7話 第一章:新世界/出会いのワイバーン-6
「くっ……しかし手札は今引いた1枚のみ!HPMAXの、グランド・ヤジギラスを倒せますかな!」
「確かに、この場にいるゼノ、そしてジビルドの攻撃力を全て合わせても50000には届かない……」
「しかし!ここはゼノの護る街!ゼノサイズの固定兵器は備えてあるだろう!」
「んん!なるほどその手が!」
本当に、街から固定式の大砲や機関砲が生えてきた。《対怪獣・迎撃要塞都市》のテキストなんかもう思い出す必要は無いだろう。
「……残念ですな!パワー上昇幅は3000!それでもヤジギラスには届かない!」
固定兵装を使えるゼノ3体で、パワー8000×3の24000。ジビルドとスーパーゼノのパワーを合わせても削り切ることは不可能だ。
この後の展開を握るのは、手札の最後の1枚。果たしてそれは切り札たりえるか――
「手札から武装カード!《巨獣斬剣ザーネブレイド》!スーパーゼノに装備!」
ラスト1枚は武装カード。パワー・HPが上がるほかにいくばくかの追加効果をもたらすカードだ。
「さらにジビルドの効果発動!デッキの上から3枚オープンし……」
カゼン氏の目の前の空間にカードが3枚浮かぶ。
「その中の名前に「ゼノ」とつく武装カードをすべて回収!《ゼノ・ハンマー》!《ゼノ・アックス!》残りのカードは破棄されるが、ここで名称「帝国軍」を持ち種族「戦艦」を持つジビルドの効果でオープンされた!《帝国軍・対要塞用大型ランスユニット》を回収!」
3枚オープンの3枚回収。相当な強運だが――
「ここで吐いてきましたか!RPPを!」
――おそらくこれがそのカギを握っているのだろう。あーるぴーぴー。聞いたことのない単語だ。
「ゼノ武器をゼノ2体に装備!ランスユニットをジビルドに装備!さぁバトルだ!」
フィールドに並び立つのはそれぞれ毛色が違う武器を装備する勇者が4人。
曲調が変わる。何かを心待ちにしている。そんな曲だ。
「ゼノ1番機から3番機!アタック!」
3番機が操る要塞に備え付けの固定砲に援護されながら、ゼノ部隊が砂漠を駆ける。
「くっ……トリガーはありませんぞ!ヤジギラスでブロック!」
身長の100倍はあろうかという怪獣の足元で、ちまちまと斬りつけたり棘のついたハンマーを投擲するゼノ。
あきらかにスケールが違うのでダメージなんて無さそうだがそこはゲーム。怪獣のHPが額面通り削れ、残り20000。
だんだん伴奏に参加する楽器が増えてきた。
「続けてスーパーゼノでアタック!ここで《帝国軍・対要塞用大型ランスユニット》の効果発動!」
「自身をリリースすることで、直後のアタックのパワーを2倍にする!ジビルド!吶喊せよ!!!」
「なんですとー!?」
装備カードにより艦首に全長の半分もあろうかという大型の槍が備わった宇宙駆逐艦・ジビルドが、後方のスラスターから爆炎を吹き出し怪獣に特攻をかける。
「ギャオォォォ……ォォォォ……ォン」
直撃。怪獣が大きなうめき声を上げながら後方に後ずさりをする。凄まじい衝撃はそれっぽい振動となって観戦席にも伝わってくる。
BGMは最高潮の盛り上がりを迎える。本格的に金管楽器が参戦し、シンバルの音がジャーン、ジャーンと響く。
怪獣映画の劇伴といった先ほどの雰囲気と異なり、アクションゲームのラスボスと戦っているかのような雰囲気だ。
リリースなので破壊扱いにはならない。スゥ……とジビルドが消えると、展開された白銀の翼から大量の光を吹き出し、空を駆ける機影がひとつ。
「いっけぇぇぇぇぇぇえぇ!!!!!!」
感情を込めた叫び声が響く。自らの身長よりも大きい板――否、これは剣だ。を振りかざし、怪獣に迫る。
一閃。大きな、大きな剣戟エフェクトと共にスーパーゼノが後方で残心の構えを取る。
FINISH
(プレイヤーが《決戦の大砂漠》の効果により特殊敗北しました)
観戦中なので見慣れたWINやLOSEではなく、第三のゲームエンド表示が画面中央に映し出されていた。決着だ。
――
「いやーいいバトルでしたな!まさか最後の1枚がランスユニットとは!悔しいですなー」
「いやぁびっくりしたよ。こっちのフィールドに展開してくるのは予想外だったね」
「あれはプレミでしたな……ガッツリと有効活用されてしまいましたな」
「でもこっちも手札を全部使い切らされた。最後までわからなかったよ」
「あとはグランド・ヤジギラス召喚でRPPを全部使い切ったのがいけなかったですな……」
「あれ普通に召喚すると300mくらいでしょ?フィールドが砂漠で、RPPを込めるとあそこまで大きくなるんだね……」
バトルが終わったらノーサイド。先ほどの気迫が嘘のように、和気あいあいと会話する二人がいた。
「あの……えっと……」
先ほどまで目の前で繰り広げられていた激しいバトルの余韻だ。まともに言葉が出なかった。
「あぁごめんねマーズ君。僕たちのバトル、どうだった?」
「すっっっごかったです!怪獣とロボがぐわーって!!!」
純粋に説明が下手。
「ふっふっふ……貴殿も怪獣デッキを使ってみませんかな~?」
ずずいと幼女が迫る。近い。
「あー……それは……ちょっと……」
「やめなよもめんちゃん。困ってるじゃないか。」
ありがたい助け舟だ。
そうだ。忘れていた。とても聞きたいことがあったのだ。
「というかめちゃめちゃ疑問なんですけど『回避率』とか『対空砲』とか、何なんですかアレ!」
「そうだったね……今こそ説明しよう!シナリオと応用ルールの最終章。その中身を!」
武装カード。主に武器とかのカードで、コストを払って召喚することでモンスターに装備することができます。
装備していない場合、モンスターとして扱えます。そのかわりパワーはとても低いので脆いです。
腕が無かったり無機物っぽいモンスターにも装備できます。その場合なんかの力で空中に浮きます