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ミラーコーリング  作者: ザ・ディル
2章 コーリングTWO
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15話 幸せのコール


 「『真実の鏡』、お前いま、何て言った?」

 

 「合格ですよ、二人とも。貴方たち二人の精神は、地球に戻っていいランクにまで昇華しました。ですから、あなた方の願いを叶え、このミラーワールドから立ち去ることができます」

 

 急な出来事に、有栖は呆然とする。

 

 「とりあえず治しときましたよ、腕から何まで」

 

 有栖は失くなったはずの左手を見る。左手があった。

 桜のほうも、腕が元通りになっていた。

 腕だけでなく、心労から何から何まで治っていた。

 あっという間の出来事に、二人は呆然する。

 

 「私はミラーワールドを自由に操作できるんですよ? 何を驚いているんですか?

 まぁ、何はともあれ合格。

 特に要望がなければ、地球に還しますが、どうしますか?」

 

 「シミラは……地球の世界に顕現させられるんだよな?」

 

 「ええ、当然できますよ。桜さんも、フェイバリットを地球に連れていくようにしましょうか?」

 

 その言葉に、桜はぽかんとしていた。

 

 「そう言えば、桜さんには言っていませんでしたね。

 『ボス』を倒せば、私が願いを叶えるって約束があるんですよ。それは貴方にも有効なんですよ、桜さん。当然、フェイバリットを地球に連れていくとかじゃなくても――」

 

 「――フェイバリットを地球に連れていくようにして。フェイバリットはそれがいいって、知ってるから」

 

 「……分かりました。願いを叶えましょう。

 あとは特にないですか?」

 

 再度確認をとる『真実の鏡』。

 

 「なぁ、『真実の鏡』。本当に還れるのか?」

 

 「当たり前ですよ。貴方たちは言うなれば、地獄の試練を潜り抜けたのですから。しかも最後には、自身がどうなってもいいとまで思いながら、相手を想っていた。それは腐敗した人間とは到底かけ離れています。ミラーワールドが存在しているのは、平たく言えば、ダメ人間を真人間にするための世界。その場所で成長した貴方たちだからできた芸当ですよ、さっきのは。だから、安心していいですよ。地球に帰れるのは、嘘ではないですよ。

 では、そろそろいいですか、貴方たちを地球に帰らせても?」

 

 有栖と桜、二人は互いを見合い、頷く。

 

 「ああ、そうしてくれ」

 「そうして」

 

 二人は淡い光を帯びて、そしてミラーワールドから、消えた。

 

 *****

 

 朝。梶原有栖は目が覚めた。

 朝。宮島桜は目が覚めた。

 

 洗面所に向かう。

 洗面所に向かう。

 

 顔を洗い、鏡を見る。

 顔を洗い、鏡を見る。

 

 隣にいるのはシミラ。

 隣にいるのはフェイバリット。

 

 鏡の向こうから、声は聞こえない。

 鏡の向こうから、声は聞こえない。

 

 きっとあれは、夢だったかもしれない。

 きっとあれは、夢だったかもしれない。

 

 だけど、一部はまさしく現実だ。

 だけど、一部はまさしく現実だ。

 

 隣にシミラがいる。

 隣にフェイバリットがいる。

 

 全てが夢なはずはない。

 全てが夢なはずはない。

 

 彼女がその証拠。

 彼女がその証拠。

 

 忘れてはならない、あの日の思い出。

 忘れてはならない、あの日の思い出。

 

 死んだこともあった。

 死んだこともあった。

 

 絶望したこともあった。

 絶望したこともあった。

 

 だけど。

 だけど。

 

 今は、幸せだ。

 今は、幸せだ。

 

 ミラーワールドがなければ、有栖は変わらなかった。

 ミラーワールドがなければ、桜は変わらなかった。

 

 あの日の出来事があったから、今が楽しい。

 あの日の出来事があったから、今が楽しい。

 

 今が幸せ。

 今が幸せ。

 

 きっと、有栖のように何かに迷っている人がいる。

 きっと、有栖のように何かに迷っている人がいる。

 

 その人には幸せのコールが訪れる。

 その人には幸せのコールが訪れる。

 

 鏡の呼び掛け――ミラーコーリング。

 鏡の呼び掛け――ミラーコーリング。

 

 きっと困難が待ち受けている。

 きっと困難が待ち受けている。

 

 だけど、その先に。

 だけど、その先に。

 

 確かな幸せが待っている。

 確かな幸せが待っている。

 

 だから、鏡に飛び込もう。

 だから、鏡に飛び込もう。

 

 貴方の幸せを、掴むために。

 貴方の幸せを、掴むために。

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