第九五三話 「タツルギ迷宮への提案」
「端的にいえば生贄を用意する。と、いうことです。」
「生贄?」
「要は命が消費されれば良いわけですから、それで迷宮のバランスが戻る可能性があります。」
「生贄か…。」
ギルドマスターが苦虫を噛み潰したような渋い顔をする。
「もちろん、生贄といっても人間じゃないですよ?
たとえばウルキの迷宮は川と繋がっている上に迷宮が深いため、外部から魚などが入り込んでおり、それが、結果的に生贄のような形になっています。
エグザルの迷宮も、一時期穴が開いて野生のハーピーが入り込み、迷宮内のデミハーピーと混血していたりしてました。
タツルギの迷宮は隔離されているので、わざわざ運び込まなくてはいけないでしょうが、例えば、猪だとか、鹿だとか、増えやすそうで、混血しそうな獣種を迷宮に運び込み、命の水増しをするのは方法としてアリだと思うんです。
「鳥とかでもいいわけ?」
「もちろん。一応、仮説上の話ですけどね。」
鳥さんチームから積極的な意見が上がる。
「食える生き物が迷宮に増えれば、食料の調達にも便利になるな。」
「カプセルに手をつけなくても済むし、収入的にも助かる。」
「だが、生け捕りはかなり面倒じゃないか?」
「まぁ、その辺りはシルバーにも手伝わせれば良いだろう。」
ガヤガヤガヤと意見の交換が行われているが、全体の雰囲気としては、肯定的な意見が多い。
「良し、細かい計画や内容は私の方で立てることとして、シルバー以上のミッションとして、掲示板に依頼を立てることとしよう。
ゴールドにはノルマも立てるが、迷宮の維持のためだ、頑張って欲しい。
ノルマ以上こなせば、色も付けよう。」
そうギルドマスターが結論を出したところで、今晩はおひらきとなった。
▽▽▽▽▽
「勇者殿達は、明日の朝、出立で?」
「いえ、今晩にでも出発しようかと思ってます。」
「それはまた、急な……。」
「歓迎は昨日十分にしていただきましたしね。」
「あはは、それでは、ユメニシ陛下やサビラギ様、各王達によろしくお伝えください。」
ギルドマスターはそういって深く礼をした。
まぁ、出発といっても、今日のうちは淫魔法【ラブホテル】で、いつもの別荘に戻るだけなんだけどな。
▽▽▽▽▽
「さて、どうしよう。」
久しぶりの一家団欒状態。
3人掛けのソファーの真ん中に私が座り、左右にサナとミツキ。
1人掛けのソファーにはサオリさんが座り、その足元にチャチャが座って、サオリさんの太ももを枕にしている。
「どう?とは?」
サオリさんがチャチャの頭を撫でながら聞き返してくる。
チャチャは気持ちよさそうに目を細めているが、まだ起きてはいるようだ。
「この後、ユメニシ陛下やサビラギ様の所に戻るか、それとも、」
「先に地母神様に会いにいくかッスね。」
察したミツキがそういって目を輝かす。
知的好奇心故の輝きだとは思うが、単純にミツキもパワーアップできる機会だからかもしれない。
「一度戻るなら、今回は紹介状を貰いに行くだけで終わらないですよね。」
「迷宮で色々あったもんね。」
サオリさんとサナがミツキに続いた。
「地母神様の件も結局は報告するッスよね?なら、まとめて報告の方が効率良くないッスか?」
ふむ、ミツキのいうことも、もっともだな。
それじゃぁ、明日の朝、地母神様に拝謁して、それから本国に帰ることにしよう。
「わかりました。」
「了解ッス。」
「はい。」
「わかったにゃぁ~。」
チャチャが眠そうだが、晩ご飯前なので、もう少し持ちこたえて欲しい。
サナです。
今日は慣れないお仕事で、少し気疲れしてしまいました。
でも、みんなレベル上がって良かった。
この調子なら、お父さんが言ってたように里でも上手く行きそう。
次回、第九五四話 「サナと地母神」
さて、久しぶりの晩ご飯。
何作ろうかなー。




