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第九四四話 「決闘Ⅳ」

 無視されたのが面白くなかったのか、相変わらず馬鹿の一つ覚えのように【ソードダンサー】を撃って来る勇者。


 しかしながら、その光剣はサオリさんの【金剛結界】で作られた薙刀によってガラスのように次々と砕かれていく。


 単純に圧縮率の問題だな。


 パーティー全体を覆えるほどの大きさまで広げられ、攻撃に耐えきれる【金剛結界】を、さらに圧縮した薙刀、【金剛薙刀】(とでもいうのだろうか?)が、分身により刃が増える【ソードダンサー】に強度で劣るわけがない。


 そしてもう一つ。


 「攻撃が、当たる?!」


 【我に当たるものなし】の効果が光剣に効果がないのであれば、同系列の【金剛薙刀】にも効果がないのは当然。


 蓋をあけてみれば、なんのことはない、【我にあたる()()なし。】

 つまり純粋な物理攻撃が無効というだけのことだ。


 サオリさんの【金剛薙刀】のようなエネルギーの塊は対象外だし、ひょっとしたら、火炎魔法や電撃魔法なんかもあっさり通ったりするかもしれない。


 ってことは、防御に難があるが、サナでも相手になったかもしれないな。


 それでもパーティーで物理タンク役とかやれば強そうだが、勇者のパーティーには、すでに黒いフルプレートの鎧着たそれっぽい奴いるしな。


 実際には【ソードダンサー】で魔力砲台として、ひゃっほい俺TUEEEEEEやってたっぽい。


 なにせ、【両手剣】ランク2だし。


 張り付いて剣技勝負したら、魔法剣持ちのミツキでも勝てるかもしれない。


 まぁ、そんな相手が、サオリさんの薙刀の腕前に勝てるはずもなく、1合打ち合えば、後ろに逃げ、2合打ち合えば、左に下がり、3合打ち合う前に、蹴りで間合いを離そうとして、からぶったり、と、とても恥ずかしい状況になっている。特に最後。


 周りから「短足勇者」呼ばわりされてるし。


 下手にヤジ飛ばすと殺されたりしそうで怖いが、ギルド監修の決闘だから大丈夫だろう、たぶん。


 「もう、あったまきた!もう死ね!」


 そう言って、両手をバンと左右に張り、大の字に踏ん張る勇者。

 目の前には剣先がおでこにあたるくらいの高さで両手剣が浮いている。


 「【ソードダンサー】フルバースト!」


 その言葉に、まるで勇者に背中に朝日のように『24枚』の光剣が浮かんだ。


 「さぁ、何本目で……」


 とん、と軽やかに間合いを詰め、まるで車のワイパーで水滴でも払うかのように、【金剛薙刀】で光剣をなぎ倒してしまったサオリさん。


 バリバリバリバリと光剣が砕けていく音に勇者を含め、皆があっけにとられている。


 返す足で、両手剣を押すように、とんと蹴り、間合いの調整をすると、サオリさんの薙刀がくるりと輪を描くように一回りする。


 「降参なさい。次は落とします。」


 「なにぃ?」


 勇者が悪態をついた瞬間、勇者の手首、足首から鮮血が噴き出した。


 あまりにも鋭く素早い攻撃のため切られたことすら気付かなかったのだろう。


 あるいは、【金剛薙刀】が、それだけの高圧縮の刃で、あまりにも鋭すぎるか。


 「降参なんぞ、するかーーーーーっつ!俺は勇者だー!」


 「あらそうですか、てっきり愚者の間違いかと。」


 冷たく、そういい放つと、【金剛薙刀】を解除するサオリさん。


 そして、すっと救いの手を伸ばすように勇者へと掌を伸ばす。


 なんのつもりだ?と私を含め全員が思ったことだろう。


 笑顔、いやアルカイック・スマイルというのか、それを浮かべていたサオリさんが、

その艶やかな唇を動かしながら、その伸ばした手を握った。


 キン!


 まさか?!


 ずるりと、両脚から滑り落ちるように勇者の身体が倒れ、地面に突っ伏し、その反動で両手が跳ねるようにその身体から離れ落ち、まるで亀の出来損ないのような様相になった。


 サビラギ様と同じ【金剛結界】の同時多重展開?


 『お母様の真似をして、円筒状に【金剛結界】を重ねて見ました。

 上手くはいきましたが、さすがにお母様と同じようにはいきませんね。』


 さおりさんの解説に、お、おう、としか返せない。

 おそらく今のサオリさんなら数枚の同時多重展開も可能なような気がする。


 まぁ、それやっちゃうと勇者死んじゃうんだが。


 「勝負あり!勇者の戦闘不能をもって、サオリ・サオトメの勝利とする!」


 ギルドマスターの高らかな声に会場が異様な盛り上がりを見せる。

 特に大穴狙いでサオリさんに賭けた者の歓喜の声と、手堅く勇者に賭けた者の怨嗟の声で。


 「はやく治さんと元に戻らなくなるぞ?」


 そう勇者パーティーに声だけかけ、サオリさんに歩み寄るギルドマスター。


 「さすがは、金剛姫の……いや、これは今となっては失礼ですな。

 さすが、サオリ・サオトメ殿。見事な腕でした。」


 「うるさい触るな、俺は負けを認めていねぇ。」


 「それに比べ、なんというか……逆恨みには十分お気を付けください。」


 「ありがとうございます。」


 そういって深く礼をしたあと、私の方に振り返るサオリさん。


 その顔には少女のような明るい笑顔が浮かんでいた。

 チャチャにゃー。


 うにゃ?もう終わっちゃったのにゃ?


 かかさんも、もうちょっと遊んであげればいいのににゃぁ。


 チャチャは今日も、いっぱい遊んでもらったにゃ!


 次回、第九四五話 「お前もあんなに弱いのか」


 うにゃ、ちょっとお腹すいてきたにゃ……。

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