第九四〇話 「タツルギ温泉再び」
恥ずかしながら、コロナってっておりました。
養生しながら、これからも少しずつ更新していこうとおもいますので、お付き合いくださいませ。
「さて、三人とも、どこまでいったかな?」
「うにゃー、たぶん、かかさんは、お餅屋さんにいってると思うにゃ。
「あはは、そうかもしれないな。」
チャチャと手を繋ぎながら、タツルギ温泉街をゆるゆると探索する。
先に出た3人にはお小遣いを渡しているので、早々暇にしているということはないだろう。
そういえば、めずらしく、今回、お出かけをするというと、ミツキにお小遣いを、ねだられたのだった。
と、いってもまぁ、実のところ訳があって、チャチャに自由にお金を使えるという体験を積ませたいと念話で説明があったので、それの前フリとして、こころよく出してやることにした。
最初は桁を間違えて怒られたもののの、最終的には一人5銀貨くらいでおさまり、サオリさんとサナ、ミツキは楽しそうに部屋を出ていったのであった。
もちろん、チャチャにも組み手が終わった後、同じ額を手渡して、チャチャはそれを大事そうにポシェットの中にしまってある。
個人的にはアイテムバッグの方にしまってくれた方が安全なのだが、このポシェットはチャチャの聖域のようなので、特に口は出していない。
スリくらいはあいそうだが、こちらに悪意があればレーダーでわかるしな。
夕暮れの街をチャチャと二人で手を繋いで歩く、というのも、なにか貴重な体験なようで、それを感じ取っているのか、チャチャまで、ちょっとはにかんだ笑顔を浮かべている。
泊まりのことを考えれば、あまり遅くならないほうが良いのだが、このゆったりとした時間がいつまでも続いて欲しいような、そんな気持ちにさせられてしまうのだ。
だが、その時間は長くは続かなかった。
「その薄汚い手を離しなさい!」
「ひょぉっ怖い、怖い。いい女になったってのは撤回だな。」
激昂したサオリさんの声と飄々としたおっさんの声が、遠くから聞こえる。
チャチャと目を見合わし、うなずいてダッシュで現場まで駆けつける。
そこには、サナの腕を掴もうとする30代のチャラ男と、その腕を切り落とすかのように、牽制するサオリさん、そして黒いフルプレートの鎧に阻まれたミツキの姿だった。
ん?男の顔には見覚えばあるぞ?
改めて淫乱魔法【性病検査】で鑑定をする。
勇者ケンジ・タドコロ、サナの実の父親か!
年齢は32歳、レベルは46と今となっては我々より低いが、ネローネ帝国の勇者である。
その実力も、バックも舐めて良いものではない。
騒ぎを聞きつけて、周りも少しづつ人が集まり始めてきた。
こりゃ、ちょっとやそっとじゃおさまらんぞ。
「もうわかりました。貴方が話の通じない蛮人だということは。
サビラギ・サオトメが第一子、サオリ・サオトメがここに決闘を宣言します。
私が勝ったら、その手を話して二度と私達の眼の前に現れないと誓いなさい。」
「はぁ?俺に?この勇者様に?
ああ、わかった。
宣言受けよう。
俺が勝ったら二人共飽きるまでは俺の女だ。好きなように扱わせて貰う。
万が一負けたら、そちらに従おう。」
「ならば、ここに決闘の契約は成りました。立会人が必要です。ギルドまできなさい。」
「はいよ、嬢ちゃん、ギルドまで一緒にいきま……誰だお前?!」
「この娘の父親だよ。」
実のところ、手を握っているというならともかく、手を掴んでいるくらいの状態なら、多少心得があれば、簡単に外せるものだ。
薄汚い手からサナの華奢で美しい手を開放させ、そのまま、自分の背後へと匿う。
「は!なんだかんだいいながら、若い男を咥え込みやがって、このビッチが!
さっさと倒して思い知らせてやる。」
私に対してよりサオリさんに対する怒り?執着が強いのか、怒りを抑えながら綺麗な所作でギルドへと歩いていくサオリさんを追っていく、勇者ケンジ・タドコロ。
激昂状態のままから止めるまもなく決闘へという流れになったが、いったいなにがあったんだ?
「あ、パパ、ちょっとだけ遅かったッス。」
「ああ、ミツキ、何があったか教えてくれるかい?」
ミツキッス!
ヤバいッス!
これ以上ない不味いタイミングで不味いメンバーが会っちゃったッス。
これ、もう、念話でパパ呼ぶしか……
次回、第九四一話 「決闘」
あ、良かった、間に合って……いない?!




