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ミラーコーリング  作者: ザ・ディル
2章 コーリングTWO
23/28

10話 鏡は問いかけ、故に真実


 有栖たちはミラーワールドの真実を探して、『真実』を得られることが可能かもしれない場所へと歩みを勧めていた。

 歩き、敵がいて、倒す。

 ファンタジーでありそうな、漫画でよくあるありきたりな展開。

 しかし今回の場合はその機会を用意されただけ(・・・・・・・)。本当の敵がいるとすれば、これまたベタにも程があるかもしれないが、己なのである。

 

 

 *****

 

 有栖たちは遂に、『真実の鏡』にたどり着いた。

 

 「これが『真実の鏡』だよな?」

 

 桜に確認をとる。

 

 「そうね。まごうことなき鏡よね。これが『ボス』ではないことは明白……」

 

 結局、いたのは『ボス』ではなく、『真実の鏡』だった。

 明らかに目の前にあったのは鏡であったから。

 

 しかし、

 

 「これは『ボス』ですワ」

 「これは『真実の鏡』です」

 

 互いが、フェイバリットとシミラは違うことを言っていた。しかも指までさしていた。当然、同じ場所。『真実の鏡』に指の先端を向けていた。

 

 「あり得るのか?

 これは『真実の鏡』であり、『ボス』であるなんてことが?」

 

 「いや、さすがにこれは……『真実の鏡』としか言いようがないわよね……」

 

 壁にかけられていたのは完全完璧に鏡と言えるもの。

 しかしながら、想像異常に大きい。それは、恐竜さえも軽く飲み込んでしまうほどにデカイ。

 

 「シミラ、ここからはどうすればいいんだ?」

 

 有栖は問う。

 この先、何かをすることは理解していた。でなければ、目の先に見えるものが『真実の鏡』と言えるはずがないから。

 

 「触れてください」

 

 「触れる……?」

 

 「触るでもいいですよ」

 

 「いや、分かるけど……それって……」

 ――初めてミラーワールドに来たときにした感じに……ってことか?

 

 ミラーワールドに呼ばれたのは、呼びだされた方法は鏡に触ることだった。それを有栖は思い出していた。

 だから、もう一人の被害者に聞く。

 

 

 「なぁ桜。こっちに呼び出されたのは鏡に触ったからだよな?」

 

 「……うん、そうね。でもそれがどうしたの?」

 

 「もしかしたら……このまま元の世界に帰ることなんてあり得るのか?」

 

 「…………っ」

 

 鏡に触れて帰ったなら、表から裏に干渉してしまい裏にきてしまったのなら、裏から表に干渉して表に、鏡に触れれば帰れるのは道理である。

 

 「……っで、でもっ!

 少なくとも普通の鏡だったら元の世界には帰れなかったわよ!」

 

 この場合でいう、普通の鏡とはミラーワールドの多く見かけるなんら変哲のない鏡のこと。

 

 「俺だってそれはさすがにやったよ。でも今回は『真実の鏡』だっ!

 そのまま元の世界帰るかもしれない」

 

 それは……今のシミラと前世のシミラを助けると思った有栖にとって、とても……非常に非情なものだった。

 

 「『真実の鏡』に入ったからといって、地球には帰れませんよ?」

 

 「えっ?」

 

 だからその言葉は有栖にとっては朗報だった。

 

 「本当か? シミラ?」

 

 「ええ」

 

 「よかった」

 

 安堵。溜息。そして、

 

 「じゃあ俺が先に入ってくるわ。それでいいか?」

 

 「もちろん。気長に待ってるわ」

 

 「ありがとう。それじゃ、また会おう」

 

 そう言って、有栖は『真実の鏡』に入っていった。

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