第九二八話 「ウルキの迷宮~第9階層~」
第8階層に入ってすぐ、おなじみの勇者装備『変成の腕輪』と淫魔法【夜遊び情報誌】でマップを確認すると、概ね以下のようなつくりであることがわかった。
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第8階層と第9階層は通常の迷宮のように上下の関係にあって、出入り口の階段も何か所もあるようだ。
また迷路状の迷宮が続くとしたら、うんざりだったが、これならあともう一息という気になれる。
実際、第8階層の中盤あたりから下の階層に降りて、再度マップを所得。
第10階層のマップが取得できなければ、魔族も魔王も発生しておらず、お仕事終了!だしな。
と、いうわけで、ある程度、敵を間引きながら下への階段を目指す。
間引いていくのはランク4のモンスターだけで大丈夫だろう。
ランク3くらいならゴールドの探索者で十分対処できるだろうし。
今更の話になるが、この迷宮の水中部は、トラージの迷宮が海ならば、ウルキの迷宮は川という感じだ。
第2階層と第5階層が実質迷宮の壁に接していない関係か、迷宮に食われることなく、外から入った魚などが、普通に生息している。
そういう意味では命が、あふれている迷宮なので、正直なところ、魔族や魔王は発生していないんじゃないかと、うすうす思っている。
あれは迷宮内の魂が飢餓状態になった時におきる現象のようだしな。
そんなことを考えているうちに、あれだけ雄々しく、こちらを威嚇していたヒュージデミザリガニが、娘達とサオリさんにフルボッコにされ、チャチャが楽しそうに魔素核とカプセルを拾っていた。
ランク4くらいだと、もう普通に苦労なく狩れちゃうくらいのレベルになっちゃってるからなぁ。
▽▽▽▽▽
「更に地下はないですね。」
「うにゃ、いきどまりにゃ。」
「でも、ここの部屋、いかにも怪しくないッスか?」
「前に入った部屋に似た雰囲気がありますわね。」
皆が気にしているのは第9階層の突き当りにある中部屋。
一か所の扉からしか入れなくて、いかにもここから下への階段が現れますよ?といいたげな、前の迷宮でいえば、ヒュージ・カミツキガメが待っていそうな部屋だ。
いや、敵を表す光点も映ってなければ階段も映ってないので、これで本日のお仕事終了!としてもいいのだが……
「そんなに気になるなら、ここだけ寄って最後にしようか。」
淫魔法【ラブホテル】用のショートカットも深い階層に作っておきたいし、時間もまだそんなに遅くないはずだ。
それくらいの寄り道は大丈夫だろう。
「そっスね、その方がすっきりするッス。」
「うん。」
「わかったにゃー。」
「じゃぁ、そうしましょうか。」
と、満場一致でその部屋の探索にかかることになった。
かかることになったのだが……
▽▽▽▽▽
「横着しないで、来てみるもんね。」
「なんにゃ?この箱?」
「宝箱……ですよね?」
「そうね、ちょっと里とは形が違うけども……。」
「しかも3つッスよ?!3つ!しかも最下層の!
これは期待できるんじゃないッスか?」
妙にミツキのテンションが高いのは置いておいて、そういや、だいぶ前に迷宮には宝箱が湧くことがあるというのを聞いたことがあったな。
迷宮に食われたものが、宝箱という形をとって、再ポップするという感じのものらしいが、迷宮の魔力を帯びて、魔法のアイテムなどになっている場合もあると聞いたような気がする。
「開けるッスか?一応罠はかかってないみたいッスよ?」
野伏のスキルと淫スキル【引き出しの秘密】の合わせ技で、すでに罠の有無は鑑定済みのようだ。
「んー、せっかくだから、丸ごと持ってかえりましょう。
ここであけて、水に弱いものとか入っていたら勿体無いし。」
「そういえば、しばらく水中にいたので気にしてませんでしたけど、地上部もある迷宮でしたね、ここ。」
サオリさんが頬に手をあて、首を傾げながらそういう。
「じゃあ、水から上がるまでは、ご主人様に預かってもらう感じですね。
「そういや。宝箱ごとセリにかける、ってことも出来るって聞いたことあるッスよ。」
「にゃー、中身がきになるにゃー。」
カリカリと宝箱を引っかいているチャチャ。
それくらいで開きはしないだろうけど、あぶないからよしなさい。と、両脇の下を持って横によける。
「それじゃ、とりあえず私が預かって、中身は後の楽しみにしよう。」
ミツキッス!
宝箱ッスよ宝箱!
ママから話は聞いたことはあるッスけど、本物を見るのは初めてッス!
やっぱり魔法の武器やら金銀財宝やらが入ってるんスかね?
次回、第九二九話 「宝箱の価値」
んー、気になるッス。




