7話 メイク シュア
ミラーワールドは洞窟を広くし、しかしながら光が常にあるような場所が永遠と続いてしまうと錯覚するほどの場所と言っていいだろう。
しかし、例外も存在する。例えば、『鏡の異物』が入ることが不可能である広い空間。
そして、有栖と桜の目的地――『真実の鏡』や『ボス』の場所も例外の一つである。
互いの目的地が違うと、そう思って議論した数十分後。
「話を整理しよう」
有栖は切り出して続けざまに話す。
「俺が行きたい場所は『真実の鏡』、そして桜が行きたいのは『ボス』の場所。桜が言うにはそこに行けば『ボス』という存在に出会うことができて倒せばもとの世界に戻れる、そうだな?」
「ええ。もっとも、フェイバリットから話されたんだけどね……」
そのフェイバリットと、同じミラーワールドの住民であるシミラは適当な会話をしているのかよく分からないが、二人で何かをしていた。何か……と、ぼかしているのはジェスチャーで握手の仕草だったりホントに何か分かりづらいからぼかしている。閑話休題。
「俺はシミラから『真実の鏡』の話をされて、それで桜と同じ時間帯にここを通った。これから判ることは――」
「目的地が実は一緒ってことよね?」
「ああ、そう考えるのが妥当だろうな」
有栖は桜と数十分話したことを一段落話し終えた。
「そうね、そうだと思うわ。それでどうする有栖、この先一緒に行く?」
「そりゃあ目的地が同じで時間制限もほぼ同じ……、それなら行動を共にした方がいい」
「分かったわ。……とりあえず駄目元で訊くけれど、有栖はこれ以上の情報は知らないわよね?」
桜は危惧していた。もし、未だに桜が知らない情報があれば、目的地に向かうのは危険だと、そう思っていた。
しかしそれに反するように、
「ああ、ないはずだ」
「ホントに?」
「マジだ。少なくとも、シミラから伝えられた情報だけなら間違いない」
「とりあえず、そういうことにしとくわ」
「とりあえずってなんだよ……」
「とりあえずはとりあえずよ。もしかしたら何かまだ隠しているんじゃないかと思ってね」
小悪魔のように微笑む桜は、有栖をタブらかしていた……、それに気づいた有栖は、
「じゃあそんなに疑り深い人とは一緒にいられないな。俺が一人で行こうかなー」
「……一緒に行かせて……」
声ある方向を見るとそこには少し寂しそうにしていた少女がいた――桜だ。
突然そんな寂しそうな表情によって、有栖は面を喰らう。
――少し……からかうだけだったんだけどな……。
髪を掻きながら、反省する。
そして、
「桜……その……なんだ、……すまなかった。さっきのは嘘だ」
「嘘……嘘なの……? ホントに? ホントのホントに?」
「マジだ。マジマジのマジだ」
「…………なーんだ良かったー! てっきり嫌われたのかと思った!」
安堵した桜は胸を撫で下ろした。
その元気よくなった姿を見て、有栖も同様に胸を撫で下ろした。
そして、
「じゃあ行こう、桜。案内はシミラに任せていいか?」
「ええ、いいわよ」
機嫌を直した桜は笑顔を取り戻してそう言った。




