1.前世と天界
「え〜と、Aの位置ベクトルとPの位置ベクトルを合成して......あああああ分からん!」
受験真っ只中の秋、俺は苦手なベクトルの範囲の復習を必死になって終わらせているところだ。俺は理科から物理を選択しているのでベクトルをしっかりと復習するのはなおさら大切なのである。
今は、何とかセンターには間に合うかなといったレベルにいる。他の単元は結構出来ると自分でも思うんだけどな。
とはいえそんなに根を詰めても仕方がないので、少し伸びをしよう。そう思って勢いよくガタンと椅子にもたれかかったのがいけなかった。そのまま椅子は傾き俺はそのまま後ろから倒れこんだ。
「おーい、大丈夫ー?」
「う、うう......痛ってぇ。頭からいっちゃったかあ」
「あー、大丈夫そうだね!」
「......え?あなたは⁉︎それに!ここはどこだ⁉︎」
「ここは天界、神のみが存在出来る場所だよ」
「天界......な、なんで俺がそんなとこに?というか俺が今ここに存在してるじゃないか!嘘つき!」
「何事にも例外はあるの!それより、あなたがここにいる理由。それは、あなたが先程死んでしまったからなの!」
「死、死んだ?俺が?」
「はい。頭をゴーンッと打って即死だったね」
「嘘だろ、そんな間抜けな死に方......」
「本当に。ダーウィン賞を狙えるんじゃない?」
「いや、さすがに無理......って!冗談を言ってる場合じゃないですよ!なら俺の今までの受験勉強は」
「無意味、だね。それどころか今までにかかった学習費用を払っていただいた両親に迷惑かけまくりだね」
「ああ、あああ!ごめんなさい母さん父さん!俺はダメな息子です!許してください......。そうだ、神様、あなた神様でしょう!僕を生き返らせてくれませんか!」
「うーん、そうしてあげたいのもやまやまなんだけど、ルール違反なんだよね」
「そ、そこをなんとか!」
「なら異世界転生、ということならいいけど?どうする?」
「異世界転生か......」
異世界転生っていきなり言われてもな。とりあえず転生できるわけだから勉強は無駄にならなくて済む......かな。だけど父さん母さんには会えない。それは逃げじゃないのか?
「なら異世界転生ということで決定だね」
「は?まだ何も言ってませんけど⁉︎」
「無言は了承って知らなかった?」
「いやちょっと待、おい、体が光りだしたぞ!」
「じゃあ気をつけてねー、転生先は剣と魔法の世界だよ!」
「う、うわあああああ!」
受験真っ只中の秋、俺は異世界に転生してしまったようだ。




