第九三八話 「宴会を終えて」
「お腹いっぱいにゃぁー。」
「同じくッスー。」
「二人共、眠るならちゃんとお風呂入ってから寝るんですよ?」
「了解ッスー。」
「にゃー。」
チャチャのサオリさんへの気のない返事は了解ととって良いのだろうか?
散々周りに構われていたので、電池が切れそうな状態なのかもしれない。
なにしろあの後、サビラギ様の弟子であることはともかく、系統としてはビャクの弟子でもあることがギルドマスターにバレ、ギルドマスター直々に獅子拳なるものを教わっていたので、食べては動き、動いては食べ、と、なにかと忙しかったのである。
「そういえば、あの赤大喇蛄装備、元の持ち主の弟さんが継いだ形になったそうですよ。」
ゴールドの探索者達と話し込んでいたサオリさんがそんな情報を教えてくれた。
端的に言えば、元持ち主の恋人が競り落とし、弟が装備することになったということらしい。
ちなみに弟の想い人は、その兄の恋人らしいが、子ども扱いされていて、未だ恋愛対象外の様子だそうだ。
まぁ、本人はこの装備を着て活躍し、見返してやると、やる気満々ではあるらしい。
女性ってそういう話題好きよね。
「サナの方は、くつろげたのかい?
その、儲かってはいたみたいだけど。」
「あはは、色々、魔法の使い方の話とか沢山できたので、楽しかったですよ。
後半はみんなでコップ屋さんだったので、楽もできましたし。
ほら。」
そういって、テーブルの上のハンカチをつまみ上げるような仕草で、氷製のコップをいとも簡単に作り上げるサナ。
もう、熟練の技になってんじゃねーか。
「お父さん、せっかくだから、なにか飲みます?」
「あー、麦茶を貰えるかい?流石に飲まされすぎた。」
宴会での私の相手は、チャチャを絶対幸せにしろよ友の会の皆様と、ギルドマスターや換金部長、あとは、端数調整をしてあげた、金箱を落札したシルバーの探索者達だった。
……混沌としすぎだな。
まぁ、とにかく飲まされた。
食べる方はチャチャやミツキに回っていたが、今回の宴会の立役者ということで、無礼講もいいところ、注がれるは注がれるはで、途中で一回、種族特性【性病破棄】で、酔いを覚ましたくらいだ。
まぁ、なんだかんだで一番盛り上がっていたのはシルバーの探索者達だったかもしれない。
金箱を競り落としたものも、そうでないものも、奢り奢られ、楽しそうに飲み食いをしており、年若いカッパーの探索者もおこぼれにあずかっていたようだ。
「はい、お父さん。」
「ありがとう。」
サナから麦茶を受け取り、キンキンに冷えたコップを傾ける。
「ふぅー、美味いな。」
「エールをこれで飲むのが人気でしたよ?」
「あー、それは美味いだろうな。」
キンキンに冷えたジョッキで生ビール感覚だ、この夏の暑い盛りに不味いはずがない。
「パパ、チーちゃんが限界ぽいんで、先に一緒に寝るッス。」
小脇にチャチャを抱えたミツキが顔だけ居間に出して、そんなことをいっている。
「ああ、今日はお疲れ様。二人とも、おやすみ。」
「おやすみッスー。」
「……にゃぁ。」
「もう半分寝てるみたいですね。」
サオリさんがそういいながらクスクスと笑っている。
そういえば、サオリさんからあまりお酒の匂いがしないな。
「サオリさんはあまり飲まなかったんですか?」
「えーと、最初は全員揃ったら乾杯でもしようと控えていたのですが、ああ囲まれてしまっては断ることもできず、少しだけいただいた感じですね。」
「サナも素面っぽいね。」
「うん、でも2杯?くらいは飲んだかも。」
そういって私の隣に座り直すサナ。
ふむ。
それなら少しだけ三人で飲みなおすのも悪くないかもしれないな。
サナです。
最初は、お父さんが来るまでの暇つぶしだったんですけど、お金を出してもいいから売って欲しいというゴールドの方がいて、そこから流行っちゃった感じですね。
「どうやってやるの?」って、聞きに来てくれた人たちがいなかったら、ずっとジョッキ作りしてたかもしれません。
次回、第九三九話 「ウルキの夜」
うん、やっぱり【魔力操作】は奥が深いというか、色んな可能性を秘めている感じがします。
また時間をみて練習してみようっと。




