4.速度ベクトル
あれから訓練を続けること三年。つまり俺は三歳になったわけだが、訓練の末俺は速度ベクトルを見えるようにも、掴めるようにもなった。
どうやって訓練したのかというと、ただ速度ベクトルを思い浮かべながら見えるように念じていただけだ。それ以外に方法が思いつかなかったから仕方ない。
しかし結果的にそれは正解だったようで、一歳の頃にはぼんやりとだが速度ベクトルが見えるようになっていた。
二歳の頃にはっきりと見えるようになり、ついに今しっかり掴めるようになったのだ。
もちろんだが、速度ベクトルは地面に立っている時が零ベクトルだ。つまり地球、じゃないか。とにかく、今いる星との相対速度で表されるベクトルのようだ。
これに関しては非常に安心した。基準をどこに取るのかというのをちょっと懸念をしていたのだ。もし太陽(地球で言うところの)が基準だったりすれば果てしなく大きいベクトルになっていただろうからな。
そうならずにこの星が基準であったのは僥倖だ。多分他のベクトルもこの星基準だろう。
さて話を戻そう。速度ベクトルについてだが、引き伸ばすと速度が上がり、押し縮めると下がる。向きを変えれば動く方向が変わる。これが基本だ。
そして素晴らしいことに、速度ベクトルを大きくしても物体の一点に力が働くというわけではなく、一様に働くということが判明した。つまり全く力を感じることなく速度を上げることが出来るのだ。まあ、空気抵抗は受けてしまうが。
とりあえず今はこんなところか。あとは訓練していく中で見つけていけばいいや。
「バーク!ご飯よー!」
「はい、お母さん」
もう昼食の時間か、食卓に向かおう。
左手に重力ベクトルを、右手に速度ベクトルを持ち、さながらラジコンのように移動していく。こういうちょっとした時にも訓練は欠かさない。母の前では見せないが。ああ、でも前世の両親には見せたかったなあ。
「もう来たの?早いわね。さ、ご飯にしましょう」
「はーい」
何やら美味しそうな匂いがする。今日の昼食も楽しみだ。
昼食を食べたら昼寝の時間だ。まだ三歳なので睡眠欲には打ち勝てない。




