第九二二話 「宴の後で」
さて、宴となると心配なのは、うちの女性陣が不埒な輩に絡まれないかという点が出てくるわけだが、その後のビャクによる紹介で、事なきを得そうだ。
勇者の義娘、茶兎族のミツキ・エオーレ。
『金剛姫』の娘、サオリ・サオトメ。
同じく直系の孫娘、サナ・サオトメ。
『金剛姫』の直弟子、白猫族のチャチャ。
と、紹介されて、変なちょっかいを出せる男はそうそういないだろう。
まぁ、ほとんどがサビラギ様の雷名によるものなのだが。
強いて言えばミツキのバックが私だけなので弱いのだが、ギルドマスターであるビャクの嫁さんがミックスの白兎族らしく、その人と楽しそうに席を囲ませて貰っているようだ。
サオリさんとサナは共に『金剛姫』サビラギ様の話や、今までの武勇伝などを求められており、一重二重と囲まれて、飲むよりも話す方が大変そうな勢いだな。
チャチャにいたっては、気に入られたのか、ビャクに連れられ、猫系種族の集まる席の傍らで、なにやら型を習っているようだ。
主に引っかきや足の、特に爪の使い方を教わっているようで、床がボロボロにならないか、こっちが心配になるが、ギルドマスター自らやらせているのだから、大丈夫だろう。
で、最後に私だが、勇者とはいえ唯一の人族ということで、ぼっち酒、
と、いうことにはならず、「勇者はどんなことが出来るんだ?」との問いに、当たり障りなく勇者特性【ビジュアライズ】で、迷宮のマップを見せてやったら、各パーティーの斥候系の職業の人たちが、めちゃめちゃ食いついてきて、林間コース以降のマップの説明をさせられるはめになった。
横着せず淫魔法【盗撮】でマップを撮っておいて良かったな。
迷宮の維持管理的にも林間コース以降の階層は、積極的にチャレンジしていってもらいたいので、自分の存在を差し出した魔王への手向けにもなると思いながら、飲酒もそこそこに、説明に精を出してみた。
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3時間ほども経っただろうか?
飲み放題に加え、珍しい話のつまみとくれば、酒量も増えるらしく、飲みすぎで少しずつリタイアするものも増えて来た。
頃合いを見計らってビャクに話を通して、席を外させてもらうことにしよう。
ミツキはビャクの奥さんと腕の組みながらジョッキを振り回しているので、早めに回収した方が良さそうだな。
だいぶ、酒も回ってそうだ。
サオリさんとサナの周りには、最初は男衆が多かったものの、今は女性の探索者が集まり、なにやら衣服やら装備やら、髪の毛やらの話で盛り上がっているようだ。
探索者のわりに圧倒的に身ぎれいだしな、あの二人。
酔いの程度はサナがそこそこ、サオリさんは結構ろれつが怪しくなってきている。
ミツキよりこっちの回収の方が先かもしれない。
で、チャチャはというと、猫族系の型を一通り習い終わったらしく、今はテーブルの上に、山のように積まれた料理に舌鼓を打っている。
っていうか頬がハムスターの頬袋みたいな状態になってるな。
つまり、めっちゃ甘やかされているようだ。
こっちはお腹いっぱいになるまで、少し回収を待ってあげた方が良いだろう。
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「寝るッス!」
「寝ます……。」
「寝るにゃぁ。」
「お風呂入りまふ。」
サオリさんブレないな。
ビャクに自分達は撤収することと、精算は明日することを告げ離籍し、淫魔法【ラブホテル】で、いつもの別荘に戻ってきたのだが、流石に飲みすぎ食べすぎで、即寝たい組がほとんどだ。
とりあえず奥の寝室に三人娘用の布団を敷いてやり、居間側の寝室には私とサオリさん用の二組を敷く。
「ととさん、おやすみにゃ。」
「パパ、おやすみッス。」
「お父さん、おやすみなさい。
あと、お母さんがお風呂から戻るの遅かったら念のため見に行ってあげてください。」
「ああ、わかった。みんなおやすみ、また明日ね。」
そういって三人の頭を撫で、寝室を後にした。
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さて、そのサオリさんだが、サナのいうとおり、戻るのが遅かったら見に行くのは勿論なのだが、だいぶ飲んでいたようなので、早めに見に行った方が良いのではないだろうか?と思っている。
いや、エロい意味ではなく、私も探索者に囲まれている間はさほど気にしてはいなかったのだが、どうやら装備の匂いというか、探索者の匂いが移っているのか、結構、髪や身体が臭いのだ。
淫スキル【淫魔】と種族特性【トランスセクシュアル】のコンボで外見ごとリセットしても良いのだが、せっかくだから、私もサオリさんの様子見がてら、ひとっ風呂浴びてくることにしよう。
チャチャにゃ…
今日はいっぱい動いて、いっぱい食べたから、もう、おねむにゃぁ……
明日、朝ご飯つくらにゃくてもいいのは寂しいけど、今は…………
次回、第九二三話 「酒と泡と」
むにゃむにゃ、もう食べられないのにゃぁ……




