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seventeen。  作者: 花奈よりこ
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ヒーロー



「うん。自分でも調べたし、病院でもちゃんと検査してもらった。間違いないって。私、かなり早い段階で気がついたみたいで。まだホントの初期らしいんだけど」



ドッキ ドッキ ドッキ。


あ、赤ちゃん。


早紀の、赤ちゃんーーーーーー。


な、なんか、なんかすごいっ。


嬉しい!



「タ、タクちゃんはなんて?喜んでた?」


2人は、もうしっかり気持ちも通じ合ったステキな恋人同士だけど。


まだ、結婚はしていない。


でもでも、こんなに嬉しそうで堂々としている早紀を見ていたら。


2人の絆がしっかりしていれば、結婚が先でも、新しい命が先でも、どちらも同じく幸せだって思えた。


「タクちゃん、大喜びだったでしょっ。子ども大好きだもんね!そっか……そっかぁ。早紀、ママになるんだぁ……。すごい、すごいっ。いよいよ結婚だね!おめでとう!」


私は、嬉しさのあまり早紀の手をガッチリ握った。


「ありがとう、かおり。でも。まだタクには言ってないんだ」


「え?」


ケロッと言う早紀。


「な、なんで?まず最初にタクちゃんに言わないとっ。それとも……なんか言いづらい理由でもあるの……?結婚……したくないとか……?」


「ううん。全然。ただ、このことは、いちばん最初にかおりに教えたかったの」


「え……?」


早紀が笑顔で、私の手をそっと優しく包み込んだ。


「妊娠がわかった時ね、嬉しくて。思わず『かおりー!!』って私心の中で叫んでた。ぴょんぴょん飛び跳ねそうになりながら。だから。かおりに最初にお教えたかったの。タクはその次」」


そう笑う早紀。



早紀のあたたかい手のぬくもりが、私の身体中に伝わって。


胸がいっぱいになった。


「早紀・・・ーーー」



ありがとう。


嬉しいよ。


ホントに嬉しいよ……。


「あー。こらこら、泣くなっ。今日はめでたいこと続きのハッピーな日なんだよ?はい、笑って、笑って」


早紀が、私のほっぺたを横にビヨーンと引っ張った。


「ウケる、この顔」


早紀ってば、私の顔で遊んでひとりで爆笑してるの。


「もぉー」


私もその笑い声につられて笑っちゃった。


ひとしきり2人で笑ったあと。


早紀が、優しい瞳で私を見た。



「かおり、私ね。この子が男の子だったら。正吾の名前から一文字もらって、その漢字を使った名前にしようかと思ってるんだ」


「え……?」


思わぬ言葉に、私は早紀を見た。



「正吾が死んで、もう10年経つけどさ。私、正吾のこと今でもずっと大切な人だって思ってる。これから先もずっとね。あの頃かみたいな『好き』……っていう気持ちじゃなくて。なんかもっとそういうの通り越した気持ちっていうか……。うまく言えないけど。もうこの世にはいない人だけど。・・・例えて言うなら。性別を超えた、ひとりの人としての『好き』っていうか。アイツへの想い……っていうかさ……。そういう気持ちがあるんだ」


早紀が、薄暗くなった窓の外を見つめながら、静かにコーヒーを飲んだ。


「……わかる。私も早紀と同じ気持ちだよ……。きっと、これからも時々ふっと彼の笑顔が浮かんできたりすると思う。ずっと、そうやって私達の中で生き続けていくんだと思う」


私の言葉に、早紀が笑顔でうなずいた。


「アイツは、みんなを元気にしてたよね。私やかおりだけじゃなかったと思う。アイツのこと好きだったのって……。なんか、そういうヒーローちっくなヤツだったよね、正吾ってーーー」


「……うん」


「アイツは、みんなを元気にするために生まれてきたのかもね。いっぱい元気もらったしさ。みんなアイツのことが好きだったし。男子も女子もさ」



そうだね。


ホントにそうだったよね。


彼は、みんなに愛されてたよね。


元気で、楽しくて、おもしろくて、少年のような澄んだ目をしていて。


そして、とっても優しくて。


みんな。



あなたのことが、大好きだったんだよーーー。




「ーーーそれでね。あたしの生まれてくる赤ちゃんが、もし男の子だったら。正吾みたいに、人に元気と優しさをいっぱいあげれる人になってほしい……って。そう思ったの。もちろん、女の子でもだけどね」


早紀が、ほほ笑みながら自分のお腹をそっとなでた。


「……うん。すごく、ステキだよ。早紀……」


きっと高林くんも喜んでるよ。


「もちろん、タクも最高の男だから、まずいい子に育つのは間違いないけど」


カラカラと笑う早紀。


「そうだね。きっと2人に似たとってもカワイくていい子が生まれてくるよ」


「うん。今夜は、大発表だ。アイツら驚くだろうなー」


「……アイツら?」


男の人、タクちゃんだけじゃないの……?


「うん。聖也せいやも呼んだの。っていうか、アイツが来たがったの。かおりの誕生日はオレが祝う!って」


「えっ⁉︎」


聖也くんも来るの⁉︎


「あんなにストレートな男も珍しいよね。誰が見てもわかるくらい、かおりに好き好きビーム出しまくりだもん」


「そ、そんな……」


恥ずかしくて、顔が真っ赤。




実は、私ととっても仲良くしてくれてる男の人がひとりいて。


聖也くんっていうんだけど……。


タクちゃんの仲良しの友達なの。


だいぶ前から、みんなでよく遊んだりするようになったんだけど。


早紀のように社交的じゃない私に、とっても気さくに話しかけてくれて。


けっこう好きなモノや感じることとか、意外と似てるところもあったりして。


私自身、聖也くんと一緒にいるのがすごく楽しくて……。


いい人だなぁ……って思ってるの。


聖也くん、明るくて楽しい人なんだけど、すごく真面目で誠実で、優しい人なんだ。


一緒にいて、すごく楽しい。


ちょっと、ドキドキしちゃうけど……。




「ーーーよしっ。そろそろ行こうか。もう準備もだいぶ整った頃だろうし。聖也もかおりが来るのを今か今かと待ちわびてるだろうし」


ニヤッとする早紀。


「べ、別にそんなことないからっ」


「ありますー」


すーぐそうやって冷やかすんだから、早紀は。


「よーし。今日は、とことん飲むぞーっ」


早紀が元気よくこぶしを振り上げた。


「ダ、ダメだよ、早紀っ。お酒はっ」


もう1人の身体じゃないんだから。


私が慌てて言うと。


「わかってるって。ウーロン茶で酔っ払うから大丈夫」


そう言った早紀の笑顔は、とてもキレイで。



本当に……、ママになったんだ・・・ーーーと。



私はひどく感動して。


また、涙が出そうになったんだ。










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