第000話 出会い
初投稿。
「今月の消失者は33人、だそうです。いついなくなるかわからない、だから周りの人を大切にして生活していきましょう。」
はぁ、またクソッタレなニュースが聞こえてきた。この街では月の終わりに絶対流れるものだ。あらゆる人がこの怪奇現象について調べ、諦めてきた。かく云う私もその一人だ。双子の弟をあの「忌まわしい」現象で無くし、それ以来それを調べてきた。が、あらゆる角度から調べてみたが結局消えた、その事実しかわからなかった。なんの進捗もなかった。どんな理論を展開してもどんな角度から見ても跡形もなく消えた。そうとしか表現できないのだ。
「あいつがいなくなって15年か、、、」
そう今日1月31日は弟が消えてちょうど15年だ。彼がいた、そんなただただ通常のありふれた子ども時代の日常をぼんやりと思い出しながら事務所の窓から見える重い雲を眺めていた。
チャイムが鳴った。おっと、待っていたお客様が来たようだ。
「こんばんは、どうも遅い時間にすみません。仕事の方が忙しいもので。」
そうスーツ姿の男は言い、名刺を差し出していた。
「いえいえ、丁寧にどうも。」
私は名刺を見た。ドラク、彼の名前はそういうらしい。
「こちらへどうぞ。」
そう事務所のソファに誘導し、私は
「早速ですが、ドラクさん、今回の依頼内容について話してもらえませんか?」
と、物腰柔らかに言った。
探偵に頼るなんてことは大抵面倒ごとだ。普通の事件だったらこの街の優秀な警察様に頼れば良い。ここに来る依頼人は大抵何かしら正体のわからない不安を抱えてることが多い。今回の依頼人からはそんなことがはっきりと見て取れた。
「あ、そうですね。えーと、依頼の件、なんですけど私の娘が少し、変、、なんです。まぁその表現するのが難しいもので…」
ドラクは困り顔でそう言った。
「変、、と言われましても…それは具体的にどういうことなのでしょうか。それがわからないとこちらも何を調査しなければならないのかが曖昧なので結論を出すのに時間がかかるかと思います。」
これはかなりの『厄介事』、そんな気がする。
「あ、その…今回探偵さんが科学者とても実績を残している。特に物理学の分野で活躍していらっしゃった。その事を重視して依頼させていただこうと思っています。今から話すこと、ちゃんと聞いてくれますか?」
何か不安な顔をしている。私はこういった顔をする人のことがどうしても見捨てられない。
「ドラクさん、安心してください。ちゃんと聞きます。特にその依頼の『前提』と娘さんの話がどう繋がるかも気になりますしね。」
ドラクは少しほっとしたようで表情が柔らかくなった。
「あっ、ありがとうございます。その…娘の周りに不思議な、いや、『娘が』不思議なことを起こしてるのかもしれません。」
「その、不思議なこととはどんなことですか?」
「あ、これから話すことは本当にあったことで決して見間違いとかじゃない、と思うのですが、あまりにも非現実的なことで、、、。とてもとても不思議なことなのです。昔から、そうきっと産まれてからずっと、娘、いや、名前で呼びましょう。『レイン』の感情が強く動かされると周囲に落ちてる、そうあの時はクレヨンだったかな。それが勝手に動きはじめて絵を描いたり、とか。レインが怒った時は手がつけられなかったものです。軽く家の中で竜巻が起きたりとかあって。でも大人になるにつれてそれは無くなってきてた。ここ7、8年ぐらいはそんな現象は全くなかったんです。ついこの間までは、、、」
物語が本格始動する前のお話です。
大体3回ぐらいで0話は終わらせるつもりなので私の文章の雰囲気を感じてくれると嬉しいです。