧院の礎を築いた」


 ファリルがメモをとっていた文章を読み上げる。それに対して、小刻みに頷きながら聴いていたエドワードは聴き終えると、首をひとまわしして口を左右に動かした後に、口を開いた。


「んー、ちょいと違うかもしれんのよな」

「解釈が違うのかな」

「その古語はな。全部言い切るとこうだ。『ヒトは城、ヒトは石垣、ヒトは堀、情けは味方、仇は敵なり』という」


 エドワードはスラスラと口調すら変えて、言葉を言い切る。


「そうなると意味が変わってくるのかな?」

「ニュアンスが変わる感じだな。幾ら立派な城があろうとも、ヒトの力がないと役立たずだ。 国を支える一番の力はヒトの力であり、信頼できる同胞の集まりこそが強固な城塞にも匹敵する。意訳するとこんな感じだな」

「確かに変わるね。人財論とかじゃなく、帝国外の同胞への呼びかけ、いや場所が場所だ。ダルマティアにいる帝国系以外の割合なんて、相当に低い。帝国系であろうとそうでなかろうと団結して復興にあたるべしってところなのかな」


 意味合いが変わるであろう演説の内容を解釈してエドワードに話すと、どうにもエドワードの解釈は別にあるようで、首を振った。


「ファリ、俺はこれはメッセージだと思うな。まあ、ヒトの意思なんざ、そいつにとっても時に変わりうる話だとは思うけどな」

「メッセージか、それは誰に当てたもの?」

「市参事会へ、のものだな。ある種の当てつけじゃないかね。お前さんが面倒くさがるダブルミーニングだ。表向きはダルマティアが閉ざされた故の人材の重要性を説き、裏で伝わるものには帝国人が集まりも集まって出来なかったことをいくつかやったのだから、ビジネスの支援をというところじゃないか?」


 エドワードの言葉に、ファリルはなるほどと思い頷く。


「そういう発想はなかったよ。興味深い主張かもね」

「ファリのいいところは、相手の主義主張を真っ向から否定せず、それを面白い意見として深掘りするところだな」


 エドワードはまっすぐにファリルを見つめて語る。


「そうかな。自分でもわからない」

「まあそういうところもいいところだよ。とはいえ、色々抱えすぎじゃあないかね」

「あと一年で卒業だし、ダルマティア年鑑に、異邦人の事件、それにお祖父様からの問いをそろそろ本気で解こうと思っているからね。最近、新たな問いかけも出されてしまったし」


 レミリアから聞いた新たなる謎かけも、頭の片隅では考え続けている。


「やることが明確なのはいいことだな」

「エドワードはそういえば、どうするんだっけ?」

「卒業したらお前さんと同じく大学だな。そのあとは今も関わっているんだけれど、スピカ市で行われている多国語保存の為の活動に関わり続ける一方で、だいぶこの五〇年新しい言葉やら言葉の語彙も増えたしな。ダルマティア初の辞書編纂事業をやりたいと思ってる」


 エドワードとの会話はそれから一時間ほど続いて解散した。

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