「ポテチ味のお菓子を買った」
「それって何味なの?」
「分かんないから買ってみたんだよ」
二条蒼空がいそいそと鞄から取り出したものは、どこにでもあるお菓子の袋だった。
じゃがいもを可愛らしいキャラクターにして、さらに『ポテチ味』などという頭のおかしな味を掲げていた。
しかもポテチのポテチ味である。もはやポテチのゲシュタルト崩壊を起こしそう。
ポテチ味のポテチの袋を凝視する八重鐘優梨は、
「ポテチの味はポテチでしょ」
「ポテチ味って何だろうねって思って」
「好奇心が旺盛すぎる」
「食べてみたくない?」
「食べてみたい」
蒼空は「それではご開帳」などと言って、ポテチ味のポテチの袋を開けた。
バリバリ、と放課後の教室にお菓子の袋を開ける音が落ちる。
開いた感じでは何の匂いもしない。ただ揚げられたじゃがいもの薄切りだけが袋の中にあるだけだ。
じゃがいもの薄切りを二人揃って摘み、
「いただきます」
「いただきます」
パリッと揚げられたじゃがいもの薄切りは、簡単に噛み砕かれてしまう。
不思議なことに味はしない、全くしない。
ただのじゃがいもの味と薄らと感じる油っぽさが、蒼空と優梨の舌の上に広がっていった。
「じゃがいも味だね」
「これがポテチ味のポテチか……」
「ただの味付けしてないポテチ」
「素材の味を生かしたって奴だな」
蒼空と優梨は、虚無顔でパリパリとポテチ味のポテチを消費していくのだった。
登場人物
二条蒼空:ポテチの味はうす塩が好き。
八重鐘優梨:ポテチの味はコンソメが好き。