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ミラーコーリング  作者: ザ・ディル
1章 コーリングONE
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7話 閃光一閃


 梶原(かじわら)とシミラは今現在、絶体絶命の状況に陥っていた。

 『鏡の異物』は二人で倒せる。しかし、その数が増えれば倒せない。特に相性が悪ければ、絶対に倒すことは不可能だ。

 カマドウマ――バッタの仲間であるから、跳躍が可能。さらには度が過ぎるほどの膂力によって敵を蹂躙する、バッタの類いにおいて類い稀なる強さをもつ。

 

 「どちらを優先して戦いますか、梶原?」

 

 「…………」

 

 あまりの出来事に声を発することを放棄してしまう。

 巨大な虫が、二体現れる。それは脅威的で強大。

 一体ならまだしも、二体ではあればそれは絶望の淵に立たされたと同義。

 故に梶原は恐怖で膝が震えていた。

 

 「――モード:バーサークヒーリング。ワタシはエネミーネーム、カマドウマを相手します」

 

 「――!?」

 

 シミラは独断で動き出す。走り出す。駆ける。

 カマドウマに肉薄――それも人間の速さではない。人間を超越する速さで地を駆けていた。

 カマドウマはそれに反応はするが追い付けるスピードがなく、小回りが効かない。それは巨大さ故の弱点でもある。

 カマドウマの攻撃を掻い潜りさらに肉薄。そして、シミラは右手でカマドウマに触れ――、

 

 「エナジードレイン!」

 

 青紫の光を発して、カマドウマの体力を、膂力を奪う。

 

 「梶原! 今のウチに――!」

 

 後ろを振り向き梶原に指示を与えるが、

 

 梶原という人間は、さきほどの場所――クモの(そば)にはいなかった。

 そのクモはと言えば、鏡や宝石を纏わされ、行動が制限されていた。

 

 そして彼はシミラの傍にいた。

 

 「喰らえっ!」

 

 梶原は能力――造形操作によって辺りにある物体、つまりは宝石や鏡、水晶を自由に操り思想を現実に移行させる。

 カマドウマ周辺の、地の物体は波を打ち、コンマ一も経たずに千変万化の彩りを持ち、形状も変化を目まぐるしくする。

 造形操作によって宝石が、鏡を粉々にした金属が、水晶の欠片たちがカマドウマの足を、脚を縛り上げて膂力を封じる。

 

 さらに追い討ち。

 カマドウマから幾ばくか離れたところから、物体を巻き上げ、先端を細くした一本槍のような物を造形する。

 先端を細くする=圧力が強くなる

 それにより、カマドウマの身体を貫き易くなる。

 そして、そんなものを無数に造る。

 

 梶原は無数に造り上げたものに命令した――カマドウマを貫けと。

 

 人間で例えれば、無数の針が身体に突き刺さると同義。そんなものを受ければ一溜まりもない。もっとも、当たればだが。

 

 

「なっ――!?」 

 

 造形操作が乱れた。

 当然、梶原が指示して攻撃を止めたわけではない。

 

 クモの糸が、梶原を縛り上げていた。

 クモは蜘蛛ではない。それは現実の蜘蛛とかけ離れているからだ。

 蜘蛛はいきなり糸を対象の獲物に放つことはしない。糸はあくまでも巣を作るための場合が多い。

 

 人のイメージは、人それぞれ異なるイメージを僅かながらももっている。

 蜘蛛が糸を吐き出して、獲物を捕らえるというイメージが、ある程度現実に思われていることがある。

 実際は、蜘蛛の巣によって動きを制限されたところから、糸を吐き出して相手の動きを封じてから食べる。

 

 クモは、現実の蜘蛛の習性とは異なるのだ。幻想の部分が、ミラーワールドでは現実になりえる、成り変わるのだ。

 

 クモは、梶原を糸で雁字搦めにしていく。

 

 「今助けます、梶原――っぁ!?」

 

 シミラは助けに行くが、それは拒まれる。

 

 カマドウマがそんな行為を見逃すわけがないのだ。

 カマドウマの体重が、シミラにのしかかる。

 身体は煌めきをもつ物体でしか成り立っていないはずなので、血はでない。されど、血は出ないだけなのだ。

 痛みはある。痛覚は、ある。

 

 『鏡の異物』は巨大で、さらにもともと膂力の強いカマドウマがのしかかり、捕食しようとすれば、シミラは壊れる。バラバラになる。それは、あってはならない。

 

 シミラの状況、情況を理解して梶原は、糸に巻かれながらも能力による攻撃を仕掛けようとするが――、

 

 「なっ――!?」

 

 糸によって、顔が隠された。

 これでは正確に攻撃を当てられないどころか、能力発動のための範囲を絞れず、能力を発動することができないと梶原は思ってしまった。

 

 「っ゛――」

 

 か弱く、悲痛な悲鳴が木霊する。

 カマドウマは蹂躙する、彼女を。

 

 助けられない、彼女を。

 助からない、自分。

 どうすることもできず、最悪な流れを乱せず殺される。

 

 「くそっ!」

 

 梶原の声は木霊する。

 クモの糸は、口だけはなくて、それは梶原を舐め腐っていることを赤裸々に語っていた。

 クモは梶原を滑稽に思っていた。嘲るように笑っている、そんな感覚を受けていた。

 

 そして、梶原とシミラはここで死――、

 

 「アロー、属性:グレン!」

 

 猛火の矢は、カマドウマを、クモを貫いた。

 そこから発火されて、もがきだすクモとカマドウマ。

 しかし、このままでは二人も火の巻き添えを喰らう。だから、

 

 「フェイバリット! あの二人を!」

 

 「了解! 今から助けるワ! テレポート!」

 

 テレポートで、二人は彼女たちのもとに移動された。

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