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第九三四話 「宝箱(大)」

「ロットロット!」


 探索者の一人が思わずそう叫ぶ。


 身なり的にはかなり整っており、シルバーの上位、あるいはゴールドでもおかしくないくらいの女性だ。


 「……たしかに、これは迷宮で消息を絶ったロットロットの装備に酷似していますね。

 赤の大喇蛄おおザリガニ装備に、同じく赤の大喇蛄の双剣。


 ほぼ、もと、ロットロットの装備と断定しても構わないでしょう。」


 珍しい装備の上、元パーティーメンバーが競りに参加しているんだな。


 個人的には、そういうことなら進呈しても構わないのだが、競りという俎板まないたの上に載ってしまった以上、そうもいくまい。


 「長く迷宮に沈んでいたせいか、魔力を帯びた装備になっております。


 防具は水属性に耐性があり、双剣も水属性に加え先ほどの剣のように水の斬撃を放つことも可能なようです。


 これはあくまでも、迷宮の恵み。


 故に、既にロットロットの装備ではなくなっている。と、いうのもまた事実。


 よく考えて競りにかかってください。」


 淡々とそう語る換金部長。


 迷宮が喰らった装備が宝箱として排出されるのであれば、こういうことはよくあることなのだろう。


 パーティーが全滅でもしなければ、逆に形見の品が現れるということは想像に難しくない。


 と、なれば、当然感情的な問題も出てくる。


 それを換金部長はたしなめたのだろう。


 「さて、出物は出揃った。野郎ども!競りの時間だ!」


 少し鬱々と仕掛けた雰囲気を薙ぎ払うようにギルドマスターの声がホールに轟き、探索者達が改めて声をあげる。


 はてさて、どれくらいの値がつくものだろうか?



▽▽▽▽▽



 スタートは上級体力回復薬2本と上級魔力回復薬2本。


 そうそう、がぶ飲みするものでもないので、1本ずつ競りにかけられ、上級体力回復薬が9金貨、上級魔力回復薬は11金貨でそれぞれ落札された。


 買ったのはゴールドの探索者達らしく、命の保険に約100万円と考えると、そう悪くないのではないだろうか?


 いや、市価よりは安いので、私的には損をしているのだが、その気になれば、どうせいくらでも作れるしな。


 次に競りにかかったのは、斬撃速射のショートソード。

 迷宮の半分以上が水中なこの迷宮では人気がないかな?と、思ったが、どうしてなかなか。

 60金貨という良い値がついた。


 ちなみにロングソードの方は80金貨だったので、やはり前衛に、いざという時の遠隔攻撃は需要があったようだ。


 さて、次はかなり盛り上がった金箱の競り。


 なにせ、金を金で競ろうというのだから、究極のところ、なるべく少ない金額で競り落とし、差額で儲けようとするのは当たり前。


 じわりじわりと金額が上がってはいくが、私の取った金袋が360金貨という大金。

 同じくらいは狙えるのでは?という欲が、どんどんと加速していき、とてもシルバークラスでは手が出ない金額になりつつあった。


 これは金は金の集まるところに集まりたがるかな?とゴールドの探索者達を観察していると、あるシルバーの探索者が共同出資を申し出始めてから旗色が変わった。


 簡単にいえば、一口1金貨で出資を募り、落札できたら、口数に応じて金箱の中身を分けるという申し出だ。


 しかも出資人はシルバー以下に限定するという念の入りようだ。


 これならば、取り分で大きく差が出ることも少ないだろう。

 元々出せる金額がそれほど変わらないだろうからな。


 プライドの関係かゴールドはこの制度の真似をせず、結局、250口、つまり250金貨が集まり、その金額で競り落ちた。


 そうなると、気になるのは金箱の中身、双子の金袋の中身だ。


 赤字か黒字か、その中身に全てがかかっている。


 中立の換金部長が丁寧に、小さい方の金袋の中身を机の上に積み上げていく。


 小さい方は賤貨を除いた通常の貨幣だけが入っているんだったか。


銅貨が20枚。

銀貨が128枚。

金貨が170枚。

結局合計17,128,020円相当の貨幣が入っていた。


金貨250枚は25,000,000円相当だから、800万ほど足りない。


足りないのだが、次にあけるのは大袋。

レートは10倍、まだまだ逆転のチャンスはある。


 続いて大袋の中身を積み上げていく換金部長。


大銅貨が2枚。


と、いうところで歓声が上がる。

それもそのはず、袋の大きさ的に大銀貨や大金貨の割合が増えるからだ。


次に、大銀貨が81枚。


おおっと、おそらく一口乗ったであろう探索者から声が上がる。

大銀貨81枚は日本円なら81万円だが、まだ大袋には厚みがある。


最後に大金貨が……25枚。

日本円で2,500万円。


つまり、この大金貨を除く全部の貨幣が、共同出資の参加者の取り分になったのだ。


合計金額にすると

42,209,040円


ここから25,000,000円の競り賃が引かれるので、17,209,040円。

これを250口で割ると、一口68,836円。


2~3口でも噛んでいたら結構な儲けだな。

 チャチャにゃ!


 にゃんかよくわからにゃいけど、すごいおおもりあがりだにゃ!

 きっと凄くいいことがあったに違いないにゃ!


 みんにゃ笑顔だにゃも。


 次回、第九三四話 「赤大喇蛄装備」


 あっち側のカッコいい人たちは、ちょっと悔しそうにゃね。

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