表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

965/979

第九六四話 「用水路」

 土地としては荒れ果てた畑。

 いわゆる耕作放棄地というやつだ。

 木までは生えていない分、まだましだな。


 里のはずれということもあり、何かの機会に家ごと移転でもしたのかもしれない。

 その代わりといってはなんだが、十分な畑の量はあるが、これを全部水田にするとなると、水路作るだけで一財産だな。


 いや、待てよ?とりあえずは水路を作って、畑を水田用に掘り下げればいいんだよな?


 淫魔法【淫具召喚】で愛用の槍を召喚し、種族特性【男根のメタファー】をかけた上でチョンと足元の地面突き、土をメニューのアイテム欄へと仕舞う。


 今回はキューブ状に仕舞ったので、ちょっとしたゲームみたいだ。


 「用水路を作るとしたら、深さはこれくらいですか?」


 「それくらいですね。」


 興味深そうにタクミさんが覗き込んでいるが、何をしたかは聞いてこないことを見ると、魔術か勇者としての特性かなにかを使ったのだと当たりが付いているのだろう。


 「サノボリ君、田んぼ1枚分作るとしたら、あぜは、どのあたりまで?」


 「そうですね……」


 サノボリ君が畑の隅を走り、止まったところでこちらに振り向き、両手を振る。


 「大体、この辺りくらいで、1枚ってとこでしょう。」


 意外と距離が近い、と思うのは、自分が近代化した北海道の農業を見ているせいだろう。


 アホみたいに広い水田あったしな。


 機械ではなく手植え、手刈りで作業をするなら、それなりに適当な大きさというものがあるのだろう。


 サノボリ君のところまで、槍を引きずりながら追いかける。

 もちろん、槍の先からはキューブ状に土をアイテム欄に仕舞いながらだ。


 まぁ、吸い取りながら、といった方が実情に近そうだが。


 「これは……用水路ですか?」


 困惑したサノボリ君が聞いてくる。

 言外に、これでは使い物にならないという感想が漏れてきている。


 「流石にこのままじゃ決壊してしまいますしね、もうひと手間かけないと。

 おーいサナー!」


 サナに声をかけ、詳しい内容は念話で伝える。

 たぶん今のサナなら余裕でこなすだろう。


 「はーい!」


 そういってサナが魔法を唱える。

 使用する魔法は中級範囲土魔法を魔力操作でアレンジしたものだ。


 要はいつも地面からトゲトゲとかを出しているものを、横転させたコの字型に、掘った(?)幅に合わせて伸ばして用水路を石化させ補強してもらっているのだ。


 一応、勾配こうばいは考えて掘ってあるので、それに基づいて石化するだけで、かなり近代的な用水路になったはずだ。


 「これならどうですかね?」


 「なるほど、この発想はありませんでした。」


 タクミさんとサナ、そしてサオリさんが駆け寄って来て、用水路の様子を見ている。


 「これがアリなら……」


 タクミさんが出来たての用水路最後尾に立ち、なにやら呪文を唱える。

 【古代共通大陸語】じゃないから、魔法じゃなくて魔術っぽいな、。


 「用水路をつくる魔術。」


 言語は自動翻訳されるのでちょっとしまらないが、その力ある言葉と共に、用水路の続きが伸びていく。


 形こそ同じだが、タクミさんの魔法の場合は、土を回収せず横転したコの字型に圧縮した上で石化させているようだ。


 見ただけでは分からないが、おそらく勾配もちゃんとついているだろう。


 って、こんな便利な魔法があるなら最初から使えばいいのに。


 「即席で作った割には、中々上手くいきましたね。」


 え?この魔術、このためだけに今作ったの?!


 さすが勇者タクミ。あなどれない。


 いや、あなどる気はないのだが。



▽▽▽▽▽



 その後、用水路はタクミさんに任せ、私は用水路と似た要領で、畑の掘り下げを担当することにした。


 アイテム欄に仕舞う幅を、田んぼの幅に、深さは少し深めに仕舞った後、表層の土だけを改めて戻して高さの調整をすることにした。


 と、いうのも、生き物はアイテム欄に仕舞えないので、土を仕舞った後、雑草類がそのまま地面に残ってしまうのだ。


 もちろん、拾った方が良いのだが、手間がかかりすぎるので、上から土を盛って生き埋めにさせて貰うことにした。


 ランクが上がった今なら、畦からでも十分この作業が出来るので、畦を行くときに土を回収して、戻るときに土を戻す。といった簡単なお仕事だ。


 ちなみに作業の際、結構な量の粘土が取れたので、今度なにか作ってみよう。

 窯がなくても、魔素核を使ってアイテム欄内で作るなら、なんとかなるだろう。

 サオリです。


 なにか目を疑うような光景で土木工事が行われているのですが、これ、大丈夫なんでしょうか?


 次回、第九六五話 「タクミとサノボリ」


 明日あたり里の噂になっていそう……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ