第九六九話「チャチャの朝ごはん」
「まぁ!」
「大したものッスね。」
「これ、全部チャチャが作ったのかい?」
「うにゃぁ、みんな、おねむだったから、チャチャがつくってみたにゃぁ。
ねねさん、駄目じゃにゃかったかにゃ?」
はにかむような、それでいて、緊張したような趣きで、そうサナに問いかけるチャチャ。
「全然駄目じゃないよ!これを全部?凄い!普段の練習のかいがあったね!」
チャチャの両手を取ってブンブンふるサナは心底嬉しそうにしている。
チャチャのつくったメニューは、まずは炊きたての御飯、大根のお味噌汁、出汁の煮干しを抜かないのが我が家のスタイルだ、そしてチャチャの好物でもあるベーコンエッグ。
レタスを添えてとまではいかないが、ほうれん草のおひたしがついて、それにプラス囲炉裏には昨日も食べた山女魚のような魚の塩焼きが炙られている。
ボリュームも中々だな。
「良かったにゃぁ。」
「あはは、チャチャが早起きしてご飯つくって怒るような人はここにはいないよ。」
そう言ってチャチャの頭を丸く撫でると、くりんくりんと頭も回る。
それよりも、あのチャチャがこれだけの自主性を見せるようになったことに、ちょっと胸が熱くなり、それはみんなもまた同じなのだろう。
料理だって、皿にとって渡してやらない限り手をつけなかった頃から比べれば、雲泥の差だ。
「ほらほら、いつまでも見てないで、せっかくの、ちーちゃんのお料理なんだから、冷める前にみんなでたべよ?」
「うにゃ。」
「おお、そうだな、じゃ、「「「「いただきます」」」」」
ご飯はサナが炊くものにくらべれば、若干硬めかな?これくらいは十分許容範囲内、むしろ好みかもしれない。
お味噌汁はちょっと煮干しが多めな感じがする。
出汁と具の関係を理解仕切ってないのかもしれないな。
ベーコンエッグは完璧。
好き者こその上手なれというやつだろう。
醤油など個々のこだわりの味付けも当然のように準備してある。
ほうれん草のおひたしも完璧だな。
山女魚は朝取りの新鮮なものを、塩を降ってゆっくりと焼き上げている。
昨日、サナが焼いているのを美味しそうに、しげしげと眺めていたのが功を奏したようで、やけ具合も十分、良い匂いが漂っている。
「うん、美味しいよ、チャチャ。」
「ええ、とても美味しいわ。」
「こりゃあっというまに抜かされちゃったッスね。」
「ちーちゃん、いつも頑張っていたから。
今度はもっと作れる料理の種類増やしていこうね。」
「あい!」
チャチャの嬉しそうで、誇らしそうな返事が、離れに響いた。
▽▽▽▽▽
「各ギルドへのあいさつ回りな、あれ、直接いくのは延期じゃ。」
朝のルーチンでもあるサビラギ様への、こっそり謁見にいったところ、そんなことを言われる。
ちなみにタクミさんが里に来ていることも報告したのだが、わりと塩対応だった。
「なにか問題でもあったのですか?」
「いや、問題というわけじゃないとワシは思うのじゃが、お前ら、なんだかんだで人気者になって帰ってくるじゃろ?
それが面白くない者も一部いるんじゃよ。
それと、どちらかというとこちらの方が本命なのじゃが、地母神様復活の儀式が順調に進み、今日、明日にでも儀式が行われることになった。
じゃから、依り代、代わりのレンがいないと困る、というわけじゃ。」
「大儀式のわりに、準備早くないですか?」
「まぁ、この街には大儀式系大魔法陣が元々ある上に、各種族の手練がそろっているからな、揃い過ぎて、ちょっと揉めているくらいなもんじゃ。
許可書は取りつけてあるので、あとで実際に見に行ってみるとええ。」
そういって、サビラギ様からいかにも通行許可書という名札を渡され、それが今日のお仕事だといわれた。
「なに、マミもヤコも現場にはいるから、頼るがいいさ。」と、いう言葉だけがそれこそ頼りだな。
チャチャにゃ!
みんな全部残さず食べてくれたにゃ!
嬉しいにゃぁ。
今日もきっと良い日にゃ!
次回、第九七一話「大魔法陣」
ねねさんからも、たくさん褒められたにゃ!




