サツキの家へ
今回は西岡家にサツキの友達が遊びに来ます。
大きな一軒家の前でジュンタはごくりと唾を飲み込んだ。
隣には欠伸をしている友人。
結局時間を決めていなかったため、昼飯だからと口実にして帰れそうだという理由で11時に西岡家にやってきた。
深呼吸をしてチャイムに手を伸ばしたとき、
「あぁ!田中ジュンタ!」
背の高い女の子がギロッと睨みつけるように立っていた。
「え?田中だけど・・・誰?」
「サツキちゃんの友達よ!サツキちゃんと2人っきりになんてさせないんだから!」
「は?」
この子は何を言ってるんだ?
「なぁ、早く入ろうぜ」
隣に立つ友人がチャイムを勝手に押した。
ピンポーン
「な!!お前勝手に押すなよ!」
「は?どうせ押すんだからいいだろ」
いや、心の準備があるだろ!!
ドキドキしながらしばらく待っていると、
ガチャと音を立ててドアが開いた。
「はーい、どちらさん?」
派手な髪型のミサキが顔を出した。
「ご、ご無沙汰してます!田中ジュンタです!」
ミサキは少し考えてから、
「ああ!サツキが小さい時によく遊んでたクソガキか!」
思い出したと言わんばかりにヘラヘラ笑っている。
く、クソガキだと思われてたのか…
「で、なんか用?」
「今日サツキさんに漫画を貸す約束をしてまして」
「んー?サツキまだ寝てるけど…」
ミサキはジュンタの少し後ろでそわそわしているミヒロを見つけた。
「あれ、ミヒロちゃんじゃーん!ミヒロちゃんもサツキと約束してるの?」
コクコクとさっきのジュンタに対する態度とは打って変わり顔を赤くして頷いている。
「ミヒロちゃんがいるならとりあえず家に入れてあげるよ」
そう言ってミサキは3人を中に入るように促した。
「「おじゃましまーす」」
昔よく遊びに来ていた家があまり変わっていないことにジュンタは懐かしさを感じる。
「その辺座ってちょっと待ってて」
ミサキは客人をリビングに適当に案内してサツキの部屋へ向かった。
コンコン ガチャ
「おーい、サツキー?」
丸い毛布の塊に呼びかける。
毛布玉は規則的に小さく動いている。
「おーい起きろ〜」
ミサキは毛布を引き剥がしてサツキを揺さぶる。
「ん〜・・・まだねる」
サツキはもぞもぞとミサキのお腹に抱きついて寝息をたてている。
か、可愛い!!
ミサキは甘えるサツキに悶絶して震えた。
まさか、毎朝こうなのか?いつもリュウ兄が起こしてるけどいつもこうなの?役得すぎない?
5分程、甘えん坊のサツキを堪能してからミヒロ達を待たせていることを思い出し、無理矢理サツキの身体を起こしてみた。
「ん〜・・・」
ミサキに寄り掛かりぎゅっと抱きついて離れない。
こんなに寝起きが悪いとは・・・
リュウ兄はいつもどうやって起こしてるんだ?
「おーい、ミヒロちゃん来てるぞ」
「あ〜・・・そうだったぁ」
ようやく頭が回転を始めたサツキはフラフラとリビングに向かって歩き出した。
やれやれ、・・・あれ?
ミサキは大きなミスに気がつき慌ててサツキを追いかけた。
「サツキ!待て!着替えてない!」
慌てて追いかけたミサキの苦労の甲斐なく、大きすぎるTシャツ(エイシのお下がり)は華奢な肩を露わにし、ギリギリTシャツの裾からショートパンツが見えないため白く細い足が露わになっている刺激的な姿でサツキは、
「おはよー」と手をゆるくあげて挨拶していた。
「と、尊い・・・」
ミヒロはサツキの姿にノックダウン。
「うわっ」
ジュンタは赤面して視線を逸らし、
ジュンタの友人はごくりと唾を飲み込み、釘づけになっていた。
「野郎は見るんじゃねえ!!」
ミサキはサツキを庇うように抱きしめて2階へと連れ戻した。
サツキに着替えを促して顔を洗ってから降りてくるように念を押す。
素直に頷くサツキを確認してリビングに戻った。
リビングでは放心している3人。
「野郎共は記憶から消せよ!いいな!」
ミサキにギロリと睨まれてジュンタは激しく頷く。ジュンタの友人もミサキの気迫に押されてコクリと頷いた。
適当にコップと麦茶を客人に出して、ミサキはダイニングテーブルに座ってスマホをいじり出した。
ミサキのピリピリした空気に3人が背筋を伸ばして黙っていると、
「おはよー」
と気の抜けた声がしてサツキが現れた。
「休みだから起きられなくて、ごめんな?」
あははと笑いながらサツキはキッチンに入って行った。
コップに水道から水を入れて飲み干すと、空のコップを持ってミヒロの隣に座った。
のんきに麦茶を注いでいるサツキにジュンタは切り出した。
「おい、この女の子はサツキが呼んだのか?」
「ああ、昨日ジュンタと約束した後にミヒロに色々聞かれてさ〜、ウチに来たいって言うから一緒にゲームしようと思ってさ」
ミヒロはジュンタからふいっと顔を背けた。
「ジュンタが来るのこのくらいの時間かなと思ってミヒロに11時って言ったけど寝坊しちゃった」
あははと笑う美少女。
「まあいいや、これ漫画」
ジュンタは紙袋をサツキに渡した。
「ありがとう!エイ兄も楽しみにしてたんだ!」
うひょーと紙袋の中を見てホクホク顔のサツキ。
「ゲームしようぜ〜。けど腹減った。」
サツキは長い髪をわしゃわしゃとかきあげる。
「みんな腹減ってるだろ?なんか作るからゲームセットしといてよ」
そう言ってサツキはテレビ横の引き出しをゴソゴソ漁ってゲームソフトを1つ取り出し、ぽーんとジュンタに投げ渡すとキッチンに入って行った。
サツキはラフに長い髪をポニーテールに結い上げる。
適当に結い上げた髪が気に入らなかったのかミサキが立ち上がり、ちょいちょい直してまた椅子に座った。
「えーと、1.2.3・・・ミサ兄も食べる?」
「食べる〜」
「今日はリュウ兄は仕事で、カズ兄とエイ兄いる?」
「エイシはいびきが聞こえてたからいるだろ〜、カズ兄はわかんね」
ミサキはそう言うと気怠げに席を立って2階に確認しに行った。
「とりあえず7人くらいか?」
サツキは1人呟いて冷蔵庫を開ける。
ジュンタはサツキに渡されたソフトをゲーム機にセットしている。
ミヒロはサツキを目で追いながら「萌えの極み!」などと呟いている。
ジュンタの友人は静かにサツキの事を目を追っていた。
「おーい、昼飯は焼きそばでいいかー?」
サツキがキッチンからひょこっと顔を出して小首をかしげる。
3人はコクンと頷く。
「おけー!」
ニカっと笑ってサツキはキッチンに消えていった。
ゴソゴソとゲーム機をセットするジュンタをミヒロとジュンタの友人が眺めていると、
「カズ兄とエイシも飯いるってよー」
ミサキがリビングに戻ってきた。
「おけ!7人分作ってるから足りるはずー」
サツキは笑顔で応えるとキッチンからは規則的にトントンと野菜を切る音が聞こえてくる。
しばらくすると、ソースの良い匂いがしてサツキがキッチンから出てきた。
「焼きそばできたぞー」
可愛い笑顔で焼きそばを両手に持ったサツキがリビングに顔を出した。
「うはぁ!サツキちゃんの焼きそば尊い!!」
ミヒロは狂ったように焼きそばをスマホで撮影した。
焼きそばの匂いにつられるように寝起きのカズマとエイシが姿を現す。
「いい匂い〜」
「腹減った・・・」
サツキはそれぞれの席の前に焼きそばを配り、自分の分を持ってミヒロの隣に座った。
「いただきまーす」
相変わらず軽いサツキの声にその場の全員が脱力して箸を手に取った。
「うっま!」
謎に旨いサツキの焼きそばにジュンタが声をあげる。
「へへ!我が家秘伝のソースは美味いだろ〜」
サツキはドヤ顔でマヨネーズを焼きそばに絞る。
「はいはい、うめーよ」
カズマが寝起きの顔でクシャッと笑う。
「わ、私は幸せすぎてお腹いっぱい…」
ミヒロは涙を流しながらサツキとカズマを拝んでいる。
「うまっ」
ジュンタの友人も思っていたよりも旨い焼きそばをガツガツ食べた。
「ところで、君だれ?」
サツキはジュンタの友人を不思議そうな顔をして見る。
サツキの発言に全員がブハッと焼きそばを吹き出す。
「は!?友達じゃねーのかよ!?」
ミサキは立ち上がってジュンタの友人とサツキを交互に見る。
「初めましてだな?」
「うん、初めまして東野裕介です。よろしくねサツキ」
「おう、よろしくなユースケ!」
ニカっと笑いガッシリ握手をする。
兄達はギラリと目を光らせて睨みつけている。
「待て待て、俺に説明させてください!」
ジュンタが慌てて割って入る。
もちろん兄達への説明である。
「こいつは俺の中学からの友達です。昨日漫画を貸しに行く約束してる時に近くで聞いてまして、一緒に来たんです。紹介するタイミングを逃してしまって…」
「おいコラ、何知らねー野郎を連れ込んでんだよ」
「てめぇジュンタか!?何考えてんだクソガキ!」
ミサキとカズマが鬼の形相でジュンタに迫る。
「ジュンタって…ああ!格闘漫画のジュンタか!」
エイシはようやくジュンタの事を思い出したらしい。
「あの漫画の続き持ってきてくれたんだ!」
サツキは食べ終わった食器をキッチンに置いて、漫画の入った袋を漁り出した。
「まじか!気になってたんだよな〜」
エイシもサツキに駆け寄ってしゃがみ込むと一緒になってそのまま漫画を読み出した。
「あんたサツキちゃんの知り合いじゃなかったの!?」
ミヒロもユースケに驚きの顔を向ける。
「ああ、今友達になった」
ユースケも涼しい顔で応える。
エイシは床に胡座をかいて座り込み、サツキも足を崩して座りエイシに寄りかかりながら一冊の漫画を仲良く読んでいる。
「それ良い漫画だよな」
ユースケはしれっとそんな2人に近づいてサツキのすぐ後ろにしゃがみ込んだ。
「お、ユースケも読んだ?」
「俺もジュンタの家で読んだよ」
「あ!出た!龍王拳!」
「な、何!?龍王拳でも倒せないのかよコイツ!強すぎだろ!」
「エイ兄このキャラ好きだよなー」
「この肉体が最高にカッコいいだろ〜」
「俺は鶴亀拳の方が好き」
「うわ!わかるわー。私も鶴亀拳の方が好き!」
キャッキャと3人で漫画を読んでいると、
「おいコラ!ユースケてめぇ何しれっとサツキに近づいてんだよ!」
カズマがバシッとユースケの頭を叩いた。
「イテ!」
「よく見たらお前けっこう男前だな…サツキに近づくなよ!」
ピアスに無造作にセットされた黒髪、目つきの悪さとエイシと同じくらいの身長に黒のジャージを着崩している姿は不良っぽく見える。
しかし切長の目に通った鼻、顔も小さくスタイルがよいのがジャージごしにもわかる美形だ。
保育園からサツキと一緒に遊び回っていたジュンタは美形への感覚がバグっているのか、ユースケに対しても特別な感覚を持っていなかった。
「野郎共はサツキに手出したら許さねーぞ」
ミサキはそう言うと睨みつけながらダイニングの椅子に座った。
ジュンタは激しく首を縦に振る。
ユースケは少し考えて、サツキの髪をさらりと触る。
柔らかくていい匂いがする。
サツキが ん?とユースケを見上げると、ユースケは優しく微笑んだ。
手の甲で白いサツキの頬を優しく撫でる。
「なんだ?くすぐったい」
あははと笑う美少女。
一連の流れる動作は兄達が止める間もない一瞬の出来事だった。
「手を出さないって約束出来そうもないっす」
しれっと悪びれなく言い放つとサツキを後ろから抱きしめて座り込んだ。
「「ああ゛ーーー!!!」」
サツキとユースケ以外全員の絶叫が家中に響いた。
「おいコラ離れろ!」
「何考えてんだよユースケ!」
「ちょっと!私だってまだサツキちゃんの事抱きしめてないんだけど!」
「うわっコイツ全然離さねぇ!」
「ちょっ苦しい!ユースケ!」
「おいエイシ!今こそ馬鹿力発揮しろよ!」
「ユースケの力が強いんだよ!」
ギャーギャーと大騒ぎになり、ようやくサツキから引き剥がしたユースケを一度隔離して正座させる。
全員がゼーゼーと呼吸を荒げている。
「おま、ユースケどうしたんだよ」
ジュンタがユースケに問いかける。
「綺麗だったから。抱きしめたいと思って」
兄達は鬼の形相で仁王立ちしている。
「いやいやいや、お前そんなことする奴じゃなかったじゃん!」
「俺もこんなの初めて」
「初めてじゃねぇ!」
「ジュンタ!こんな危険な男連れてくるんじゃねーよ!」
ガツンとジュンタの頭にカズマの拳が落ちた。
「痛え!!すんません!!」
「こいつどーする?」
「学校が一緒じゃなー・・・」
ハッと兄達はジュンタを見る。
ひっとジュンタは顔を引き攣らせて後退る。
「おいジュンタ。お前責任取ってコイツの手綱握っとけ」
ニコッとカズマが俳優スマイルを見せる
「コイツがサツキに手出したらジュンタをボコるからな。死ぬ気で阻止しろ。」
ミサキはニヤリとジュンタに笑いかける。
「な、なんで俺が…」
ジュンタは項垂れて少し目に涙を滲ませた。
「悪いなジュンタ。ボコられたらごめんな」
「マジでやめてくれよ!」
「もういいー?ゲームしよーよ」
ミヒロにがっちりと抱きしめられ続けていたサツキはぐったりしている。
「サツキちゃんの消毒!」
ミヒロはサツキをぎゅーぎゅー抱きしめている。
サツキちゃんいい匂いがする〜
ちっちゃくて細い〜
かんわいい〜
私がサツキちゃんを守らなきゃ!!
ミヒロだってサツキを抱きしめてみたかったのだ。
サツキはなんとかミヒロから抜け出してゲームのスイッチを入れた。
「ジュンタ!ゲームしようぜ!」
ぐったりしているジュンタはもう帰りたいと呟いた。
「ジュンタごめんな。兄ちゃん優しいから大丈夫だぞ!」
ジュンタにコントローラーを渡してサツキはニカっと笑う。
「いやいや、今も鬼みたいな顔して見てるけど…」
チラリとダイニングを見るとカズマとミサキが睨んでいる。
正座をし続けて足が痺れたらしいユースケがプルプルと立ち上がりソファに腰掛けた。
サツキがミヒロとユースケにもコントローラーを配っていく。
「サツキちゃん、私このゲームやったことないんだけど・・・」
「そっか!じゃあエイ兄と2人チームね!」
「え!私サツキちゃんチームがいい!」
「おーけー!じゃあエイ兄1人チームで参加してよ!」
部屋の隅で漫画を読んでいたエイシが顔を上げる。
「いいぞー」
エイシがどっこいしょとおじさん臭く立ち上がりソファに座っているサツキの前にドカッと腰を下ろした。
「これは何のゲームなの?」
「格闘ゲームだよ!とにかく相手を倒すんだ!」
ミヒロにめちゃくちゃ適当な説明をする。
「ちゃんと教えてやれよ・・・」
とジュンタが呆れている。
とりあえず1回やってみることに。
「うーわ!ジュンタこっち来んな!」
「へへ!俺はこのキャラだったら無敵だ!」
「サツキちゃんのキャラはどれなの・・・?」
「待て!ユースケが強い!!」
「俺もこのゲーム得意だぜ」
ユースケはゲームが得意なようでエイシをボコボコにしている。
「わ!ジュンタに殺られた!」
ジュンタは先程までの恨みを晴らすように西岡兄弟をボコボコにしていく。
「エイ兄!仇取って!!」
目の前に座るエイシに後ろから抱きついてペシペシと頭を叩くサツキ
「おう!任せろ!」
「させないっすよー!」
ジュンタとエイシが一騎討ちしているとユースケがジュンタを攻撃してジュンタ死亡。
「ぬわー!ユースケてめぇ!」
「ま、待てユースケ!」
そのまま瀕死のエイシを倒してユースケが勝利した。
「次はミヒロもやってみなよ」
はい、とコントローラーを渡すサツキ。
「で、できる気がしないわ」
「ここ押すとキックで、こっちがパンチ!ゲージが溜まったらこっちを押すと必殺技が出るぞ」
簡単に説明してもう一回プレイを開始した。
「いいぞミヒロ!ジュンタを潰せ!」
「サツキちゃんの仇!!」
「ま、待って!意外と強い!」
まさかの才能を発揮するミヒロ。
「次こそ勝つ!」
「負ける気がしないっす」
エイシとユウスケも白熱している。
この後何度プレイしてもユースケに勝てる者はいなかった。
「「く、悔しい」」
項垂れるエイシとジュンタ。
「あ、そろそろ夜ご飯の準備しなきゃ〜」
エイシの背中に身を預けて金髪の頭に小さい顔を乗せるサツキ。
「俺これから仕事だわ」
ぼけーっと若者達を眺めていたカズマが伸びをして立ち上がった。
「今日は休みかと思った。夜ご飯はー?」
「ケータリング食べるからいいや」
「おっけー」
「みんなはー?」
「俺は母ちゃんがメシ用意してるから帰るよ」
とジュンタ。
「う・・・サツキちゃんのご飯・・・食べたいけど私ももうママが用意してると思う」
今まで見たことないほどミヒロは悔しがっている。
「俺食べたい」
ユースケが手を挙げる。
「お前のメンタル鋼かよ・・・」
ジュンタは図々しいユースケに呆れている。
「おけー」
軽く返事をするサツキ。
「いやいや、よりによってユースケかよ」
エイシはやれやれとため息をつく。
「リュウ兄が早番でそろそろ帰ってくると思うよ〜」
ミサキも時計を見る。
「行け!エイシ号!」
サツキを背中に乗せてエイシがどっこいしょと立ち上がる。
「エイ兄は夜ご飯何食べたいー?」
エイシを冷蔵庫まで誘導して2人で相談を始めた。
「豚があるから野菜炒めとか?」
「一昨日も食べなかった?」
「じゃあ生姜焼きにしよーぜ」
「いいな!」
ジュンタとミヒロはあの2人仲良いな〜とほっこり見守っている。
「行ってくるー」
玄関からカズマの声が聞こえてサツキはぴょんとエイシの背中から飛び降り玄関に駆けていく。
「いってらっしゃい!」
「ん」
カズマはサツキの目線まで身をかがめる。
ちゅっ
サツキがカズマの頬にキスをした。
カズマの仕事が辛かった時期に幼いサツキが元気になるようにと始めたのがきっかけで西岡家の習慣になっていた。
ミヒロがブッと鼻血を出した。「が、眼福・・・」
「仕事がんばって!」
笑顔で手を振るサツキの頭をくしゃくしゃと撫でてカズマは出かけて行った。
「ちょ、ミヒロ!鼻血!」
サツキがミヒロに気づいて慌ててティッシュを取りに走る。
一部始終を見ていたジュンタは幼い頃からキスをさせ続けている兄達と熱狂的な西岡家オタクのミヒロに呆れていた。
ユースケは
「あれいいな・・・」
と自分にもやってもらえないかと考えていた。
新キャラのユースケとサツキを書くのが楽しみです。