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10 ついでにハーレムについて語って・・・の前に、スペイン王家のことをちょっこっとね!

Kは私が話した男の人が亡くなりやすい理由に、一応納得してくれたようだ。


私「あっ、そうそう、補足じゃないけどさ、昔って男の子が生まれると性別を偽って女の子として育てるってあったでしょう」

K「あー、あったみたいだな、そういうことが。里見八犬伝の中の信乃だったか?」

私「里見八犬伝の犬塚信乃は違ったと思うけど」

K「……だから、どうして名前がスラスラ出てくんだよ、お前は」

私「一応好きで読んだし、人形劇でやったじゃない」

K「それって、あれか? 夕方にやっていたNHK教育の」

私「そう、それ! それで気になって高校生の頃に読もうとしたんだけど、その当時は読めなかったんだよね」

K「舞にしちゃあ、珍しいな。聖書も読んでいただろう」


Kの指摘に思わず視線をさまよわせる私。


私「えーと、聖書もさ、読んだことはあるけど、あれもすべて読んでないのよね」

K「それにしちゃあ、いろいろ詳しすぎだろ。……って、すまん。横に逸れたな」

私「そうだね。じゃあ、この話はまた別の時にしようか」


私がそう言ったら、Kが「ちょっと待った」と言った。


K「さっきまでの話でさ、女性の方が余るというのは、昔からなんだろ。それじゃあ婚姻できない女性が出来たんじゃないのか」

私「だからさ、平安時代の通い婚なんてもってこいだったんでしょ」

K「あれが? なんで」


今度はなんでと来たか。


私「えーとさ、この頃の内裏や江戸時代の大奥って、一種のハーレムよね」

K「ハーレムといえば、ハーレムか?」

私「それってさ、天皇や将軍の子供を残すっていうことも大きかったと思うけど、身分の高い女性の救済の意味もあったと思わない」

K「救済ねえ。舞花はどうしてそう思うんだ」


Kは呆れ……ではなくて、訝しんで……いや、単純に疑問に思ったのかもしれない。少し不思議そうに訊いてきた。けど、表情は少し嫌悪感を滲ませていた。

私との付き合いが長いから、話題がコロコロ変わることに慣れている筈なんだけどな~、と思う。

それともハーレムなんて言葉が出たことが嫌なのだろうか?

そういえばKはハーレムものはあまり読んでいなかった気がする。


私「たしか……イギリス辺りだったと思うけど、時代も……12世紀くらいだったかな。この頃って貴族の男性って妾を持つことを推奨されていたのよ」

K「妾の推奨? 貴族だったら当たり前の事実だろ」


Kがもっと不思議そうに聞いてきた。


私「いや、だからさ、貴族の家の血を残す以外にも、理由があるんだってば」

K「理由? どんな?」

私「逆になるんだけどさ、貴族の血を流出させないために妾になることを推奨したのよ」

K「貴族の血の流出?」


解せないと、顔に書いてあった。


私「えーとねえ、ヨーロッパの王家って、あっちこっちで婚姻を結んでいたから、自国の王位継承権だけでなく、よその国の王位継承権を持っていたりしたよね」

K「それが?」

私「だからさ、たまにある話だけど、ご落胤みたいなのに出てこられると、困るわけなのよ。これがさ、男が他所に作った子供ならまだいいけど、女性が駆け落ちとかしてどこぞの馬の骨の子供を作られる方が、困ったみたいね」

K「どっちもその家の血筋の子供だろ。……ああ、そういや男尊女卑の風潮が強かったか」


私が答える前にKは答えを見つけたようだ。


私「男尊女卑は置いておいても、家を継ぐのは圧倒的に男性が多かったでしょ。女性しか跡継ぎがいない場合、親類の男性を跡継ぎに指名したりしてさ。あの頃の価値観がそうだったんだから、仕方がないよ。でもさ、イングランドやスコットランドなんかは女王がいるでしょう。そういえばスペインはカスティーリャの女王イサベルとアラゴンの王子フェルナンドが結婚して統合されたのよね」

K「……また、(話が)飛んだぞ」

私「あら、ごめん」

K「話を戻す前に質問! どうしてイングランドからスペインのことまで出てきたのか」

私「えーと、世界史で習ったことや、私が読んだそこいら辺の時代の話を書いた漫画や小説の内容を思い出していたら、カスティーリャとアラゴンの統合の話を思い出したんだよね」

K「……本当に無駄な記憶力しているよな、お前」

私「別にいいでしょ。まあ、そういうわけで、貴族の女性の子供が男の子だった場合、継承権があったって話よ。……ところでさ、どっかの時代の王位継承権の話でもする?」

K「それは別にいらん。……けど、分かる奴はいるのか」

私「う~んと、そうだねえ、やっぱ『フェリペ二世』かな」

K「名前からするとスペインか?」

私「そうだよ」

K「なんでそいつ?」

私「だって『サラディナーサ』に出てきたんだもん」

K「もんって……。やっぱ、漫画だよな。それ」

私「あたり! 河惣益巳先生の作品だよ! 漫画の内容を語りたいところだけど、今は関係ないから話すのはやめておくね」


そういったら、何故か驚いたように見つめてくるK。


私「何よ」

K「珍しいな。やめろというまで、語りつくす舞がやめるなんて」

私「だって、さすがに脱線し過ぎのように思うからね。で! フェリペ二世は神聖ローマ帝国の皇帝カール五世とポルトガル王女イサベルとの間に生まれたのね。カール五世はスペイン王にして神聖ローマ皇帝に選出された人で、スペイン名はカルロス一世。でさ、ヨーロッパ以外にも広大な領土を持っていて、『太陽の沈まない国』と形容された人よ」

K「……舞、お前って世界史専攻してないよな」

私「していなくたって、気になれば調べるでしょう。名前や年号だけだといまいち実感がわかないんだもん」

K「実感って何の?」

私「太陽の沈まない国っていうくらい繁栄していたっていうけど、その根底にあるものは何かとかさ。大体西回りの航路でアジアに行こうとしたことが、アメリカ大陸の発見になったわけじゃない。そのおかげで植民地が増えてさ~。コロンブス様様だよねー(怒)」

K「……なんか、棘がいっぱいある気がするけど?」

私「べっつに~、貴重な遺跡を壊しまくってくれたとか、いろいろ略奪したとか、文明がわからなくなったとか、言わないけどさ~」

K「それ……言ってるだろ。ほんと、お前は歴史が好きだよな~」


Kはため息交じりに、呆れたように言った。


私「そりゃあ、そうでしょう。ピラミッドや万里の長城みたいに、宇宙からでも見ることができるものが、今みたいな重機がない時に作られたのよ。それだけでもすごいじゃない。そんな文明が他にもあったかもしれないのに、研究する前に破壊だなんてさ。昔の人って本当に~!!!」


つい、ボルテージが上がりかけたら、Kが肩をポンポンと叩いてきた。


K「余計なほうに話を振って悪かったから、落ち着け。それで、フェリペ二世がなんだって?」

私「えーと、私もごめん。フェリペ二世はさ、父親のことでもわかるように肩書がいくつかあったのよ。えーと、ちょっと待って。ウィキ先生にお出まし願うから。……ほら。一般的にはスペイン王だけど、カスティーリャ王でレオン王でもあり、アラゴン王となっているでしょう。統合された後でも、カスティーリャとアラゴンの王様だったんだー。……えーと、それから他にも別号として、シチリア王、一時期だけどポルトガル王、ナポリ王、ネーデルランド統治者に、ミラノ公……ああ、ほら! イングランド王でもあったじゃん。このフェリペ二世は四度結婚しているんだけど、二度目がイングランド王国のメアリー一世とで、共同統治者として『イングランド王フィリップ一世』を名乗っているじゃない。それにメアリー一世はフェリペ二世と親戚だったはず。……って、えっ? 父親と従兄妹……だけでなくて、母親とも従姉妹。えっ? 11歳年上~!」

K「おい、舞。お前が先に言っただろう。近い血縁関係の結婚なんて当たり前だろ」

私「……いや、まあ、そうなんだけど」

K「じゃあ、11歳年上か?」

私「それも、政略結婚ならありだ……よねえ。ハア~」

K「だから、分かってんならなんでため息を吐くんだ?」

私「いや、だってさ、このメアリー一世はエリザベス一世の異母姉だったよねー。あー、やだやだ。愛憎渦巻く世界って」

K「だけど、それが王家ってもんじゃないのか?」

私「そうだけどさ、この系図(ウィキ先生のフェリペ二世のページ)を見たって、ヨーロッパの王室の血縁関係だらけなのは、一目瞭然でしょう。これにさ、有力貴族家までいれたら、ぐっちゃぐっちゃじゃない」


ぐあ~、と唸る私に、冷静なKの声が聞こえてきた。


K「舞花がヨーロッパの王家に思うところがあるのは分かったけど、貴族女性の救済の話から離れ過ぎだろう」

私「あっ!」


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― 新着の感想 ―
[良い点] あれ、わりと良いところで止まってる。 続き……|д゜)チラッ
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