第九三三話 「競りとインチキ」
インチキというかなんというか、ぶっちゃけ罠等の秘匿感知スキルでもある淫スキル【引き出しの秘密】と、鑑定スキルである【淫具鑑定】で、宝箱の中身まで鑑定できちゃっているのだ。
本当はそれだけで終わらせるつもりでもあったのだが、なにやら勢いで上半身が裸になる流れになってしまったので、『両乳首でアイテムを見る』事が出来るようになってしまったものだから、淫魔法【コスチュームプレイ】で、大抵のものはコピーできてしまうという、まさにチート状態。
誰が何を競り落とそうが、ほぼ、関係ない状態なので、2本の魔剣も見送り、1枚だけだが白金貨が入っている金袋を選んだというのが真相だ。
なんでも魔道具を作るには、迷宮の宝箱から出た貨幣が必要になることがあるらしく、白金貨から賤貨まで、全種類入っている袋がこれだけだったので、多少損ではあるのだが、1つ選ぶとしたら、と、これを選んだわけだ。
で、そうなると、次に選ぶ宝箱は……
「金箱!金箱!」
「軍資金!軍資金をくれ!」
「大箱!大箱だ!」
探索者達から高らかに声が上がっている。
「さて、実際の競りは後にとっておくとして、勇者殿、次はどの宝箱をどんな競りに?」
場をある程度落ち着かせた後、ギルドマスターがそう促す。
「では、私だけが金袋を持っているというのも、居心地が悪いので……」
ごくりと息を飲む音が探索者達から聞こえる。
「金箱を『伏せ競り』で!」
うぉおおおおと沸き立つギルドのホール。
「あえての『伏せ競り』ときましたか。勇者殿も競りに?」
「いいえ、最低価格だけ決めさせて貰えば、あとはご自由に。」
換金部長にそう告げ、併せて、金袋を探索者の皆に見せ直す。
「皆さんが武器で盛り上がっている間に参考になればと、中身を数えさせて貰いました。
中身は、賤貨51枚、銅貨10枚、大銅貨70枚、銀貨が43枚……」
「ついてねぇなぁ、勇者様」みたいな突っ込みと笑いが漏れる。
「それから、大銀貨が60枚……」
おおっと小さく声が上がる。
日本円にして60万円くらいだしな。
「そして、金貨が64枚、大金貨が19枚、そして最後に……」
「まさか?!」
「白金貨が1枚と宝石が4つ入っており、宝石の価値は分かりませんが、およそ金貨で360枚強の金袋でした。」
その金額に歓声を上げる探索者、茫然とする探索者とさまざまだが、その間を縫って、
「ありがとうございます勇者殿、とても参考になりました。
さて、この金箱、今の金額以上のポテンシャルを秘めている可能性すらございます。
では、まずは開封の儀を。」
そういって、最初の宝箱と同じようにシーリングは剥がしていく換金部長。
今回もまだ開けられたことがない証明の空気音が鳴る。
「ほう。」
換金部長から感心したような声が上がった。
金箱の開いた側を探索者側に向け、斜めに傾けて中身を見せると、中には大小二つの金袋が入っていた。
「双子袋ですね。
これは珍しく、かつ運がいい。
片方の大きな袋には賤貨は入っておらず、もう片方の小さな袋には大貨しかはいっていないという、不思議な袋です。
これは中身の割合によっては、本当に勇者殿の金袋の額を超える可能性がありますよ?
さぁ、勇者殿、最低価格はいかに?」
「では、1大銀貨から。」
「へ?」
「1大銀貨からで、あとは、皆さんにお任せします。」
「20、いや30金貨だす!」
「45、こっちは45だ!」
「50!」
「はいはいはい、みなさん、落ち着いて、まだ競りは始まっておりません。
皆さんの財布の中身の行先は、最後の宝箱を見てからでも遅くはないはず。」
と、換金部長はいうものの、結局ほとんどの行先は、競り主の私の懐だと思うのだが……。
「では、勇者殿、消去法でいえば、勇者殿が落札しないことを宣言した上での『全競り』は、この大箱ということでよろしいですな?」
「はい。」
「経験から申し上げますと、高性能な防具セットが場合によっては武器付きで入っている場合もございます。
それでもよろしいですか?」
「ええ。」
メインディッシュらしく、換金部長の確認も念入りだ。
それだけトラブルの元になるレベルの中身が入っていることが多いのだろう。
「では、失礼して、こちらも開けさせていただきます……さすがに第9階層レベルの防具が期待できるとなると、手が震えますね。」
換金部長のそれはジョークだったようだったが、探索者達の目の色はさらに鋭く光っている。
空気音もOK、間違いなく、新品の宝箱。
その中に入っていたのは……。
サナです。
最近、麻痺して来てるかも知れないけれど、金貨360枚分って、凄い金額なのでは……。
この他に他の競りのお金も入るんですよね?
帰り道襲われたりしないでしょうか?
次回、第九三四話 「宝箱(大)」
あ、最後の宝箱だ。
あれには、どんなのが入ってるんだろ?




