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イシュタル  作者: 平 一
9/9

9 説明の理由

挿絵(By みてみん)


「今回、私が以上のとおり銀河系とアンドロメダ銀河の現況について説明した理由には、次の三点があります。第一に、人類の皆様にも、今回の遠征艦隊に同行していただく、戦闘及び戦後処理に関する視察団の派遣を要請するためです。銀河系の中心部が荒廃し、かつアンドロメダ銀河の統治も継承すべき現在の帝国にあって、旧開発途上星域の〝未来あるもの〟達による、新帝国政策への理解と支持は不可欠です」


「第二に、今後予定される帝国の民主化に向けて、基礎的な情報を提供するためです。従来帝国では、先進種族〝歴史あるもの〟の一部にしか選挙権と被選挙権が与えられませんでした。しかし、先の帝国議会において、しかるべき情報処理技術の支援のもとに、責任ある種族的意思決定をなし得る種族には順次、各種の政治的権利を認める法案が可決されました。この改正は科学・技術の進歩に伴う、経済・社会活動の拡大、省力化と複雑加速化に応じた、制度・政策の広域化と分権化、特に民主化の同時進行という、文明発展の法則に基づく必然の改革です。こうした事実は、今や民主的な統一政府樹立を成し遂げた人類の皆様にも、もはや自明の(ことわり)でありましょう。現皇帝もこの理に従い、理事種族や議員種族だけでなく、他の賢明なる諸種族の意見も取り入れながら、国策を決定する方針を発表しました」


挿絵(By みてみん)


「第三に、今なお皆様の間に残っているかも知れぬ、旧帝国系種族への憎悪や恐怖、偏見の解消を要請するためです。今日では超空間通信・航行技術及び超新星兵器の実用化によって、二大銀河の統一は実現が可能、かつ必須の課題となっています。人類と帝国の正式な接触の契機が今回の大戦となり、またその影響から地球でも痛ましい内戦が生じたことは、誠に悲しむべき事実です。しかし今や、皆様もまた過去の遺恨を捨て、巨大な星間社会への参加に対する迷いを払い、他種族と未来への展望を共にして、新たな一歩を踏み出す時を迎えました」


「私は現皇帝が文明開発長官であった時代、アモンの前任の軍事部門副長官として、イシュタルやアスタルテの名で地球を支援させていただきました。本日こうして再び懐かしき地球を訪れ、人類の目覚ましい発展を拝見して、感慨無量です。今後は皆様が、新帝国の実力と正当性への信頼のもとで、来たるべき社会の変化に対して一体性を保ちつつ、両銀河を中心とする素晴らしき新世界の建設に参加されるよう、ここに私、帝国艦隊司令長官兼アンドロメダ銀河遠征艦隊司令官アスタロトは切に願うものです」


ここでは語られていないことが、三つある。第一に、残念ながら抵抗運動の三種族は、停戦交渉時の騙し討ちにあって壊滅した。直前に報告があったので、演説内容が修正できなかったようだ。このことは、状況がなおも予断を許さないことを示している。


第二に、ラジエルの私兵軍司令官ゴモリーと、アンドロメダ銀河の中心的な先住種族マルコシアスは善戦しており、戦勝の暁には理事種族となるだろう。大型の猛禽類から進化した種族と、グラシャラボラスよりも精悍な外見をした、有翼の狼のような種族だ。事前に見せられた彼女達の未使用画像は、どこか神秘的で凛々しい佇まいの少女と、褐色の肌をした活発そうな少女だった。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


第三に、実はサタンは〝先帝〟種族から多数の移民を受け入れ、事実上の混成種族となっている。〝先帝〟内の良識派が、腐敗した中枢種族を淘汰して新体制を作るため、サタンを依代(よりしろ)にしたという噂もあるが、このことはむしろ、新帝国政権への信頼を高めているようだ。


挿絵(By みてみん)


いずれにしても今後、私達人類はさらなる変動を経験することになる。それを大きな飛躍につなげられるよう、願ってやまない。

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