3 柴門漫画流アラフォー女性のあれな話
私「Kはさ、アラフォー女性やアラフィフ女性が恋愛をすることについて、どう思っているの」
K「別に恋愛するのに年齢は関係ないだろう。ただ、その人の立場が妻であるのなら、しないでほしいとは思うよ」
私「えっ? Kって、恋愛肯定派なの」
K「舞、忘れているようだけど、俺も独身だから。独身同士なら恋愛はありだろう」
私「あっ。……えへっ……つい忘れちゃうんだよね」
Kから胡乱な視線が向けられました。だけどね、Kのこれまでの様子を見ていると、この10年ほどは恋愛をする気が無いように見えていました。だから、この返答は意外に思ったのよね。
K「それで、そんなことを言うってことは、まだ話が続くんだな」
私「まあね。どうせなら柴門先生の作品の部分も話さない?」
K「……いいけどさ……だけど、この連載は読んでないと言ってなかったか」
私「えーと……」
目を泳がせてしまったら、Kはジトーとした目つきで私のことを見つめてきました。
K「実際は読んでいるわけだ」
私「違うから。たまたま連載の始まりの時に立ち読みをして、それから少し追いかけただけだから」
K「それなら素直に読んでいると言えばいいものを」
私「だから違うってば。毎週追いかけてなかったもの。どちらかというと読みたくないタイトルだったから」
K「読みたくないって、珍しいな。舞ならなんでも読むと思っていたけど」
私「ん~、なんかさ柴門先生の作品は私の肌に合わないんだよね。先生の代表作でドラマになった『東京ラブストーリー』も『あすなろ白書』も、読んだことはないしドラマも観ていなかったから」
K「そういや舞って、ドラマはあまり観ないんだったか」
私「まあ、そうね。観るのってコメディ系が多いかな。あ~、たまに再放送で観ることがあるくらい? ……ねえ、話がずれているんだけど」
K「舞がすぐにばれる嘘をつくから」
私「嘘ではないってば。本当に読む気はなかったのよ。でも、一話目を読んだら少し続きが気になっただけなのよ」
そう。本当に読むつもりはなかったのだけど、主人公の1人に起こったことが気になって、3回ほど続きを追いかけただけでした。それを少し後悔したのだけどね。
K「珍しいな。そんなに嫌なシーンでもあったのか」
私「嫌っていうより、私には理解しにくい話だと思っただけよ。柴門先生はこの『恋する母たち』の主人公を3人にしたわけでしょ。それが女性の欲望にもいろいろなバリエーションがあるからってことが理由で。多様性を表現したかったとも言っているじゃない。1人にしぼってしまうと、考え方が偏るし、不倫についての考え方にも個人差があるから、3人の背景もそれぞれ違うようにしたわけじゃない。私は不倫は『するな派』だから、彼女たちが不倫をしようとするのなら、もちろん否定するけどさ、背景次第では気持ちが『よろめく』のも仕方がないと思うわけよ」
K「よろめくのは仕方がないって……。舞、本当は不倫に興味があるんだろう」
私はハア~と息を吐き出しました。
私「だから、違うってば。この作品の最初のところに関係があるのよ! ほら、ここを見て! 『夫の浮気相手の夫と関係を持った』とあるでしょう。この女性は夫が浮気をしていたことを、その浮気相手の夫から聞かされるまで知らなかったの。それも二人が失踪をしてしまったから彼が現れたのよ。妻の行方を捜して妻の浮気相手の妻に辿り着いたのね。女性にとっては寝耳に水よ。夫が突然いなくなって、心配をしていたところにこれだったのよ。最初は確か男の方は、自分が味わった思いを何も知らない女性に知らしめて、意趣返しのつもりだったはず。それが女性の様子に思わずキスをしてしまったの。それが傷の舐めあいなのか、慰めからなのかはわからないけど、一つ言えるのは、行き場のないやるせない思いをどうにかしたかったのよ。一度だけ肉体関係を持って、ホテルを出たらそれっきり会ってなかった。けど、10年が経って二人の行方が分かるかもしれないと、再会を果たしたのよ。確かに肉体関係はあったけど一度だけだし、再会まで会っていなかった。これって不倫って言えると思う」
K「……確かに背景を知らなきゃ不倫だよな。……というか、結局読んでんだろ。舞は」
私「たまたま立ち読みした時に、再会をした話だっただけよ」
K「お前って……気になるのなら素直に読めばいいじゃないか」
私「いや、だからさ、気になっているのはその女性の話だけで、セレブ妻の話もキャリア妻の話も興味ないんだって」
ハア~とため息を吐き出したK。
K「じゃあ、読むのをやめれば」
私「そうだね。この女性が失踪した夫とどう決着つけるのかを読んだらやめるよ」
そう言ったらまた息を吐き出して、肩の力を抜くKの姿が目に入った。そんなにもこの話は嫌なことだったのだろうか。でもまだもう二つ。Kに訊いてみたいことがある。ので、聞いてみることにしました。
私「ねえ、K。一線ってどこだと思う?」
K「なっ! まだ、続けるのかよ」
私「もう少しだけね。それでねえ、石田氏のこの言葉ってひどくない? 『男はセックス=一線でいいと思うけど、女性は気持ちが動いたらそこで終わり』ってやつ。体の関係がなくてもアウトだなんてさ。これじゃあ世の女性たちは精神的に不倫しまくりってことじゃない!」
K「……それを俺に聞くなよ。……というか、舞のほうが暴論だろ。極端に考え過ぎだ」
私「だって、気持ちが動いただけでアウトはひどいじゃない」
K「いや、これはその前のセレブ妻の行動に言っているだろう。旅館に泊まって一緒のお風呂に入ったって書いてあるだろ。肉体関係がなくても気持ち的に一線を越えていると、言っているだろうが。ちゃんと前後を把握してから言えよ」
私「あれ? そうだっけ? ……本当だ。セレブ妻の時は読んでなかったから、このエピソードは知らないや」
K「お前って……」
私「あ、えっと、ごめん。でも、このセレブ妻の気持ちは少しわかるよ。夫が『女房なんかとセックスできるか』と話しているのを聞いちゃったんでしょ。これって女としての自信を無くすよね。そこにどうやって知り合ったのか知らないけど、直球で気持ちを伝えてくる人がいたら『よろめき』たくもなるものよ」
K「……お~い、舞。不倫を否定派じゃなかったのか」
私「え~? いや、違うでしょ。セレブ妻は踏みとどまったじゃない。でもな~、私も女として扱ってもらったら『よろめく』かもしれないな~」
K「おい!(怒)」
私「冗談だってば。それからもう一つ。柴門先生の言葉で、これはわかるというものがあるんだよね」
K「なんか嫌な予感がするんだけど」
私「失礼な。この言葉はある意味実感したことでもあるんだけどさ」
K「もっと、やな予感が」
私「いいから、聞きなさいよ。『ある年齢までは子育てに必死で恋どころではない。35才から45才くらいが魔の時期。ちょっとしたアクションで「恋愛」の蓋が開いてしまう』とあるでしょう。これって確かにそうだったのよ。子供が生まれてからべったりだったのが、子供が幼稚園に入ることで自分の時間が持てるようになったのね。小学校に入るともっと時間が出来た。中学、高校もそう。時間が出来ると暇を持て余す時があるのよ。まあ私はその空いた時間を、役員をやることやお菓子を作ったり本を読むことに回したけどね。でもそういう趣味がない人は「恋愛」に気持ちが傾くこともあるんじゃないかと思ったのよ」
そう答えたら何故か安心したような顔をするK。
K「お前がそんなやつでよかったよ」
私「え~、そう? でも、一番の出会いはここ「なろう」よね。それまでなんとなく書いていたものを、ちゃんと作品として投稿するようになって、世界は広がったもの。交流する人も増えて、自分じゃ書けない作品に出合えてさ。こんなに毎日が充実するとは思わなかったわ」
K「はいはい。よかったな」
少し投げやりにKは言いました。調子にのって男のKに、話し過ぎたかと少し思いました。でも、つい横に逸れたけど、最初に思ったことはこれではないので、次にはその話をしたいと思います。