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第九二〇話 「雪崩」

 ガコガコガコとそれを期にサナの土魔法で押された雪庇が次々と反り返っていき、そのまま、崩れながら山肌を崩れ落ちていく。


 崩れ落ちた雪は山肌の雪を巻き込み、その量を増やしながら、下の平原へ向かい、大波のように、文字通り雪崩れをうって押し寄せていっている。


 「やった!成功よ!」


 狙っていたのはこの雪崩れ。


 平野部分に群がっている何百もの魔物をこの雪崩で谷底に水洗便所よろしく流し落とすのが目標だ。


 「よし、追い打ちかけるために、反対側の山にもいくわよ!」


 「「「「おー!」」」」



▽▽▽▽▽



 一度要領が分かってしまえば、こっちのもの。

 移動時間も含めて、2つ目の雪崩を起こすのは、今の私達には容易な事だった。


 雪崩は二つの山の頂上から斜面の雪を巻き込みながら、その谷間にあたる平原、つまり魔物たちが、たむろしている場所を蹂躙するかのように、大波を起こして薙ぎ払っていく。


 多少飛んでるくらいの敵もお構いなく巻き込んでいっているので、乱気流も起きているのかもしれない。


 勇者特性【ビジュアライズ】と、淫魔法【夜遊び情報誌】を使って観測しているが、谷まで持たずに力尽きている魔物も多い。


 質量兵器怖えー。


 ちなみに力尽きた魔物の経験値は、観測くらいしかしていない私を除き、みんなに入っているようだ。


 と、いってもレベル差どころかランク差の関係で微々たるものなのだが、これだけ数がいれば、なかなかどうして、捨てたものじゃない。


 最終的にはレベルアップする者もいるかもしれないな。と、淡い期待をしているうちに、雪崩は全てを飲み込み、谷へと大滝のようになだれ込んでいく。


 まだ生きている魔物もいるが、落下ダメージに加え、上に振ってくる雪の重みの質量ダメージの前では持たなかったらしく、見事全滅してくれたようだ。


 たぶん、平地とか、この谷とか魔素核とかカプセルがザクザクで、うはうはな状態なんだろうなぁとは思うが、迷宮のバランスの再調整という意味ではこれを回収するわけにはいかない。


 そのまま迷宮に喰らって貰って、迷宮獣ごと正規な形にリポップしてもらおう。



▽▽▽▽▽



 『まさか雪崩を起こして一掃するとはな、しかも二つも。』


 魔王が心底感心したかのように頷いている。


 『成功してなによりだわ。』


 『まぁ、その代わり山道が雪崩で潰れてしまったが、些細な事だろう。』


 う、それをいわれると心苦しい。


 『これだけフリーの魔力があれば、すぐ本来の迷宮の形に再構成するだろう。

 見事だった、勇者よ。」


 『仲間のおかげですけどね。』


 『だが、結果を出したのは確かだ。

 褒美といってはなんだが、これをやろう。』


 そういったかと思うと、魔王は額にある魔素核を自分の右手でえぐり取り、私に投げて寄越す。


 『あとは命だな。

 はやく止めをさせ。』


 驚きを隠せない私達の前でも冷静にそう言い放つ魔王。


『なぜ、そこまで。』


 『簡単なことだ、我は、お前たちのいうところの暴走をもって緊急に迷宮をコントロールするシステムに過ぎん。


 それが必要ないのであれば、通常コントロールの邪魔にしかならん。


 削除するのが迷宮のためだ。


 勇者、お主に聞いた『星の根』とやらが魔王われらを狙っているのであれば、存在するほうが迷宮にとって、そして地母神様にとって危険であろうし、魔王が存在したことが表沙汰になっているのであれば、誰かが討たなければ、新たに迷宮に入るものもおるまい。


 だから、お主だ。


 この命、持っていくが良い。


 代わりに『星の根』とやらを頼む。』


 核たる魔素核を失い、身体が光に消えかかっている魔王がそういって立ち上がり、両手を広げる。


 大丈夫、そんなにしなくても、この魔素核だけで大丈夫だ。


 『迷宮と地母神様を愛する魔王、貴方に敬意を表します。』


 魔王から受け取った魔素核に口づけて、【真・ドレイン】をつかい、残りの体力や魔力、など全てを吸収すると、魔王は光となって消えていき、広間に控えていたほかの魔族たちも、ゆっくりと、光に変わり迷宮に吸収されていっている。


 「万事解決かしらね?」


 「念のため、迷宮内が整うまで、数日は人入れないようにした方が良さそうッスけどね。」


 「せっかく我慢してるのに、拾われちゃったら駄目にゃんだよね?」


 「うふふ、チャチャちゃんは、どうしても戦果品が気になるのね。」


 「ちーちゃんのお仕事だもんね。」


と、そんな談笑をしている場合じゃない。

さっさと11階層どころか10階層から脱出しなくては、部屋の崩壊が思ったより速い。


 魔王のいうとおりフリーの魔力が多いせいだろう、扉が形を保っているうちに、さっさと淫魔法【ラブホテル】で脱出してしまおう。

 ミツキッス。

 

 作戦は成功だったッスけど、まさか魔王があんなことをするなんて思ってもみなかったッス。


 なんだかんだで戦わなきゃならないと思ってたッスけど、魔王も色々なんスね。


 次回、第九二一話 「魔王とレベル」


 いやいや、今は気を取り直していかなきゃ駄目ッスね。

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[良い点] しょんぼりしてるチャチャかわいい
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