12 拷問&処刑方法の話・・・なんでこっちに話を進めたのだろう?
K「うげっ! なんだこれ」
拷問道具の使い方やその方法が書かれたページを見て、頬を引きつらせるK。そして胡乱な視線を私へと向けてきた。
私「何よ」
K「舞って、残虐志向あり?」
私「んなわけあるかい。これはたまたま調べて行き当たっただけよ」
私の言葉に首を捻るK。
K「調べたって、拷問シーンを書くために?」
私「違う、違う。もっと前の話。アニメでね、拷問シーンがある作品のことを知ったからなのよ」
頭にハテナマークを浮かべて、目線で問いかけられましたよ。
私「えーとさ、私達が中学生の頃にアニメ雑誌がいろいろ創刊されたんだけど、覚えてる?」
K「その頃はあんまり興味がなかったから。……というか、俺はオタクじゃないから」
私「Kのことをオタクだと思ってないからさ。オタクというのはKの大学の友達を言うんでしょ。あー、ガンダムやヤマトで盛り上がったのが懐かしい。……じゃなくてね、今は残っていない、廃刊されたアニメ雑誌がさ、その頃にいくつも出てきていたのよ。私もその中のいくつかを読んでいたのね。もちろん購入もしてたし。で、どの雑誌か忘れたけど、海外のアニメの紹介コーナーがあって、それですんごく記憶に残ったものがあったわけ」
K「それが拷問シーンというわけか」
私「いや、ちょっと違う。えーと、覚えていることを言うと、それはフランスで制作されたアニメで、舞台は魔女狩りが行われていたころの話だったわね。昔って無茶苦茶な理由で魔女を狩っていてさ」
K「無茶苦茶な理由?」
私「まあ、今のなろうの異世界物に通じるものもあるんだけど、ほら、疫病が流行ったのは魔女がばらまいたとか、ある家の主人が死んだのは魔女の呪いだとかってやつでさ、とにかく本当は人が起こしたことではないものを、理由がわからない不安の解消に、魔女に仕立て上げて冤罪を着せて、不安不満の解消のために処刑をしていたという、そういうやつ」
K「あー、それな。民衆に石を投げさせるとかいうやつ」
私「そう、それ。で、その作品の内容は綺麗な村娘が、有力者の娘に嫉妬から魔女と密告されて拷問を受けるというやつだったんだ。その載っていたカットに木材の上に座らされて苦悶の表情を浮かべる女性というのがあってねえ。そこで疑問が湧いたわけ。説明文を読んだら、三角の木材の上に後ろ手に縛られて座らされて足には重りをつけられていたっていうじゃない。昔の拷問ってひどいなと思ったのよねえ。そうしたら、ちょうどベルばらのアニメ化で、友達からベルばらを全巻借りることになって、また衝撃を受けてさ」
K「ベルばら? ああ、フランス革命を舞台にした話だったな」
私「そう。その外伝に鉄の処女からヒントを得たという、からくり人形の話が出てきてね。それでたまたま市立図書館へ行く機会があったから、調べてみたのよ。今はパソコンでキーワード設定すればすぐに画像まで出てくるけど、あのころは図書館にでも行かないとそういうことってわからなかったじゃない」
K「それにしたって、よく見つけられたな」
私「そう? 意外と簡単だったわよ」
中世ヨーロッパの史実の本の目次で拷問の言葉を探したら……見つけられたんだよね。引きの強さとでもいうのかな? まあ、今となってはどうでもいいか。
K「それで、そのフランスアニメの結末は書いてあったのか」
私「気になるんだ」
K「そりゃあ、まあ。冤罪だというのなら、助かったんだろ」
私「そんなことあるわけないじゃない。それだったら、私は忘れてしまったと思うもの」
K「えっ、それじゃあ」
私「魔女の処刑は火あぶりよ。その女性は火にかけられて亡くなったの。えーと、嫉妬した有力者の娘というのは、近くの町の町長の息子に惚れていて、その息子が村娘を好きになったのが許せなかったの。だから魔女だと密告した。教会も腐っているなと思ったのが、密告者の嫉妬によるものだってわかっていたのに、村娘を捕らえたこと。村娘の美貌に邪な考えを持った聖職者は村娘に取引を持ちかけたのよ。罪に問わない代わりに愛人となれと言ったのね。娘はきっぱりと断ったから、拷問にかけられることになってさ。最初は軽いものだったのだけどね。だってさ、村娘を抱く時に、醜い傷を残したくないじゃない。でも娘は拒み続けて、ついには三角木馬の刑にまでなったんだよ」
K「その刑罰はそんなに重いのか」
私「重いというか、この刑罰を受けてその後釈放されたとしても、普通の生活は送れなかったんと思う。特に女性はもう子供はもてなかったんじゃないかと思うし」
K「それほどか」
私「ただ座らせられたわけではなくて、足に重しをつけられたのよ。そうしたら、皮膚が裂けるわよね」
想像したのか、顔色が悪くなるK。
私「それとさ、火あぶりにする時の台詞もひどいよね」
K「台詞?」
私「教会の建前として『魔女ではない場合は、火に焼かれることはない』だって。なんかさ、心の正しいものは神様が守ってくれるとか言っていたらしいじゃん。焼け死なないほうが問題だと思うんだけどねえ。まあ、教会も定期的に魔女を狩らないといけなかったようだから、冤罪とわかっていても火あぶりの刑にしたみたいだしねえ。本当、そういう時代に生まれなくて良かったと思うわね」
すっかり顔色が悪くなったK。……だけど、何かが引っかかったのかしばし考えたのち、ハッとした顔をして私のことを見てきた。
K「舞、お前の中では、これが一番ひどい拷問や処刑方法ではないんだよな」
私「そうだね。私が知っている中で一番ひどいと思うのは、生きたまま虫に食われるというやつだと思うかな」
K「もしかして、『蠱毒』って本当に行われていたのか」
私「こどく? えーと、コドク、こどく? なんだっけ?」
Kはパソコンを引き寄せて『蠱毒』と打ち込んで検索にかけた。
K「ほら、これ」
私「全然違うってば。これは蟲同士を食わせ合って、最後に残った蟲を使った毒なんでしょ。私が言いたいのは、これよ、これ」
内容を読んだ私はパソコンを奪い返した。拷問方法と打ち込んでそこから目当ての拷問の項目を見つけ出す。虫……は、虫でも蠅を使った拷問のやり方にまた顔色を悪くするK。
(えー、あまりにグロいので、詳細については割愛させていただきます)
K「ゲッ……まじか、これ」
私「ね。これならまだ、八つ裂きの刑のほうがマシだと思わない」
K「思う、思うけど……本当にこんなことが行われていたのか」
私「いや、疑ってもさ、ここに17日間耐えた……いや、耐えたんじゃなくて17日後に死ぬことができたってあるじゃない。本当にこれだけは嫌だわ」
ハア~と期せずしてため息が重なった。
K「お前さ、他の拷問や処刑方法って、すぐに浮かぶもんってあるのか」
私「そうねえ、まあ、いくつかは。割いた竹で背中を叩くとか、正座の上に石責めとか。あと、市中引き回しの上獄門だったっけ?」
K「……急に江戸時代になるなよ」
私「仕方がないじゃん。小学生の頃から時代劇を見ていれば、刷り込まれるって」
K「うちは見ていなかったぞ」
私「おばあちゃんがいたからね、うちは。……というかさ、そろそろいいにしない」
K「舞が俺にわからせてやると、言ったんだろ」
私「はいはい、私が悪かったってば。一応まとめとしては、昔の拷問は長引かせて苦痛を与えるものが多かった。処刑の方法も罪人が苦しむのを見世物にしていた。これは国が違っても同じ。……これでいい?」
K「ざっくりまとめたな」(苦笑)