言葉との出会い
-私は言葉を持っていなかった。私の心がゆれるたび、その震源地に名前をつけて、目の前の人の為に言葉にしなきゃいけなかった。
―言葉なんて、いらなかった。この世には沢山の服があるね。感情に服を纏わせ、近い色を、手触りを教えなきゃいけなかった。私、ずっと何を着たら良いのか分からなかったの。
-裸で生きていきたかった。言葉が無かったから風の中を泳ぎ、火花の散る色を纏っていた。
-言葉なんて、知らなかった。嘘ばかり紡がれる音なんて、聞きたくなかった。
-言葉は心を縛り、解き放つものだね。私は言葉を持ってしまった。気持ちを知るとき、伝えるとき、言葉に頼ってないかな?言葉ばかり、君に求めていない?
―言葉を持って私は強く、とても、脆くなったのです。