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8 なんでか、結婚と婚姻のことについて話をする

K「それで、次はいつの時代にいくんだ」


おお~。Kのほうから続きを促してくれるとは。そうだな~。次はどうしようかな。


私「そうだねえ。次の時代にいきたいところだけどさ、平安時代以降はあまり詳しくないんだよね」

K「詳しくないって、なんでだ?」

私「いや、単純にその時代の資料になりそうなものを読んでいないからよ。大体さ、歴史で恋愛話って習わないよね」

K「……普通はそうだろう」

私「でしょう。まあ、恋愛観はわからないけど、婚姻に関することなら少しはわかるかな」

K「結婚じゃなくて」

私「そう。結婚じゃなくて婚姻。そういえばいつから結婚という言葉が使われるようになったんだっけ?」

K「俺に聞くなよ。それじゃあ、舞の中では結婚と婚姻の定義はどうなっているんだ」


私は「えーと」と、少し考えた。一般的な意味と、昔からのことと両方説明した方がいいかな。


私「えーとねえ、昔から公に夫婦(めおと)になることを、婚姻を結ぶというじゃない」

K「婚姻を結ぶ? ん? それだと家同士が繋がるという、あれか」

私「まあ、間違っちゃいないっちゃ、いないんだけどさ。簡単に言うと法関係で使われるのが『婚姻』なんだよね」

K「法関係? えーと、あれか。婚姻届! そういえば結婚届とはいわないよな」

私「そうなのよ。そうなるとさ、法的に認められていない人たちもひっくるめたものが、結婚になると思わない?」

K「それじゃあ、あれか、昔から云う『内縁』関係だとか、最近の『事実婚』というのもあわせて、『結婚』ということかー」

私「えーと、多分? ちょっと待って。どうせならウィキ先生にお出まし願おうよ」


あやふや知識に自信が持てなくて、私はパソコンを持ってきて起動させた。『結婚』で検索をかけて、ウィキ先生を開く。


私「あっ! やっぱそうみたいね。Kが言った『事実婚』のことが書いてあるねえ」


それだけでなく『他に結婚は「(夫婦の)契り(ちぎり)」ともいう。このほか、結婚の類義語として、一方の側に立った表現として「嫁入り」「輿入れ」「婿入り」などがある。結婚式に焦点をあてた表現として「婚礼」「祝言しゅうげん」などがある。』とも、書いてあった。そのままウィキ先生を読み進めた私たちは、途中でお互いの顔を見合わせることとなった。


私「ねえ」

K「ああ」

私「書いてあるねえ」

K「そうだな」


そう、先ほどまで語っていた内容のことが書かれていたのだ。それは『婚姻概念の範囲、多様な意味』という項目だった。


要約すると『婚姻とは人類の発生以来の人間関係の基礎的形態であり、それが成立するのに必ずしも規範や制度を必要とするものではない。社会的に承認された夫と妻の結合である。ところがこの「夫」や「妻」の資格や役割については、各社会・各時代において独自に意味づけがなされており、比較する社会によっては互いに非常に異なった意味づけを行っているものがある』と、いうことだった。


私「なによ、これ。これじゃあ真面目に語った、私が馬鹿みたいじゃない」

K「いや、普通はなかなか調べようとはしないだろ。ウィキ先生に近い考え方をした、舞がすごいって」

私「なんか、嬉しくないんだけど」(少しむくれている)

K「まあまあ。だけどさ、この時代で役割が違うっていうやつさ、それって舞が言ったとおりだろ。それに具体的なものはウィキ先生には書かれていないじゃないか。舞の話は面白いからさ」


Kの宥めるような言い方に、少しだけ機嫌を直す私。


私「そんなことはないけど……えーと、じゃあもう少し話す?」

K「話せることってあるのか」

私「ん~、日本のことじゃなくて、外国のこととかなら。でも、待って。どうせなら、やっぱり日本のことを先に話しておこうか」

K「それならそれで。でも、どこの時代の話をするんだ」

私「ん~と、平安時代は通い婚でしょ。鎌倉以降の武家の婚姻って、基本は女性が「輿入れ」をしていたわよね」

K「まあ、そうだな。男の跡継ぎがいない場合に「婿入り」していたんだよな」


Kもなんやかやいっても、私の話について来れるくらいの知識があるんだよね。


私「そうなんだよね。ということはさ、江戸時代の大名とかの話にもあったことだけど、武家ってさ婚姻がどうのこうのより、家を存続させることに重きを置いてなかったかな」

K「家の存続? それだと、有名な事例としては松の廊下の刃傷沙汰の浅野家か。浅野内匠頭の切腹から取り潰しになったけど、何とか浅野家を存続させようと画策したんだよな」

私「そうだったね。私の知識はテレビドラマの忠臣蔵からしかないけど、あれって幕府の思惑とかがあって、浅野家を取り潰したんだよねえ。でもさあ、取り潰された方はたまったものじゃないよね。それで仇討ちをしたわけじゃん。幕府は仇討ちを推奨していたでしょ。堂々と『仇討ちしました。あとの判断は幕府に任せます』と言われたんじゃ、苦慮したわけよ」


こう言ったら、何故かKは呆れたような視線を寄越した。


K「十分ドラマだけでわかってんだろ。お前って、ほんとどんな頭してんだよ」

私「さあ? たまたま年末ドラマで見ただけなんだけどな~」

K「まあ、いいけど。えーと、話を戻すと武家では婚姻より家の存続に重きを置いていたんだったか?」

私「あー、そう言ったけど、婚姻も大事だったよね。忠臣蔵の吉良だって、その関係で簡単に処分が出来なかったわけでしょ」

K「……戻すのかよ」

私「いや、事例に出したのはKだよね。私だって実際の吉良の親戚関係は覚えていないけど、無視出来ないものがあったはずよ。仇討ちの情報が幕府に入っていたっていうじゃない。……えーと、確か、赤穂の人たちの鬱憤をどうにかするために……いや、世間の目をわざと赤穂浪士に集めたんだったかな? あの時代って戦国の世が終って、天下泰平になってかなり経ったよね。えーと、えーと、年号は元禄じゃなかった?」

K「……ウィキ先生にお出まし願うか?」


あやふやな記憶にKが提案してきた。なので、またウィキ先生で検索をした。


私「忠臣蔵って、人形浄瑠璃や歌舞伎での通称だったのね。史実的には『赤穂事件』なんだ」

K「えっ? 浅野内匠頭が吉良に斬りかかった理由って、不明なのか? 賄賂に応じなかったから嫌がらせされたって話は、芝居のための創作なのかよ」

私「ん~、これってさ、民衆の本音が入ったんじゃないの。幕府内で賄賂が横行していたのって、どっかから民衆も知ってさ、芝居の中に皮肉として盛り込んだんじゃないの」

K「その可能性は十分あるな。……えーと、俺が悪かったようだけど、話がズレまくってないか」


Kが忠臣蔵の記事を見るのをやめて私に言ってきた。そうだった。忠臣蔵の話がしたかったわけじゃなかった。


私「あはは~、ごめん。ついね。えーと、じゃあさ、江戸時代のことでちょっとショッキングなネタを話しておこうか」

K「ショッキングなネタ? 何を話す気だ。婚姻の話ではないんだな」

私「う~ん、もう婚姻関係はいいかな~。この後って明治以降は戸籍の管理もしっかりしてきて、一夫一妻制になっていくじゃない。確かに婚姻外のこともあるけど、それは別の話になるしさ」

K「まあ、そうか。……それじゃあ、舞は何を言う気なんだよ」

私「えー、ただの雑学だよ。江戸時代だけじゃなくてその前からかもしれないけど……あんまり人が来ないような山奥の集落ってさ、何が一番欲しいと思う?」

K「山奥の集落? えー、それだと米とかか」

私「それはさ、蕎麦とか育てたと思うのよね。そういう食べるものじゃないんだってば」

K「じゃあ……なんだろう。わっかんねえな」


首を捻って考えるKに、私は笑って言った。


私「情報でしょ。今みたいに簡単に手に入らないから、貴重だったはずよ。山奥というか隠れ里みたいなところじゃ、尚更だったでしょうね」

K「それって、当たり前のことだろ。どこが雑学だよ」

私「うふふっ。甘いわね、K。普通さ、そういう貴重なものを教えてもらったら、対価を払うわよね」

K「まあ、そうだろうな。ところで、その情報主って誰なんだ」

私「たまたま来た旅人か、商人でしょうね」

K「商人ならそこに持っていけば、買ってくれるとわかっているから、また来るってわけか」

私「だから、甘いってば。対価は女性よ」


たっぷり10秒くらい経ってからKは言った。


K「……はあっ?」


うん。これは次に話すのは出生率などのなんやかんだのことだな。


と、決めたのでした。


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