第九十七話 「ステータス」
「さすがにこれは嘘ッスよね?」
「何が?」
「その、あの、アレでレベルが上がるってやつッス。」
ミツキが恥ずかしそうに顔をそむける。
顔が赤いのは2度目の風呂上がりのせいだけではないらしい。
そりゃ普通、嘘だと思うよな。
さて、どうやって信じさせればいいものか…。
先程から開きっぱなしのミツキのステータスをトリミングして特性【ビジュアライズ】でA3くらいのタッチパネル状に可視化させ、ミツキの前に提示する。
「なんスかこれ?」
「ミツキのステータス。つまり能力だね。他はともかくレベルや持っているスキルはあってるかい?」
「!?あってるッス。でもレベルはともかく【絶対回避】の事は誰にもいったことないのに…。」
「それから、スキルは持ってないけど【片手剣】や【短剣】の経験が結構あるね。前に練習したことでもあった?」
「アタシの亡くなった母親が探索者でレイピア使いだったッス。なので型くらいは習ってはいたッスが、アタシ目が悪かったので実践は無理だったッス。って、そんな事までわかるんスか?」」
目が悪いので戦闘に向かないというのも奴隷として売れ残っていた理由っぽいな。
「うん、それが分かるくらいの人物鑑定スキルに似た能力を私は持っていて、それをこうして人に見せることも出来る。ここまでは信じる?」
「…信じるッス。」
「ミツキはサナのレベル知ってるかい?」
「確か前にはレベル4か5だっていってたッスよね?」
「うん。」
「では、今のサナのステータスを見せてあげよう。」
今度はサナのステータスをトリミングして表示する。
【ランク】 1
【レベル】 19
【筋 力】E 29
【耐久力】D 48
【精神力】A 105
【感 覚】A 105
【敏 捷】B 86
【器 用】C 67
【体 力】163/163
【魔 力】277/277
【精 力】 48/258
「じゅ、19?!こんな短期間に?ありえないッス。」
「疑うなら腕相撲でもやってごらん。筋力の差が倍以上あるからサナが勝つはずだよ。」
「や、やって見るッス!サナちーいい?」
「いいよー。なんか緊張する。」
腕相撲の結果はもちろんサナが勝った。
思ったより一方的にならなかったのは、サナが腕相撲をするのが初めてだったせいだろう。
当たり前の話だけど、ステータスの値とそれを使いこなせているかは別問題なんだな。
「うー、信じられないけど信じるッス。」
「サナから説明あったかと思うけど、今二人がしている『淫魔の契り』という指輪にはレベル上げを助けるそういう力もあって、その代わりにある程度の強制力がある。」
「そうなんですか?」
「いや、実はお父さんもさっき知ったんだ。」
「なんスかそれ。どういう状況ッスか。」
ミツキの感想が一番正常な気がする。
実際のところ、私も未だ自分の能力を把握しきってないのだ。
「ミツキにも今までの事を全部話しても大丈夫になった。くらいの理解でいいよ。そんな訳で…」
淫魔法【ウェット&メッシー】でケーキを手のひらの上に出す。
チーズケーキ、エクレア、ティラミスの3つだ。
「大暴露大会といこうか。ミツキも気になる事が多すぎて落ち着かないだろ?」
「あ、それは純粋に嬉しいッス。今、使った魔法は運搬魔法っぽいッスけど。パパさん運搬者なんスか?」
「その辺りも含めて説明するよ。」
サナはケーキが出た瞬間、もうお茶の準備を始めている。
もう当たり前のように電気ポット使いこなしているな。
ミツキからの質問攻めで長い話になりそうだが、まだ時間も遅くないし大丈夫だろう。
それはそうと
「長くなりそうだけど先に風呂入ってからにすれば良かったかな?」
「お父さん、それならお湯沸くまでの間、さっと入ってきたら?」
そういってサナが皿を差し出して来たので、ケーキを載せ替える。
「そうだな。じゃ、ちょっといってくる。」
「はい、いってらっしゃい。」
「うー、ここまで来て焦らされてる感があるッスー。」
ミツキの反応を見ると、私とサナはだいぶマイペースなんだと実感してしまう。
ミツキッス!
サナちーが人族の世間知らずで、素直に物事受け取り過ぎるところがあるから騙されているんじゃないかと正直思ってるッス!
あと二人とも色々マイペース過ぎて着いて行くの大変ッス…。
次回、第九十八話 「大暴露大会」
あらすじ回スタートらしいッスよ?




