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第九一八話 「提案」

 取り引きの内容を聞いた魔王は思いの外、冷静だった。


 『ふむ、魔王に挑もうというものだ、前者は可能だろう。

 だが後者はどうする?

 多勢に無勢という人数差ではないぞ?』


 『そこは一応、あてがあるけど、失敗したとしたら、その先はごめんなさい。としかいいようがないわね。


 改めて暴走防止のために、貴方と魔族を倒しに来るわ。』


 『ははは、同じ母から生まれたシステムとはいえど、手加減はしてやれんぞ。』


 ああ、そうか、この迷宮、地母神様の作られた迷宮だから、魔王と勇者は、そういう扱いになるのか。


 あと、この言葉からすると、この魔王は『星の根』の影響は受けていないようだ。

 ならば……


 『そういえば魔王、『星の根』って知ってる?』



 ▽▽▽▽▽



 『そのような事が……嘘ではあるまいな?』


 『地母神様に誓って嘘ではないわ。』

 『ないにゃ。』


 チャチャが私の真似をして片手を上げるポーズと取っている。

 真面目な顔がちょっとかわいい。


 そうじゃなくて。


 『分かった、この件については、各迷宮とも情報を共有しておく。

 お主らはさっき言ったことを存分にやるがいい。』


 え?そんなこと出来るの?


 そういや、地母神様が迷宮の位置には結界的な意味合いもあるといっていたから、そういう結界同士のネットワークもあるのかもしれない。


 『健闘を祈る。』


 そういって、魔王は玉座に座り直し、さっと手を挙げる。


 おそらく何かの合図になっているらしく、大広間のサイドが次々と扉というか、シャッターのように開いていき、大型の魔物でも通れるように開放されていっている。


 一応、約束どおり魔族と戦わないよう、この部屋に集めるつもりなのだろうか?


 それ、最悪の場合、魔王だけじゃなく、魔王&魔族軍団と戦う羽目になるのでは……。


 いや、今から失敗すること考えても無駄だ、とりあえず、やることをやってしまおう。


▽▽▽▽▽



 数々の迷宮を巡ってきて、感覚的に思うことがある。


 各階層の魔物の数と、そのリポップについてだ。


 迷宮研究家というわけではないが、淫魔法【夜遊び情報誌】を使って、広い視野で迷宮を見ることが多いため、気づいたのだが、まず、基本的に魔王のいる階層には魔王しかいない。


 で、その次の階層、つまり10階層は、発生していれば、レベル50以下の魔族と魔物しかいない。


 そして9階層、つまり通常の最深層には、レベル40代の魔族がいるのだが、ここの魔物の数を1とすると、8階層はその2倍、7階層はさらに2倍、以下、倍々の数で、魔物が分布しているように感じていたのだ。


 実際には浅い層の魔物は常に倒されまくっているので、正確な数を数えるのは無理なのだが、ほとんど探索者がこない深層に分布している魔物の数を数えると、概ね、そんな分布に思えていたのだ。


 もちろん、全ての迷宮がそうというわけではなく、2倍が1.5倍だったり、逆に3倍だったり、というようなブレはあるだろうが、簡単にいえば、最深層である9階層の256倍、第1階層に魔物が湧いているのが健全な迷宮だろう。ということだ。


 ところが、その倒した魔物のリポップは、同階層に限られておらず、ランダムで同じランクが発生する深い階層にもリポップすることがあるようだ。


 で、ここからは推測なのだが、その際に、リポップ先でランクが上がってしまうこともあるのではないだろうか?


 そうなるとどうなるか、低階層のみで魔物狩りをしていると、上の階層にリポップした敵が溜まってしまう、という状態が起こり得るのではないか?


 そして、それらが、溜まりに溜まって平原で見た魔物の群れになっているのではないか?


 と、いうのが一つの仮説だ。


 そしてもう一つ。


 逆説的に考えると、最浅層の魔物数を一定数と仮定し、逆算していくと、魔族を除いた、迷宮としてバランスの良い最深層の魔物の数というのが算出されるはず。


 これは、端的に適正数を魔王に聞いてみた。


 この迷宮の場合、9階層で16匹、8階層で32匹だそうだ。


 逆にいうと、これを聞けたからこそ、各階層での適正数に確信が持てたといっても良い。


 現状、9階層で18匹、8階層で40匹の魔物が湧いているので、ここ2層は概ね2割前後バランスが崩れている状態なのだろう、まずは、ここから調整していこう。


 方法?ここまで来たら力技に決まっているわよ。

 ミツキッス。


 倍々ゲームで256倍ッスか。

 えーと、9階層で16匹ということは、1階層で4,096匹?!


 誰も狩らなきゃそれだけ湧くってことッスよね?

 うわ、ゾッとしたッス。


 次回、第九一九話 「バランス」


 逆にいうと、それだけ探索者が常に狩り続けているからこそ、探索者ギルドが成り立っているんスね。

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― 新着の感想 ―
[一言] ニュアンスでないただの変換ミスと思しきものを散見(3件w)したのでなんとなくご報告w 珍しく誤変換多かったですね。 あ、普段は黙って送信してますので今回だけですよ。
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