第九五八話 「謁見再び」
長老会は17名の代表者からなる会議だ。
「神使院」と「獣王院」の2院からなり、女王であり、かつ議長である神使院の竜人族のユメニシ陛下を除き、それぞれ8名から成り立つ。
神の使いで宗教色の強い神使院は、海母神様系の白蛇族、亀人族。
地母神様系列の赤鬼族、白狐族、黒狸族。
天父神様系列の天狗族、鷺人族、鶏人族。
これで合計8名。
獣王院は地母神様系列の亜人族ばかりで、獅子族、虎人族、狼人族、牛人族、山羊族、猪人族、馬人族、鹿人族の8名だ。
地母神様系列の亜人族の割合が圧倒的に多いのは、アサーキ共和国が元々人族に対抗するために出来たためだろう。
戦争となると、地上でやりあうことの方が圧倒的に多かっただろうからな。
声がかかって部屋に入ると、正面にユメニシ女王陛下が座り、ハの字を書くようなアーチ状の席の左側に神使院の代表者達が陛下側からさきほどの順で並び、逆に右側は獣王院の代表者達が並んでいる。
気分は裁判の被告席だ。
と、いうデジャブ。
まぁ、簡単にいうと、地母神様復活の件について、再度招集を受けているということだ。
各王の後ろには、徳の高そうなそれぞれの種族の巫女(あるいは神主)と、尼(あるいは僧侶)が立っている。
各王はサビラギ様のように滞在を続けていたのだろうが、私達ならともかく、よくこの一般的な短い期間で、これだけの巫女と尼を本国に集められたな。
そういや、マミ先生が前に社同士を繋ぐ転移儀式魔法があるようなことをいっていたっけ。
おそらくそれを使っての招集だったのだろう。
「神使院」は宗教的な意味で、「獣王院」は主神に関わる問題で興味深いというか重大問題だろうしな。
とはいえ、さぁ、どこから話そうかという問題でもある。
一応、昨日の晩、サビラギ様から、地母神様復活について何かしゃべれ。
と、いう雑な指示を受けてから、みんなと相談しながら、まとめては来たのだが、なにせ、この人数と個々の個性の圧が強い。
ま、緊張してもしょうがない、とりあえず最悪の場合、淫魔法【盗撮】で撮った地母神様本人からの説明を流せば納得するだろうから、気楽にいこう。
▽▽▽▽▽
「つまり、まとめると、だ。
始まりの4柱のうち、創造神様2柱は仕事を終え神の世界に帰り、夜の帳を下ろし、夜と月を司る夜天神様が、傷ついた天父神様を保護、あるいは拉致。
残る1柱の星を回し星の運行を司る宙転神が地上を支配しようと天父神様に成り代わっている。
宙転神が『種星落とし』と称した流星から地上を守るため、天父神様が負傷、地母神様は直撃を受け、他の世界に神格がバラバラに飛ばされるほどの被害をうけ、飛ばされた先で、様々なものと習合し、変質しつつあるところの一部と、レインが縁あって繋がることができ、その習合していたものの、ほとんどを引きはがすことに成功。
少なくてものその地母神様のかけらは、この世界に戻すことが可能な状態になっている。
ここまでは良いか?」
ユメニシ陛下が私の話を簡単にまとめてくれた。
さすが年の功、とかいったら怒られそうだ。
「加えて言えば、私と対を成した地母神様がこの世界に戻る際に、他の世界に飛ばされた、ほかのかけらの地母神様方も同時に引き上げられる可能性があるそうです。」
個人的には、なんでそうなるのかわからないのだが、「神使院」の王達や、巫女や尼さんの多くが、うんうん、と頷いているので、なにか宗教的なというか儀式的な裏付けがあるのだろう。
「ただし、それには膨大な魔力が必要となり、地母神様は犠牲者がでることを懸念されておりました。」
この言葉には流石に、ざわっとした声が上がる。
「ですが、これに関しては、勇者として私の方で準備がございます。」
「ふむ、準備とは?」
ユメニシ陛下が問いかける。
「儀式参加者が数本飲めるだけの特級魔力回復薬を用意しました。
それから超級魔力回復薬もです。」
「なんだと?」
そりゃまぁ、驚くよね。
だって末端価格1本150金貨くらいの品物だしな。
それがここにいる巫女や尼だけでも16人分、更に倍、の量があるというのだから、驚かないほうがおかしい。
サオリです。
レン君、2回目の謁見とはいえ、大丈夫かしら?
今回は巫女や尼の偉い方々も一緒だという話だから心配だわ。
次回、第九五九話 「超級魔力回復薬」
まぁ、ユメニシ陛下がフォローしてくださるとは思うのだけれども……。