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ミラーコーリング  作者: ザ・ディル
1章 コーリングONE
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4話 無恋情な特別


 鏡の世界――ミラーワールド。

 そこは、鏡だけでなく、宝石や水晶、煌めきをもつ物や者が多くある場所。

 

 その中の、名もなき空間で梶原(かじわら)はシミラという少女に『特別な存在』と言った。

 それは、シミラにある誤認をさせてしまう。

 

 「特別な存在……それは、ワタシのことが好き、という意味でしょうか?」

 

 「へっ?」

 

 「特別な存在というのは、人に恋をしていると同義ではないのですか?」

 

 梶原は特別な存在という意味を恋として言ったわけではない。だから、

 

 「いやっ、そうじゃなくて……。あれだ……違う場合もあるだろ?」

 

 「違う場合……? 違う場合とは例えばどのようなことですか?」

 

 恋だということを否定したのはいいが、少し面倒な状況になった。

 この場合なんて答えればいいのか、なんて言えばいいのか梶原は考えてもいなかった。

 

 そして、数秒経って出た答えは、

 

 「家族……とかか?」

 

 梶原自身、なぜ家族が特別な存在と言ったのかよく分からなかった。

 しかし、彼の深層心理を探せば、その理由は明らかだ。

 梶原はニートで、しかし親から特に怒られたことはなかった。親は学校に登校できるようになったら声をかけてと、そう言っただけ。

 普通の親ならそうするだろうか? いやしない。学校に行かないことが心配で、普通の親なら学校に行かせようとする。しかし梶原の親はそうはしない。

 なぜか? 罪悪感があるからだ。

 なぜか? 梶原の親は、梶原の(めい)を◯◯にしてしまったからだ。それで『――』が起こった。

 

 しかし、それでも、それを差し引いても親が怒らないことに、特別な存在、という意義を見いだしていたのかもしれない。

 

 「家族とは、特別な存在なのですか?」

 

 「……あぁ、特別だ。もしかしたら彼氏や彼女なんかよりも特別……かもしれない」

 

 「オー、ソーデスカ。家族は特別な存在……認識しました」

 

 さらに、シミラは宝石のような青緑の髪を弄りながら話を変える。

 

 「そろそろ、ワタシの能力についても知っていた方が良さそうですよね 」

 

 「お前も、能力があるのか?」

 

 「エエ。しかし、梶原ほど特別なものではありません」

 

 「そうなのか。それで、シミラの能力ってのはなんだ?」

 

 「回答します。

 一つはヒール。もう一つがバーサークヒーリングです」

 

 それを聞き、梶原は皺を寄せ訝しげな表情になる。

 その理由は、

 

 「シミラ、ヒールは分かるがバーサークヒーリングってなんだ? ヒーラーなのに敵陣に突っ込む(やまい)かなんかなのか?」

 

 「――? 意味を理解できませんでしたが、バーサークヒーリングはエナジードレインと酷似していると、ワタシのデータにあります」

 

 「なるほどな。シミラの能力はHPの回復。そして相手のHPを奪う――それも物理的にではなくて、相手に触れるだけでいいってことだな?」

 

 「ザッツライトです」

 

 「――? 急にキャラ変わった?」

 

 梶原の突っ込み、というか問いかけにシミラは特段おかしな表情もせずに答える。

 

 「今までのデータにあった会話から取り出しただけですが……何か?」

 

 「それなら別にいいんだが、いやよくはないけど……」

 

 そんなあやふやな返事をする梶原だが、シミラはそんなことは特に気にもしないような表情、つまりは無表情をしていた。

 相手が無表情だっため、梶原は黙ってしまった。

 それをどのように受け取ったのか分からないが、シミラが話し出す。

 

 「質問等は、以上でよろしいでしょうか?」

 

 「質問? まぁ、今のところはないけど……」

 

 「これからの予定で、梶原には戦闘を行ってほしいとワタシは考えています」

 

 「戦闘……か……。確か、『鏡の異物』ってやつらを一万倒せばいいんだよな?」

 

 「イエス。アッ……その前にひとつ。ミラーワールドではチキューとかなり異なる部分があるので説明します」

 

 あることを話し忘れたことに気づいたシミラは口を隠しながら、そう言った。

 

 「地球とかなり異なる部分……ってのはなんだ?」

 

 梶原は、特段表情も変えずに聞く。

 そして、シミラは口を開き言った。

 

 

 「ミラーワールドの世界では、睡眠、食欲が必要ありません。ミラーワールドの世界ではそんなものが存在しません」

 

 「はっ?」

 

 思わず、呆けた顔で、そう言うしかできない梶原だった。

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